永元千尋 略歴 : 第4部/独立編
いよいよ「現在」に直結するパートへ。
独立編
2009 : 永元千尋
フリーランスとしての独立を機に、ペンネームを「永元千尋(ようもと・ちひろ)」へ改める。
また、R18方面の仕事では「Flypaper」の名義を使い分けることとした。
この夏、コミックマーケット(C76)へ参加するため〔LIBERTYWORKS〕というサークル名を掲げ、同名で個人サイトとブログも開設。これが後に個人事業主としての屋号にもなる。
■■■ METALHEAD EXTREME L.W.EDITION ■■■
C76で頒布したTRPG関連の同人作品。当時まだほとんど行われていなかった音声チャット経由でのオンラインセッションを想定、種々のルール調整を行い、それに準じた計算用アプリなどを同梱したデータCDであった。
とにもかくにもマイナーな作品で、50セット制作して配布分は20セット程度だったろうか。もう完全に趣味レベルで終わるはずだったのだが……。
2010-2011 : PUSH!!
C76のブースへ訪れた来客の中に、美少女ゲーム情報誌〔PUSH!!〕の編集者O橋氏と、その旧友でSFミリタリーイラストレーターのくろやぎ氏がいたことで、事態は予想外の方向へと動き出す。あれよあれよという間に、雑誌上での〔コラムの連載〕と〔誌面独自コンテンツとしての小説連載〕の話がまとまってしまったのである!
■■■ 永元千尋とくろやぎの Livin'in FRONTIER!! ■■■
〔PUSH!!〕誌上では異例の18ヶ月長期連載となったSFコラム。
掲載誌が美少女ゲーム情報誌なので必然的にR18という扱いになるのだが、実際には「ちょいエロ」「お色気」くらいで実用性は皆無。エログロナンセンスとコアなSF語りをコンクリートミキサーにかけてぶちまけた、ある種の無法地帯となっていた。ぶっちゃけ誌面の私物化である。
ちなみに本コラムは、当時のテキスト&イラストをまとめたものが各同人ショップで販売中である。本来ならここへ販売ページへのURLを埋め込むところだが、連載誌がR18誌だったこともあって少々キワドい挿画が多く、それらがサムネイルとして引用表示されてしまうとnoteの運営規約に抵触することが発覚。URLの埋め込みは略せざるを得なかった。興味があったらタイトルを手がかりにググってみてほしい。
いささか自画自賛気味で恐縮なのだが、10年以上前のものとは思えない未来社会や先端技術の考察があったりして、今でも興味深く読めると思う。
■■■ 終末のフラベルム ■■■
世界中にバラ撒かれた“神の知識”を巡って、〔天士〕と呼ばれる超能力者たちが死闘を繰り広げる近未来SF伝奇バトル小説。企画と本編執筆を永元千尋、メカデザインにくろやぎ氏の他、キャラクターデザインには武田あらのぶ氏を迎え、月刊連載の形で大がかりに展開された。
ただ、読者人気は今ひとつ伸び悩み、書籍化などの企画もまとまらず、未完のまま連載終了となる。
〔Livin'in FRONTIER!!〕と〔終末のフラベルム〕。どちらも美少女ゲーム情報誌という媒体から広がることはなく、口が裂けてもヒットしたとは言えないが、永元千尋は雑誌でコラムと小説を連載したことがあるという実績は残った。それだけでもフリーランスの文筆業としてはかなり大きな財産で、担当編集O橋氏には足を向けて寝られないという気持ちが今もある。
2009-2011 : Return to ALICESOFT
フリーランスとして独立後、古巣にあたるアリスソフトの仕事を受注する機会が多くなった。当時同社は東京の立川に開発部分室を構えており、その責任者であったHIRO先輩と交流が続いていたためだ。
以後、同社では基本的に〔Flypaper〕名義で参画。
■■■ はるうられ -校内赤線区域- ■■■
〔アリス2010〕というファンディスクに同梱された、比較的規模の小さめなR18ゲーム。
シナリオラフからイベントテキストを起こす作業を主に手がけたが、これが初ディレクションであったいってんちろく氏の意気込みと思い入れがンもう凄まじく、ラフの時点で膨大な情報が書き込まれていたので、プレイヤーに伝わりやすいよう整理してテンポを気にしながらちょちょいと清書したような感じ。ライティングの仕事としてはめっちゃ楽で大変ありがたかった。
■■■ 大帝国 ■■■
地域制圧型シミュレーションゲーム。在籍時に参加した〔大悪司〕や〔大番長〕とあわせて「大シリーズ三部作」なんて呼ばれているそうな。
最後は外部からの参加とはいえ、地味に「大シリーズ」皆勤賞である。
アメリカ合衆国をモチーフにした「ガメリカ共和国」という勢力の主要キャラを主に担当。まったく偶然なのだけれども「LIBERTYを掲げるモノに妙な縁があるな」とか思っていた。
2011 : ANIM
この時期は他にも、ANIMというメーカーでお仕事をさせていただいていた。表に出たものは二つだけで、どちらも関わりは短期。Flypaper名義。
■■■ 必殺痴漢人Ⅱ ■■■
初回生産版の特典ドラマCDの脚本のみ担当。
タイトルからもお察しいただけるかと思うが、なにせ完全実用系のR18作品なので、埋め込みリンクやサンプル画像は全面的に省略。
■■■ 本当はエロい童話・にゃんデレラ ■■■
実用系ロープライスエロゲー。
こちらも上記と同様の理由で埋め込みリンク等は省略する。
本来はこの後、三つ目になる大きなお仕事にも関わらせていただく予定だったのだが、諸事情あって企画検討段階で外れることに。
フリーランスだからね、そういうこともあります。
2011-2012 : LOVE CORE
いよいよやってまいりました。当レーベルにとって、そして、Flypaper名義で手がけたR18系の作品として、最大の問題作にして代表作。
R18系同人ショップの小説部門でトップクラスの売上を叩き出し、リリースから相当な月日が経過した今も売れ続けているのだが、ショップへのURL埋め込みは省略する。言うまでもないけど未成年は閲覧しちゃダメだし購入なんてもってのほかだからな!
本作の大元は、10年以上前にまで遡る。
具体的には、この略歴の〔第2部/飛躍編〕においてアリスソフトと関わるようになる直前のことだ――――
俗に、処女作にはその作家の全てが詰まっている、と言われる。
では、永元千尋にとって……R18作家としてのflypaperにとって、初の商業作品となった〔蒼海に堕ちて…〕が「それ」に当たるのか?
否。断じて否。
そもそも「処女作にはその作家の全てが~」などと言われるのは、その作家がプロになって編集者や世間の動向に左右されるようになる前、純粋に自身の内面から生まれ出た表現物であるケースが多いからである。
最初の時点で「いま会社で雰囲気被りそうなの作ってるから」と言われて初期案がボツになり、苦し紛れにやむなく絞り出したものが何故か好評だった……みたいなケースが本当に処女作と呼べるのか? まして発案時に「女の子が可哀相な目に遭うのがいいなー」っていう開発部長の意図を汲んで書いた時点で! それは! もう! 処女作なわけがないのである!
これだ! これなのだ!!
永元千尋 / flypaperという作家にとっての本当の処女作は!!!!
デビュー前から抱え続けていた本物の熱情!
いつか絶対書いてやると、その機会を虎視眈々と狙い続けたのは!!
この〔LOVE CORE〕をおいて!!!! 他に!!!!!!!! ない!!!!!!!!!!!!!!
実際、主人公は作中で女の子にされてロストバージンしちゃうんでね。
そういう意味でも処女作だと言っていいんじゃないですか。ガハハハ。
失礼、いささか品に欠ける発言でした。
2013 : 平和への妄執
厳密に言うとこれは「文筆業」のくくりに入らないが、制作時期としてはこの位置にあたるため、補足的に記述をしておく。
〔WIZARDRY〕というゲームは、永元千尋に大きな影響を与えたオリジンのひとつ。そのノベライズである〔隣り合わせの灰と青春〕は、何度も何度も繰り返し読んだ初めての小説作品でもあった。
それから有余年、大切に育んできた「WIZ愛」をそのままゲームの形にしたのが、この〔平和への妄執〕ということになる。
これが独自に昇華され、オリジナル作品として具体的に結実するのは、もう少し先の話。
2015 : コヲロコヲロ
某ライトノベルレーベルで立てた企画を、諸事情あって個人でリリース。BOOK☆WALKER販売ランキングのインディーズ部門で1位を獲得し、翌2016年のBOOK☆WALKER大賞でインディーズ部門にノミネート。
LIBERTYWORKSにとっても永元千尋にとっても大きな転機となった。
本作については、語り始めると長くなる。
大手出版社で巡り逢った担当編集。彼はかつて角川スニーカー文庫に在籍していたという。最終的に〔サイズミック・エモーション〕が同レーベルからリリースされなかった内幕を知らされ、その上で挑んだリベンジマッチ。しかし突然の、否、必然の掌返し。始まる迷走。商業出版に対する絶望。そこに〔Amazon KDP〕という一条の光が差し込む。著者から読者へ直接作品を届けるシステム、その可能性に全てを賭けた日々。脱稿。発表。挫折。そこからの再起は「電子書籍の妖精」を名乗る赤い髪の少女との出会いから始まった。炎上覚悟で挑む裸踊りも同然の販促キャンペーンが、今、幕を上げる――――
もうね、周辺情報だけで一冊の本が書けるレベルですよ。マジで。
ここはあくまで「永元千尋の略歴」を記すべき場所なので、これ以上の言及は差し控えたい。端的に言うならFlypaper名義の代表作が〔LOVE CORE〕だとするなら、永元千尋名義の代表作はこの〔コヲロコヲロ〕であるとなるだろう。ぜひご一読いただきたい。
2017 : ぼくらの放課後戦争!
ソーシャルゲーム。サービス立ち上げ時に参画。担当キャラは「本庄翡翠」「森崎みやび」「犬塚咲希」「春日部エリー」「中村栞」「緑川ひかり」「名雲夜子」。
2023年現在もサービスは続いているが、シナリオライターとして関与したのは立ち上げ前からサービス開始初期の半年ほどの間に限られる。上記の担当キャラも今はそれぞれ他のライター諸氏に引き継がれているので注意されたし。
2018-2019 : コンシューマ系
この頃、主にコンシューマゲーム等の開発に携わる。
たとえば、大元のクライアントが超大手の某社で、名前を挙げたら大抵の人が「それ知ってる!」ってなる人気マンガのゲーム化とか。あるいは、大陸からやってきた大人気ソシャゲがコンシューマに進出する際になぜか開発者の末席に加わっていたとか。一時はゲームの開発ではなくソシャゲの運営スタッフだったこともあるし、何億という開発費が湯水のように消えていく大型ゲームの開発で一ヶ月だけシナリオチーフをやっていたなんてことも。
が、これらすべて、具体的なことは何も言えない。
守秘義務ってヤツがあるんでね!!!!!!!!!!!
フリーランスとしては、何も言えないってことは何もやってないってことと同じなので、あまりプラスにはならなかったのかもしれない。
強いて言うなら、めっちゃいい経験にはなった。
2020-
そうして現在に至る。
本当はこの後、一時ゲーム開発から離れて全く違う仕事をしていた時期もあるが、それはここでの言及を避ける。話が長くなる一方だしな!
波瀾万丈・紆余曲折・七転八倒・抱腹絶倒・青息吐息。
退屈だけはしたことがない面白人生は今もリアルタイムで継続中。
さあ、永元千尋の明日はどっちだ?!?!?!?!
2023/07/28
再投稿:2024/05/30