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温水洗浄便座考

[ご注意]本稿では、下品な話をさせていただきます。エログロな表現をすることがあります。センシティブな方は、ご留意ください。

 シャワー・トイレの研究及び開発者には、ノーベル賞を授与したい思いでいっぱいです。快感部門、衛生部門、洗浄部門など、多岐に渡ります。ITの発達により「菊の御紋センサー」が付けられたら、即購入します。まだまだ発展途上であり、ヒダのひとつひとうをクリーンアップするまで、更なる研究が必要でしょう。

 我が家にシャワー・トイレが導入された時、どんなに喜んだことか。これで、自分のお尻の穴が痛くなるほど拭かなくても済むと思えば、まるで天へ昇る思いでした。

 若い頃、完璧主義者であった私としては、風呂に入る前に脱いだブリーフに、黄色い汚れが着いているのを、許せませんでした。そのためお尻を紙で拭いた時、紙に血が着いていることが、よくありました。常にヒリヒリ痛むので、最後にペーパーを湿らせてウェットティッシュ状にして、拭き取るのが習慣化したほどです。

 さて、芥川賞作家の花村萬月さんの作品は、エログロ満載です。ある作品では、公衆トイレでの強引な性描写が描かれていました。女性の下腹部に顔を近づけた男が「臭い」と呟き、女が、「家にはまだ洗うのがないので」と答えるシーンがありました。これは、単なる悪趣味なスケベ小説ではありません。

 このシーンに、強烈なリアリズムを感じました。萬月氏の視点は、読者を無理矢理興奮させてしまう絶大な効果があります。芥川賞を獲得したにも関わらず、純文学の殻をぶち破って究極の性描写を追求していったのでした。

 昔は、みんながパンツに汚れを着けて生活していました。温水洗浄便座が普及し始めたのは1980年代のようです。田舎では、ポッチャン式から水洗トイレへの移行が必要でしたから温水洗浄機能はその次の段階です。また和式から洋式への移行時期もありました。すなわち、田舎暮らしの私にとって、温水洗浄を手に入れるまで、長い年月が必要だったのです。

 もう少し畳みかけましょうか。令和の時代になっても、ちゃんと洗浄しきれていないお尻の穴付近が、歩くとニチャニチャする不快な状態は絶滅していないと思います。また、臭いを発して、誰かに気づかれないか心配する経験は、その構造上誰にも起こり得ることです。

 なお、シャワー・トイレの普及率は、8割だそうです。当然、少数派の2割に遭遇し、仕方なくというシチュエーションもあるはずです。そんな時、あのノズルから吹き出る温かい水流のありがたさを心から感じるはずです。

 突然の脱線をお許しください。ちゃんとググったら、ウォシュレットはTOTO、シャワートイレはINAXの登録商標でした。今まで、シャワートイレを一般名詞の如き使い方をしてきました。お詫びして、訂正いたします。今後は、温水洗浄便座か温水洗浄というテクニカルタームを遵守していきますので、よろしくお願いいたします。

 テクニカル・タームとは、「学術用語」と訳します。この正確さが、まともな研究かどうかの分かれ道。例えば「カウンセリング・マインド」という言い方は、嘘っぱち。「カウンセリング」という用語の中に「マインド」が含まれるからです。「いにしえの昔の武士の侍が」と実しやかに言う人など、信用できませんね。

 さて、今までの記載ミスは敢えて訂正せずに話を進めます。ここまで1400字近く書きましたが、訴えたいことはただひとつです。温水洗浄便座は、人類の大発明だと言うことです。私にとっては、人生を変えてくれたシステムだと言っても、大袈裟ではないと思います。

 このシステムを最初に使ったことを、覚えていらっしゃいますか?特に、60代以降の方に伺いたいのです。私は、初めて温水砲が当たった時のことを、今でも覚えています。それは、思わずヒェっと跳び上がる、驚きの初体験そのものでした。しかし、お尻だけ風呂上がりのような爽やかさを味わい、うっとりしました。

 こうした快感をエスカレートしようとするのが、人間の性です。自分が満足する強さや当たる位置など、研究を重ねました。ジャスト・フィットするまで、試行錯誤の連続でした。しかし、たゆまぬ努力の結果、ド真ん中に命中。そして腰の微妙な回転により、完璧洗浄を試みます。ある程度満足する結果を得られたら、次なる高みを目指すことになります。

 出口のすぐ奥には、当然のことながら、次なる排泄を待ち望んでいる物体があり、何かの拍子に外へ飛び出す危険性は否めません。そこもクリーンにできるのではないか。そんな発想が湧き起こりました。すなわち、内部洗浄ができないかという思いに至ったのです。そうすれば1日はき続けたパンツも、平穏無事に役割を果たすことができることでしょう。

 その願望は、新居で実現することができました。新築の家は、トイレも新品で「尻乗せ式」も厳かに行われました。未使用の新品に座ったのは、生まれて初めてのことです。温水洗浄の勢いが、全く違っていました。そこで、例の願望実現に向けて、お尻の力を抜く方法を模索しました。何度かの挑戦により、願いは叶いました。いわゆる直腸エリアまで届いたのです。

 当時の便座メーカーは、”National” でした。子どもたちがまだ乳幼児だったので、使わなかった2階のトイレが、私専用でした。中に入った水は、少し力む(いきむ)だけで排出できます。内外が洗浄されたお尻は、誇らしささえ感じます。そこで、極めてクリーンになった状態で出勤し、勤務先では個室を使うことがありませんでした。

 その話を同僚に語ると、嫌がる人、興味津々になる人の2パターンに分かれますが、だいたい一度は挑戦するようでした。しかし、その成功談を語る者なしでした。どうやら、それができるのは私だけだったようです。横で私の話を聞いていた先輩に「幻滅した」とも言われました。急に私が、下品な人間と思えたようです。

 この記事を読まれている方にも、不快感を覚えた方もいらっしゃるかと思います。私は、多様なフェチズムを抱く人間です。それをご了承の上、お読みいただきたいのです。言い換えれば、「固執癖」「強度のこだわり」と言ってもいいかと思います。しかし、これがトイレ学上の主たるモチベーションですので、お付き合いいただけたら幸いに存じます。

 さて、温水洗浄論も発展していきます。私の経験則では、水流に様々な「形」を発見しています。やはり、ピンポイントを狙う水鉄砲常の水流に一定の形がないと、命中は困難になるはずです。標準的には、円形です。しかし、完全な丸形の例は、ありません。大部分が楕円形になっていると思われます。

 しかし、高級品では、星形というか石がポチャンと落ちた時の水の飛び散り方に似た、隅々まで洗浄してくれるような形の水流も経験して夢のようなシステムもありました。日本製ですが、メーカー名すら未確認のままなのです。

 粗悪品もあります。まるでノコギリ状の水流が、お尻を切り裂かんばかりに突入してくるのです。そうした機器のボタン類も粗悪で四角い物だったと記憶しています。少額に抑えた設備投資であることが明らかであり、その店の経営方針が見えてきてしまいます。そういう客あしらいをする店と認識できるでしょう。

 私自身、洗浄にかなり長い時間を要します。残念ながら、我が家のシステムは、貯湯式で、お湯の量に限界があります。また、自動ノズル洗浄も付いていません。また、温風乾燥機もありませんが、あまり必要ではありません。やはり、水流にこだわりたいと思います。

 確実に汚れを洗い落とし、敏感な部分に優しく、できればセンサーにより確実に命中し、前後の動きも自動化されたら理想的ですね。メーカーの研究員の方々は、日々お尻を実験台にして、より良い製品開発に邁進していることでしょう。心から敬意を表したいと思います。

 催してきました。トイレ・タイムの始まりです。トイレだけ、そろそろリフォームしようかな。では、尾籠な話に長々とお付き合いいただき、心より感謝しつつ、駆け込みます。ありがとうございました。これにて、失礼します。


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