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ホンモノのご飯を!

 年末は、買い物をしないと気が済まないようで、昼間はとにかくアッシー君を務めました。いつもこの時期には、食糧危機の前触れの如く誰もが目の色変えて歩き回っています。私が行くのは、主に人間観察のためです。

 まるで、正月に外出禁止の戒厳令が出るような雰囲気。時には、愚かな議員さんたちのような不毛極まりない言い争い。こんな人間模様を楽しんでいました。そもそも、年が改まって何がおめでたいのかというヒネくれた考え方は、いわゆるハレの日に備えた準備をしなくなってからのことです。

 しかし子どもの頃は、ウスとキネによる餅つきの慌ただしさに、心ときめいた覚えがあります。父母と祖母の連携プレーを、鮮烈に覚えています。私が使いものになる頃、電動餅つき機導入。妙にシラケ始めたのは、その頃だったのかもしれません。最近は、年がら年中売っている個包装の餅を食べて、後は普段の食事を食っちゃ寝るを3日間過ごして終わります。

 紅白歌合戦を見なくなったのは、いつ頃からだったでしょうか。最近は、「孤独のグルメ」を見ています。動きの少ない井の頭五郎の動きに饒舌極まりない内なるセリフのギャップが、実に軽妙な演出。ついつい見続けてしまいます。そして、午後7時のニュースで電源オフ。

 少額ながら年末何とかという予定外の収入。自分が何を欲しているかを、考えてみました。そして、大型店に買い物に行っても、常に手ぶらで帰宅します。こんな物が、こんな値段かよという怒りに似た感情になり、結局はAmazon でいいやという結論に至ります。

 外食には、あまり行きません。酷な言い方をすると、マズくて高い物を我慢する心がないからです。「食は文化」をモットーにしている私としては、わざわざ食の貧困化を実感したくないのです。詳しくは、先日の記事をどうぞ。これは、日本の「恥」そのものだと思います。

 しかし、時々は嬉しい驚きに遭遇します。本物のご飯に出会った時です。まず香りが違います。一粒一粒のツヤが違います。ハフハフしながら咀嚼します。コクのある味わいにより、この1品だけで、満足感に酔いしれます。これも貴重品になりつつあります。

 こういうご飯は、冷めた状態でも味わいを損ねることはありません。おにぎりにしてもコメが立っています。私にとっての外食は、家では食べられなくなった白飯との出会いなのです。もし、家で実現できたらという夢を抱いてきました。またも、子ども時代を思い出しました。

 兼業農家でしたから、米は自給自足でした。銘柄は、ササニシキ。これを火で炊くのです。茅葺き屋根時代は、台所に釜を据えつける台座があったと記憶しています。私は、お風呂の焚きつけ担当で、外から薪をくべたり、竹筒で息を吹いていた記憶がありますから、飯炊きも同様だったと思います。

 トタン屋根の家では、大きなガス釜でした。炊き上がったら、おひつに移し、底にへばり付いたオコゲをねだって食いついたものです。これが、ウマイんです。これは、戦前の話ではありません。昭和40年代の話です。

 そんな美味に拍車をかけたのは、新潟県でコシヒカリに飽きてしまったり、民宿で毎日宴会料理をオカズにして食べたご飯の数々です。つまり、舌が肥えまくっていたわけです。酒であれ、ご飯であれ、私をコメで誤魔化せる人は、この世に存在しません。

 2000年から住んでいる我が家に、ガスの設備はありません。熱源は、石油と電気のみです。あれから四半世紀。ガスのありがたさを感じるようになりました。電気炊飯器のご飯は、どうやってもおいしくないのです。

 断酒して8年目になりました。おいしいご飯を食べたいという、ささやかな夢を心に抱きつつ、我慢の限界がやって来たのです。どうしても、あの頃のご飯を常食できないものか、真剣に考えるようになりました。

 そういえば晩酌習慣があった時、夕食でご飯は食べませんでした。お昼は学校給食でしたから、朝の一膳で良かったわけです。酒の禁断症状は、ありませんでした。しかし、ご飯はジワジワと欲求が蓄積して、遂に爆発しました。

 納得できるご飯を求めて、炊飯器探しが始まりました。今使っているのが、8年程前に長男が県外進学の時に1升炊きからチェンジした物だとか。我が家の食糧消費量がピークを過ぎた頃でした。5合半炊きに縮小したわけです。

 値段は、ピンからキリまで様々でした。CMで、有名俳優のイケメンさん曰く、「朝ごはんが楽しみで、つい早く起きてしまう」というセリフに引き込まれそうになった高級品が、11万円もしました。それをトップにして、有名料理人推薦やら何やらと競合状態でした。

 ネット検索で評価を調べたところ、高い製品ほど優秀という当然の結果でした。例の下取りありの佐世保ネットでも、早起き炊飯器の1ランク下を推していました。洗濯機同様に毎日稼働することを考え、例の年末何とかを注ぎ込んで、11万円の早起き炊飯器に大英断!!!
しかし、以下の有難い教えを思い出しました。

買い物で後悔しない方法を先輩から教えてもらった経験があります。新卒3年目。品物は、腕時計でした。後に岐阜県高山市の美術館に転身する美術担当の先輩のアドヴァイス。3度目の正直法と名付けました。
 まず、品物一覧から候補を2つ選ぶ。そして全く関係ない品物を眺めてから戻り、候補を1個に絞る。そして、また別の売り場に行き、記憶をボヤけさせる。
 また戻って来て、選んだ品物を見据える。他から浮いて見えたら買いで、見えない場合はパス。最初からやり直しをするべし。

座右の銘:小山聡氏の教えを守る

 貧乏だった私が、ディスカウント・ショップで予算5千円で腕時計を買おうとした時、センス抜群の先輩から5個ぐらいの候補を選んでもらって、決断に至る過程でした。その時計は、完全に壊れるまで、10年愛用していました。

 あの当時から比べると、目は肥え、分析力は発達したとはいえ、5年前には高いクルマをテレフォン・ショッピング。時々やってしまう衝動買いの悪癖です。

 お金を出すのは私でも、うまいご飯の想像はグングン膨らんでいきます。こんな時は、一晩寝てから再検討するのがいいと判断しました。我ながら賢い判断でした。

 問題の最たる要因は、CMに踊らされている自分です。いつだったか、CMで助手席にタイプの女性が乗って微笑んでいたのに、納車されたクルマには、その女性どころか、ぬいぐるみすら乗っていませんでした。

 炊飯器の話でした。例のイケメン俳優と朝食を共にする気も美味を堪能する顔も、現実に見たいわけではありません。またハウスメーカーの、「半値八掛け」という恐ろしい実態も知っています。ここは、冷静な分析が必要でした。

 Googleで、「電気炊飯器とガス炊飯器の違うところ」を検索しました。そして、肩を落としました。炊飯する温度が全く別物だとわかりました。電気は300℃、火は1700 ℃ ! 一昨日食べに行った焼肉は、ホットプレートで焼いた物とは雲泥の差でした。電気釜でどう内部を対流させようが、300℃以上に加熱は不可能です。

 購入は断念しました。自分の食事回数は、あと何回残っているだろうか?新規にガス設備を導入するのには、いくら必要かについて、正月明けに問い合わせしてみようと考えています。総額11万円だと、決断するかもしれません。ここに来て、ご飯とは残酷な話です。毎食、悲哀を感じる日々を送る余生を過ごすと思うと堪りません。助けてください!

 私は真剣です。本稿をコンテスト#かなえたい夢に応募するぐらいですから。人生の救世主の到来を、切に願っております。


注)筆者は、悲哀たっぷりに語っておりますが自分を見失っている状態とも推察されますので大変危険な状態です。安全のため、あくまでも第三者として観察していただきますように、お願い申し上げます。



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