ダブル・ライセンスで!
新潟県上越市で、モラトリアムを満喫していた時のことです。午後2時頃だったか、ヒマを持て余していた時、同じ単身者寮の友人が遊びに来ました。いい風呂を見つけたので行こうというのです。
同じ寮生活をしている仲間と連れ立って4人で出かけました。妙高山方面や志賀高原の温泉に行くと思っていましたが、誘った彼はわざと終始無言のまま運転していました。行き着いた先は、街外れにある殺風景なゴミ焼却場でした。悪い冗談だと思いました。
収集が終わっていないのか、前も後ろもゴミ収集車。異様に高い煙突からは、白い煙が出ていました。しかし、その同じ敷地の中に目にしたのは市営の大きな銭湯でした。外見はともかく、中はスーパー銭湯並のお風呂の数々。サウナや打たせ湯等々、楽しむことができました。
実に象徴的な光景を目にしました。市内から運ばれてくるのは燃やして処分したいゴミ。すなわち不要物です。各所で収集車のローターに吸い込まれ、最後は出口が傾斜して焼却炉へ。次から次へとやって来る収集車を飽かず眺めていました。そして、銭湯入口には、お風呂の湯になる過程が図示されていました。
この時、私の頭上に浮かんでいる白熱電球が灯りました。これこそ、カウンセリングでありセラピーだということを。心の不要物をすっかり捨て去って、ここのお風呂でケアしているお年寄りの方々。家も心もゴミひとつない状態はさぞかし気分が良いだろうと思いました。
心に蓄積した悩みは、捨て去るべきです。そのアシストをするため、カウンセラーは傾聴に徹します。ただし、悩みは単なる紙クズのように、ゴミ箱ポイとならないのが難しいことであり、腕の見せどころでもあるわけです。
当然、悩みを捨て去るとスッキリします。しかし、たくさんの悩みが蓄積した心には、大きな空洞が残され寒風が吹きすさびます。悩みと訣別した人が、意外に元気を取り戻しておらず消耗してエネルギー切れのように見えてしまうのもそのためです。心が、冷えているのです。
冷えた心は、レンジでチーンでは温まりません。そんな即物的な方法で、暖められないのが難しいところです。根気よくアフターケアすることが必要です。こうした心の不要物を吐き出させ、暖めるという行為をセットにして、カウンセリングと呼ぶことができると考えます。表裏一体型としては、例のゴミ処理センターと通づるところはあるものの、あのように合理的には終結しないのが、厄介なところです。
私の当初のキャッチコピーは、「いつでも、どこでも、誰にでも」の出張カウンセラーという謳い文句でした。事務所の相談室でクライエントを待つ殿様商売ではなく、こちらから指定場所に出向くという逆パターンを考えました。苦しむ人に足を運ばせるのではなく、フットワーク良く対応したいという根源的な願いから思いついた方法です。
スーパーやコンビニのイートイン・コーナーでも良し、漁船やヨットが停泊する防波堤でも良し、公園のベンチでもいいわけです。しかし実際は自分を見ている人の目が極度に気になるらしく、この「出張」方式は頓挫しました。思わぬことが気になるということは、すなわち悩みをもて余す人の共通点だということに気づきました。アイディアは、ポシャリました。
先に述べたゴミ処理+温浴センターのように合理的にはいきませんでした。しかし、この発想は捨てがたい気がしました。名付けて、カタルシス・モード」と「回復モード」を包括的に捉えることを、私の心理士活動の基本的なスタンスにしようと決めました。
悩みにドップリ浸かってしまった人は、それぞれの程度は異なるものの、世間との分断に陥っています。学校や職場を休みがちになることは、自分の立場を弱めてしまうのは、自然の成り行きです。しかし復帰した時、居心地のいい場にしていくことが求められます。
再び登校し始めたり、職場復帰する場合、相当なエネルギーを要します。しかし、それを自力で乗り越えられるほどの力は、まだ蓄えていないはずです。どうアプローチしていけばいいのかと、ネットをググりまくって、「健康経営」と呼ばれる取組に出会いました。その具体的な内容は、下記ブログを参照ください。
最近の流行り言葉Well-beingと考え方は似ているかもしれませんが、日本の風土には、この「健康経営」がマッチしています。それもそのはず、この取組は厚労省が東京商工会議所が主となっているからです。
東京商工会議所の初代会頭は、新1万円札の渋沢栄一さん。その考え方に共鳴して、認定資格「健康経営アドバイザー」の認定を受けました。学校心理士の狭い守備範囲の拡充を狙ってのことです。働く人々のメンタルヘルス面に着目し、今までの恩返しに捧げる所存です。
しかし、ここしばらくは、心に障碍を抱える子どもたちのアシスト役として、臨時職員ながら教育公務員として勤めていくつもりですので開店休業状態です。いわゆる副業は、禁じられている立場です。もちろん、ご依頼には無料にて応じるつもりですが、時間的、体力・精神力的に限界があります。
しかし、そういった制限もあと数年です。もう2年雇ってもらえたら、良しとすべきでしょう。妻の還暦に合わせれば、あと3年勤められたら本望です。もちろん学校現場でも、先に述べた表裏一体のアプローチは、効果ある取組になることでしょう。
1998年10月、所属していた日本教育心理学会から、学校心理士の資格認定を受けました。せっかくもらった資格は、2003年に失効。周囲の理解も乏しかったので、放り投げていましたが、定年退職する2022年に復活取得しました。岩手大学まで最終面接試験に出かけて、3人の面接官に熱い思いをぶつけた末に24年ぶりにライセンス保持者となりました。
学校心理士という名称は、即「スクール・カウンセラー」を連想される方も多いと推察されます。しかし、正確な呼称は「スクール・サイコロジスト」ですので、カウンセリング、コンサルテーションの両方をこなすスキルを支える教職38年のキャリアの後ろ盾があります。加えて健康経営アドバイザーとして、職場のメンタルヘルスや引きこもりなどへもアプローチしていきたいと考えています。
こうしたダブル・ライセンスによって、人間版ゴミ処理+温浴センターになって、困っている人たちがホンモノの自立まで至るため、根気よく取り組んでいきたいと思います。
随分ご立派なことを言っていると思われそうですが、私自身の本音は大きく異なります。かつて大学院のゼミの先生からいただいた言葉を実践するだけなのです・
「49%は人のために、51%は自分のために生きてください」
by Takaharu Katsukura(1995)
すなわち、老いても100%の人生を生きていくことで、「スキマ」の発生を防いでいきたいのです。驕り高ぶった余生にしないためにも、人に尽くしていく割合を少なくしてはならないと、自戒しています。もちろん、お代はいただきます。月収5万円を目標としています。
2027年頃のオープンを考えています。先の話ではありますが、その際は「宇想月カウンセリング事務所」を、よろしくお願い申し上げます。まずは、心のゴミ捨て作業から始めましょう。それが終わったら、温浴でお寛ぎください。只今、予約受付中です。