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サイズミック・エモーション

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日向みつきは18歳の予備校生。大きなお節介と小さな迷惑、そして世界規模の陰謀を抱えて、彼女は今夜も東京の空を飛ぶ!
本作は2003年に企画・発案、2004年に小説誌で発表、2006年にノベルスとして商業出版されたも…
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#中央官庁

みんなが、幸せでありますように。

 震度7を超える大地震と大規模火災により、2万を超える人命を奪っていった《首都圏大震災》。それから丸2年が経ち、東京は世界に誇る最先端のメトロポリスへと生まれ変わりつつあった。  落ち着きを取り戻した郊外で暮らす18歳の日向みつきは、一浪中の予備校生。5歳年上で親友の昭月綾や、中学生で妹分の大地瑤子らと共に、都市に潜む数々の事件をひそかに解決(?)していた。  そんな彼女らと、左遷されて退職することばかり考えていたキャリア官僚・久瀬隆平が出会ったとき、運命の歯車が大きく回り

かくて救世への道を往く(2)

男の意地を貫いて  日は沈み、夜の帳が街に降りる。  午後六時。一応の退庁時刻である。 「今日も、何もせずに終わるのか……」  久瀬は暗澹たる思いで鞄を手にして、席を立つ。  天井の蛍光灯を消して廊下へ出た。  驚くべきことに、情報調査室の薄暗い廊下に並ぶ扉のほとんどがすでに施錠されていた。  開かれている部や班も天井の明かりが落とされていて、闇の中でぽつぽつとデスクライトの点いた机が散見できるのみ。それすらも空席が多く、かろうじて管理職らしき職員の姿を見つけても、ラ