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遠い日の想い出/青春物語1

しんしんと雪が降るこんな夜はあなたを思い出す。
今、どこにいるのかな。
何をしているのかな。
きっとあの頃のあなたのままでいるでしょうね。

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その日は月末処理で残業をしていた。
膨大な請求書を導入されたばかりのパソコンに夢中で打ち込んでいた。

「まだ終わりそうもない?」
課長が煙草をふかしながら私に聞いた。

「はい。なかなか打つのに慣れなくって」
「請求書の締めまでにまだ日にちがあるから明日でいいよ。僕はもう帰るから」
「はい。私もキリのいいところで帰ります」

そう言ったものの、内心穏やかじゃなかった。
なんでパソコンなんて導入したのよ。台帳に記帳するほうが早いのに。
そんなことを思いつつキーボードを叩いていた。

ふと後ろを振り向くと受付の席に永尾さんが座っていた。
彼は1ヶ月前に新卒者として入社していて、5人いる新卒者の中ではいちばん気さくな人だった。

社内はワンフロアに7つの部署が分かれていた。
FAXを流しに行く時、彼の部署を通るのだが決まって声を掛けてくれた。
それは挨拶程度だったけれど。

残業時間は21時までと決まっていた。
「桜田さん、こんな遅くまでご苦労さま」
私の背後からそう言いながら彼が近づいて来た。

「いや永尾さんこそ、ご苦労さまです」
「みんなこんな時間まで頑張ってて。オレ営業で良かった」
「でも営業も大変でしょう。もう慣れました?」
「まぁまぁかな。でも好きで入った会社だから」
「そうですね。頑張って下さいね」
「桜田さんもね。じゃあ俺、社内の戸締りしてくるよ」

彼と面と向かって話したのは初めてだった。
少しドキドキしている私がそこにいた。

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