ナチュラルクリーニングのすすめ
環境に配慮した掃除方法として、ナチュラルクリーニングがあります。
その代表格は重曹(炭酸水素ナトリウム)やセスキ炭酸ソーダ(炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの複塩)、クエン酸があります。
当店で取り扱っている 618 Scallop powderは水酸化カルシウムになります。
簡単にそれぞれの特徴と汚れを落とす仕組みを化学的な視点で解説していきます。
汚れの原因は?
まず、日常生活での汚れで1番多いのは油汚れや皮脂汚れなどの酸性汚れです。
アルカリ汚れは、水あか、石鹸汚れなど水に含まれるミネラル分による汚れが主要因になります。
一般的には、汚れに対して反対のpHを使うことで、汚れが除去されます。
日本家政学会誌 Vol.72 (2021)では、これを「洗浄における酸•アルカリ中和説」と定義されています。
簡単に言うならば•••
酸性汚れ → アルカリ性の物質を使う
アルカリ性汚れ → 酸性の物質を使う
※大まかに分けるとこの2種類ですが、中には中性汚れや炭化水素系汚れが存在します。これは次の見出しの中で解説します。
ナチュラルクリーニングは、基本的には石鹸成分や界面活性剤を使用しないため、この特性を正しく理解する必要があります。
油汚れや皮脂汚れの原因物質
動植物性油脂に由来するもの、皮脂や垢、血液に含まれるものが多くあります。一般的には、以下の割合になります。
トリアシルグリセロール : 約33%
遊離脂肪酸 : 約30%
その他(コレステロール、ほこり、ちりなど) : 約37%
トリアシルグリセロールは聞きなれない言葉と思いますが、化学の世界での正しい名前で、いわゆる「中性脂肪」です。
その名の通り、酸性ではなく、中性なのです。
油汚れではありますが「酸性」ではないため、ナチュラルクリーニングで使うアルカリ性物質では落ちにくい汚れの1つです。
酸性汚れ
一般的には油汚れや皮脂汚れは「酸性汚れ」と呼ばれます。
間違いではないですが、正しくは「油脂が酸化した脂肪酸による汚れ」が酸性汚れです。
上記の通り、汚れの1/3を占めることになります。
酸性なので、アルカリ性物質で汚れを落とすことができます。
中性汚れ
トリアシルグリセロールが主な汚れになるため、界面活性剤(水と油を混ぜ合わせる助けをする)を含んだ洗剤であれば除去が可能です。
重曹とセスキ炭酸ソーダのpHは、8〜9と弱アルカリ性です。
肌には優しい反面、油脂への効果は限定的であるため、染み込んだ汚れが取れにくいため、油脂酸化による黄ばみやタンパク質分解による匂い発生などが起こりやすくなります。
故にナチュラルクリーニングでは汚れが取れにくいと誤解されてしまう要因です。
では、ナチュラルクリーニングでは、中性汚れは取れないのか?そう思われるかもしれません。
中性汚れは強アルカリ性を使用する必要があり、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が代表成分です。
トリアシルグリセロールは、油が強く結びついている(エステル結合)のですが、高アルカリ性条件下では、加水分解と呼ばれる結合を切る反応が起きます。
さらに、けん化と呼ばれる反応が起き、石けんとグリセリンに変化します。
これにより、中性汚れが除去できます。
ただし、水酸化ナトリウムは劇薬なので、取扱に注意が必要です。
618 Scallop powderは水に溶かすと水酸化カルシウム水溶液となります。
pHは12-13と高アルカリ性でありながら、ランゲリア係数が水道水よりも大きく、刺激の少ない物質です。
(詳細は以下にまとめています)
618 Scallop powderは食品添加物としても使用できるグレードであり、安全かつ中性汚れにも対応できるナチュラルクリーニング用製品です。
※ただし、アルミ製品やアルカリ洗浄が不可と表示された製品には使用できませんのでご注意ください。
重曹やセスキ炭酸ソーダ
重曹は酸性汚れの除去と共に、細かい粒子で研磨剤としての効果が期待できます。焦げ付きなど、酸化した汚れには重曹が適していると言えます。
セスキ炭酸ソーダは、水に溶けやすく研磨剤としては使用できません。重曹よりもpHが高いので、酸性汚れに強いです。
炭化水素系汚れ
こちらは石油由来や鉱物油由来の油に含まれる汚れ(インキや塗料など)になるため、ナチュラルクリーニングでは対応できないとされています。
有機溶剤を使ったドライクリーニングなどで対応する他ありません。
アルカリ性汚れ
水に含まれるカルシウムやマグネシウムが析出した汚れや石けん成分由来の汚れになります。
これはアルカリ性なので、酸性のクエン酸や酢(酢酸)で中和することで汚れを除去できます。
重曹とクエン酸を混ぜて掃除?
最近、ネット情報では重曹とクエン酸を混ぜて掃除するというのを見かけます。
化学的な見解を申し上げると、これは無意味です。
重曹とクエン酸は反応する際に中和しますので、汚れにアプローチする前に中性になってしまうので、汚れ除去効果は期待できないと考えます。
バスボムと同じ原理で、反応時に炭酸ガスが発生するため、見た目のシュワシュワで汚れが取れているように見えるので、これのイメージが先行してしまったのではないかと思います。
炭酸発生時に物理的に汚れを浮かす効果はあるかもしれませんが、本質的な汚れのアプローチにはならないことはご理解ください。
まとめ
汚れを正しく理解することで、掃除にかかる時間やコストは大きく改善できます。
日常生活では、618 Scallop powderとクエン酸があれば掃除は問題なく、〇〇用洗剤というのは必要なく、これにかかるコストやプラスチック削減も期待できます。
ナチュラルクリーニングは、汚れが取れにくいというイメージが変わりましたでしょうか?
ぜひ1度お試しください。