【美大を出てるからデザイナーになれるの?違うそうじゃない。 時間とお金と先生の話。】
数ある記事の中から目を留めて頂き、ありがとうございます。
観察することが大好き、Liall.のshibutyaです。
まず前回に引き続き、記事を読んで頂きましてありがとうございます。
まだ読んでいない!というあなた、こちらからご覧頂けます。
今回は「デザイナーになるまでにどれくらいの費用・時間が必要なのか、またデザイナーの基礎を作ってくれた先生」を「リアル」にお伝えしようと思います。
「タイムイズマネー、マネーイズタイム」
時は、私が16才だった頃に遡ります。
私は頭が良い訳ではなく、物を作ることが好きだからとの理由だけで美大を目指し、画塾に通い始めました。
通い始めた頃私が行なっていたのは、そう、誰しもが通る茨の道「デッサン」です。
現在美大を目指して勉強されている方、デザイナーとして活躍されている方の中には「分かる!懐かしい!」と思われている方がいらっしゃるかもしれません。そう寝ても覚めても「デッサン」をする、基礎の基礎ですね。
ここからデザイナーへの下積みが始まっていると仮定し、私が通っていた画塾でお金、時間をがどれくらいかけていたのか、ざっと概算してみました。
(途中でコース変更を行なったので、こんな感じです)
画塾の場合
お金
月2万円x17ヵ月=34万円
月4万円x12ヵ月=48万円
合計:82万円
時間
6時間x4日/月x17ヵ月=408時間
3時間x24日/月x12ヵ月=864時間
合計:1272時間
またざっくり大学では時間、費用面ではこうなりました。
大学の場合
お金
1年150万計算x4年=合計:600万
時間(学校滞在時間中の制作時間のみで計算)
8時間x24日/月x12ヵ月x4年=合計:9216時間
…ありがとう、お父さん、お母さん。
両親に感謝してもしきれないこの初期投資…ありがたいことです、本当に。
もちろん、画塾ではこれ以外に画材費などもかかりますので、合計100万は楽に超えていると思います。
この期間が直接デザイナーになるきっかけに繋がった訳ではないのですが、この時の経験が今の「ものづくりの基礎力」になった一番大事な期間です。一言で言うと「真剣に見ること、信頼できる人を信じ抜くこと」を学びました。この力は今、私がデザイナーをする上で一番役に立っています。特に苦しかった受験期、この時の支えがあったからこそ今の私があります。その時のお話を少しだけさせて頂きますね。
「突然描けなくなったデッサン」
18才の受験シーズン、ちょうどデッサンの枚数が60枚を突破し始めた頃、スランプを感じ始めました。「思うように描けない、周りの人との技術の差が開いている気がする」と自分の中で負の感情がフツフツと湧き上がり、ある日突然鉛筆を持つ事ができなくなりました。
そして、次第に涙が止まらなくなり、トイレで泣くようになりました。
(このManatyもさんも似たような経験をされていました)
冗談ではなく、マジでやばいのではないか…
最初は「お腹が痛いのか」、「疲れているの?大丈夫?」と先生や同期にとても優しい言葉をもらっていましたが、この気持ちを伝えるのが怖くてできませんでした。皆が頑張っている中、甘えている場合ではない、と。しかし、とうとう限界がきてしまい、ある日先生に打ち明けました。
「…先生、すみません。デッサンを描くことができません。」
歯を食いしばりながら、涙をボロボロ流しながら、あまりにも不恰好に伝えてしまっていたからか、その時先生がとても驚いた表情をしていたことを覚えています。
その後、先生は黙って私の横に座り、こう言いました。
「今日一日は、自分が描くのを見ておいて。」
実は似たような出来事は社会人になってからも起きました。(前回記事にその時のことを掲載しておりますので、ぜひご覧下さいね。)
その後は、もう本当に泣きながら6時間ぐらいずっと見てました。画塾はシュールでカオスで騒然としていたに違いありません。友達も唖然としていたと思います。6Bの鉛筆から2B、Hから3Hと鉛筆が持ち替えられながら完成していくデッサンを見てながら悔し涙を流し続けました。ついでに鼻水も出ていたと思います。それと同時に「どれぐらいの力の強さで描いているのか、先生はどの部分を見て描いているのか、時間配分はどうしているのか」をとにかく真剣に考え、向き合いました。この時初めて「真剣に見る」ということを肌身をもって感じました。それからというもの、私はスランプを脱出し、「見違えるほどに成長したね」と褒めてもらうことができ、実感として一歩壁を乗り越えられた感覚がありました。この時は本当に嬉しかったです。
またこれ以外に、もう一つ大事な出来事がありました。
「他の画塾へ行かないでほしい。」
美術系の大学への進学は、それぞれ大学によって好みのデッサンの雰囲気があります。(あくまで私の見解ですが)私が通っていた画塾のデッサンは私が第一志望で行きたかった大学のデッサンの雰囲気とは離れていたので、今通っている画塾をやめてそちらに移るべきかと悩んでいました。「1年半通ってきたところを離れるのは寂しい。でも自分の将来のためならそう決断せざるを得ないのか…」と苦しい思いがありました。
画塾での作業が終わったある日、私は先生に「第一志望の大学として〇〇を考えています。でも〇〇大学の受験デッサンは私の行うデッサンとは雰囲気がかなり離れているので、〇〇大学入学者を多く輩出している画塾に移動しようと思っています。今までお世話になったのに…本当にすみません。」と伝えました。
すると、先生は今までに見たこともない程の悲しそうな顔でこう言いました。
「確かに、あの画塾は毎年〇〇大学への入学者を出してるね、それは間違いないよ。それに比べると自分のところはまだ一人もいないし、実績もない。でもね、僕はね、どうか受験が無事に終わるまで…ここにいて欲しい。まだまだ自身が足りない部分もいっぱいあるし、講師として駄目なところばかりだけど、必ず後悔させないようにする。全力でサポートするし、〇〇大学に合格させられると断言できないけれど、絶対に「ここにいてよかった」って思えるようにする。それは約束するよ。そしてあなたが先頭に立って、ここの同期の仲間を引っ張ってほしい。あなたを目指して頑張っている人はたくさんいる、僕自身も本当に支えられている。だから卒業するまでここで頑張ってほしい。わがままかもしれないけれど…お願いします。」
(なんだよこれ…。)
そこまで自分のことを真剣に考え、寄り添ってくれる人がいたのかと心から驚き、当時とても感動しました。大勢いる生徒の内の一人だけど、この先生は「真剣に生徒一人ひとりと向き合っている。少なくとも私の事を本気で信じて、頑張って欲しいと思ってくれている。」その熱い気持ちに心打たれました。この時、「絶対最後まで先生についていく」と心の中で誓いました。
それから私は画塾を変更することなく、デッサンコンクールでもTOP3を走り続け、できる限り技術を磨こうと必死で描き続けました。とにかく「真剣に信頼してくれている人の気持ちに応えたい」この気持ちが辛かった受験期を支えてくれました。最終的に第一志望校に合格することは叶いませんでしたが、受験当日に描いたデッサンが合格した大学のパンフレットに掲載され、学部2位で通過しました。そのことを先生にメールで送信すると絵文字いっぱいの文面で「おめでとう!」と返ってきたのを今でも覚えています。
時間とお金、本当にたくさんのことをこの画塾に捧げましたが、一切後悔していません。むしろ導いて下さった先生、同期たちに心から感謝しています。最終的に嫌いになりかけていたデッサンも大好きになりました。
「本気で信頼してくれる人に全てを捧げよう。結果は後からついてくる。」
(心臓を捧げよ!)
これが私の18才の経験でしたが、この時に「よく物を見ること」と「信頼できる人を信じ抜くこと」を学び、今のデザイナー人生でも生き続けています。ただ見るだけでなく、「なぜこうなっているのか?」「どうしてこの部分はこの色なのか?」を見抜くことの大切さを身に染みて感じています。例えば画塾に限らず、大学、会社、職業訓練校でも同じです。この人なら信頼できる!という人を信じて、ついてきました。すぐに結果が出なかったとしても「生き方や姿勢に憧れているからついていく」、そういう考え方でも良いと思います。
世の中、いろんな人がいます。
・お金に取り憑かれ、判断能力がなくなる人
・結果に囚われ過ぎて、本当に大切な物を失う人
・簡単に裏切る人
どうかついていく人を間違えないでくださいね。
「そんなできた人間、どこにいるんですか?」
意外とあなたの側にいるかもしれません。
記/shibutya
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