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EVレジスタンス!

 52歳で退職しました。転職のためです。退職金は、自らを担保とする職場の住宅ローンの残額をさっ引かれて支給。更に、あれこれ支払い等を済ませて、無借金の身になりました。結局は、クルマ1台分の金額が残りました。

 これからも普通に働くのだから、それを頭金にして1000万超の外車を新車で買おうかと思いました。しかし、新たな職場は給与が多少下がることが気になり、国産車の新車を現金で買うことにしました。大きな買い物にローンを組まなくて済むのは、生まれて初めてでした。

 実は、新車を買うのは3回目。カーナビの付いたのを買うのは、初めてのことでした。買うクルマは、決まっていました。トヨタのエスティマです。早速、ディーラーに行き「エスティマ・ハイブリッドを買います」と言ったところ「現在、新車のご注文はお受けできません」という返事にビックリ仰天!

 この時、エスティマの生産を存続するか否かで、結論が出されていない状態だったようで、ディーラーとしては注文を受け入れられない状況だったそうです。その頃、トヨタは売れ筋の箱型ミニバンの車種を増やす方針転換に従って天才タマゴの愛称で呼ばれて売れに売れたモデル販売を、生産中止の対象としていたとか。

 退職間際、10万円で知り合いから譲ってもらった24万キロ走行車に乗ってガマンしていたので、まさに出鼻をくじかれた思いをしました。他のメーカー等も物色したものの、デザイン的にどうもピンと来ませんでした。

 冬タイヤ他のオプションを加えると、こんなクルマがこんな値段?という結論になってしまいました。全てが、ハイブリッド車でした。当時、ガソリン価格は高騰しており、ハイオクなんてとんでもないと外車も諦めました。買いたいクルマが、見つかりません。

 仕事は、超退屈でした。真昼間にディーラーに出かけて、試乗しまくりました。即金で買うというのを鼻にかけて、ガンガン値引きの見積りを出させて、納得しないとバイバイという非常にイヤな客でした。ディーラーの人たちには単なる冷やかしに見えたと思います。

 ちょうどモデルチェンジの端境期だったようで、魅力あるデザインのクルマと出会うことがなかったのです。せっかく資金はあるのにと、文句タラタラでした。不作、凶作の時期だったようです。5年前までスウェーデン車に13年乗っていた私には、国産車の性能よりも内外装のデザインや走りの良さに目がいってしまうのでした。チャチイのは、イヤでした。

 ここで、ワガママ男に天罰が下されました。もう11年前のクルマの話ですので、遠い過去の事案として関係各位におかれましては、何卒ご容赦いただき、笑い飛ばしていただきたいと思います。事実を述べますが、誹謗中傷ではありませんので、どうぞご了承ください。

 試乗も嫌気がさしてきた時、「オモチャ」を見つけました。某社の電気自動車です。急加速ができる遊園地のゴーカートのようなノリに惹かれて、本格的な商談に臨みました。まず国からの補助金で、大幅値引きされるということ。そして、自宅車庫に充電設備設置(15万円)がタダ。更にスタッドレス・タイヤが無料等々、おまけのオンパレード。結局は、オーディオのスピーカーを良くしたぐらいでした。

 支払いは、現金一括。当初考えていた予算を150万もプライスダウン。しかしその後、魅力的なクルマが次々と発売されて、補助金の4年縛りに苦しむハメになるのです。2台を所有するスペースも予算もなく、期限まで10年も待った思いをしました。しかも、下取り額がどこに行っても50万円。新車4年で、300万超が、そこまで落ちるとは......。

 充電は、ほとんど自宅の夜間に行いました。電気料金の変化を半年分チェックし続けましたが、数値上の差はありませんでした。燃費ならぬ電費は、限りなくタダに近い状態でした。帰って来たらコネクタにケーブルをつなげて、夜中には100%になります。カタログ値は、満充電で280kmとありました。往復30kmの通勤に何の支障もありませんでした。

 通勤時、後ろにマフラーを改造したヤンキー車が来ると、わざと法定速度で走り、アオリを誘いました。前方が開けた時、急加速。アクセルを踏んだだけでフルトルクですから、頑張ってついて来ようとするヤンキー君をブッチギリます。そのイタズラも、すぐに飽きました。

 音もなく走ります。いい音を聞けるのですが室内のせいか安っぽい音しか出なくて、FMラジオばかりになってしまいました。そして、独特なキューンという音が耳障りでした。静かな環境は、寝室に求めるべきでした。

 月会費を1500円ほど出すと、各地にあるディーラーの急速充電設備が使用可能。30分ほど待つことになるので、店内へ。ディーラーが喫茶店に早変わりします。コーヒー代までタダかよと、一時期ご満悦状態でした。

 しかし、息子や娘の練習試合のため、それなりに遠い場所に行く時、ナビに表示されているディーラー探しが必要でした。試合場所に子どもを降ろして、充電場所に走ります。すぐ近くにあるなんて、都合のいいことはありませんでした。待ち時間の30分が、イライラ時間に変わりました。同じ部の親たちから「無関心」や「無責任」という烙印が押されつつあるのを感じたからです。クルマのせいにしました。

 さて、当時の280kmというカタログ上の走行可能距離をどう捉えるか、お伝えします。適正加速、適正速度、エアコンオフの非現実的なデータなのです。一番電気を食うのは暖房です。冬場は半分と考えていいでしょう。氷点下の中を無暖房で走る情けなさは、このクルマでしか経験しないでしょう。完全重装備で運転するハメになったこともありました。

 私は、満充電で100kmと割り切っていました。目的地まで50km弱でも、無事に帰って来られる見込みなし。出発時、ガソリン車だとガス欠警告状態のクルマを走らせるような非常に不快なドキドキ感。残りの充電量の数値ばかり見ている心の余裕のなさ。わかっていただけるでしょうか。

 最近はバッテリー容量が大きくなり、カタログ値走行距離が400kmオーバーの車種も出てきました。それでも、実際は7割程度と考えるのが妥当でしょう。単純計算で280kmですが、実際は250kmというところ。そして冬場は200km。まるで頼りになりません。

 さて、電気自動車の普及は世界的に推進されているようですが、大義名分は地球温暖化防止のため二酸化炭素等の排出削減による脱炭素化だそうですが、素朴な疑問を抱きます。バッテリーを充電するための発電は、環境負荷ゼロでない限り、究極の矛盾ではないかということです。しかし、それを公然と発言する人を、一度も見たことがありません。

 電気自動車は、環境保護対策になる。そんな言い方の施策は、うさん臭いと思いませんか。牛のゲップによる二酸化炭素排出が環境負荷になっているという話の方が、信用できます。こんな国際的規模での矛盾を抱えつつもノンカーボン、カーボン・ニュートラルの提唱には、ウラ話があるはずです。

 電気自動車ごときで何とかなる問題では、なくなっているのは、年中行事の如き自然災害が示すとおりです。内燃機関のクルマを無くしても、壊れた地球は元に戻りません。

 馴染みの外車ディーラーの人が、1000万のスポーティな電気自動車を指差して「500万はバッテリー代」と言ったのを忘れられません。電池に半分の代金をブン取られて、外装や内装、安全設備・快適設備に半分なのでした。10万のスーツに10万のパンツのようで、笑ってしまいました。

 自宅に充電設備があります。年金生活は、オンボロ中古の電気自動車もいいなと思っているところです。50万あれば買えますからね。さあ、お若い皆さん方!どうしますか?私の経験を、どうぞご参考にしてください。今や満タンで1000キロの時代ですよ。

 





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