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【日本語】李琴峰作家デビュー5周年記念NFT小説「流光」プロジェクト

★★★本プロジェクトは終了しました★★★


2022年5月に、李琴峰は作家デビュー5周年を迎えます。
李琴峰の初の小説『独り舞』(原題「独舞」)が文芸誌で掲載されたのは2017年5月で、ちょうど5年間経ちます。
色々書いてきたつもりですが、振り返ってみると5年しか経っていないか、という気持ちもありますが、ともかく作家デビュー後に迎えた初めての節目に、記念として「NFT小説プロジェクト」をやってみることにしました
なお、本プロジェクトの一次販売による純利益の10%に相当する金額は寄付に回します。
 
■販売期間:日本時間5/20(金)21時~
■販売URL:https://opensea.io/collection/nft-novel-ryukou

【NFT小説とは?】

まず、NFTとは、「非代替性トークン(non-fungible token)」の略で、ブロックチェーン技術を使ったデジタル世界の「一点もの」であり……
そういった説明は、「NFT」を検索するといくらでも出てきますが、とりあえず今回李琴峰がやろうとしている「NFT小説」については、「数量限定・特典つき・転売可能なプレミアム版電子書籍」みたいなイメージで考えてもらえればいいかなと思います。
今回は、まだ単行本になっていない李琴峰初期の短編小説「流光」を対象に、「日本語・繁体字中国語・簡体字中国語」の3言語のバージョンを用意し、様々な特典をつけ、NFT化した次第です。 

【小説「流光」紹介】

新宿・歌舞伎町に位置するSMバー「リヴァイアサン」。ここには様々な性別、世代、職業、性格の人たちが集まり、縄や鞭を嗜んでいる。台湾に生まれ、幼い頃から自らの被虐指向に気付き、現在は日本で会社員として働いている徐静(じょせい)もその中の一人。徐静には同性のパートナー・晴凪(せな)がいるが、二人の関係に次第にひびが入っていく――。
流れる光のように移ろいゆく人たちの生と性を描く、清新なSM小説。
李琴峰が『独り舞』(原題「独舞」)の次に発表した小説であり、最初期の作品に当たります。
単行本未収録。計10章。日本語版は本文3万字。

【プロジェクトの詳細】

今回は「流光」という小説を底本に、5種類のNFTを制作しました。この5種類はそれぞれ表紙が異なります。
それぞれの種類のNFTにつき、2点発行します。1点は「価格つり上げ式オークション(イングリッシュ・オークション形式、開始価格1イーサリアム)」とし、1点は「価格下降式オークション(ダッチ・オークション形式、開始価格4イーサリアム)」とします。
つまりプロジェクト全体で出品されるNFTは10点のみとなります。
 
5種類のNFTの具体的な内容は以下の通りです。日本語版が2種類、繁体字中国語版が2種類、簡体字中国語版が1種類となります。
 
①「流光」日本語版小説本文+限定版表紙+著者による手書き原稿3枚
②「流光」日本語版小説本文+限定版表紙+声優による日本語朗読(第1章~第3章、約49分。朗読:榎本温子)
③「流光」繁体字中国語版小説本文+限定版表紙+著者による手書き原稿3枚
④「流光」繁体字中国語版小説本文+限定版表紙+著者による中国語朗読(第4章~第7章、約33分。朗読:李琴峰)
⑤「流光」簡体字中国語版小説本文+限定版表紙+ナレーターによる中国語朗読(第8章~第10章、約26分。朗読:时光)
 
※NFT購入後、購入者宛てに保有者限定コンテンツ(「小説本体」と「特典」)ダウンロード用の期間限定(7日間)URLとパスワードが個別に送付されます。
※小説本体はpdfとepub形式、手書き原稿は画像ファイル、朗読は音声ファイルにてダウンロードしていただけます。
※手書き原稿については、①と③の一次購入者で希望する方に限り、郵送にて実物をお送りすることも可能です。
 
なお、本プロジェクトの一次販売による売上から制作コストを差し引いた純利益の10%相当の金額を寄付に回します。

【朗読サンプルの試聴】

【今回のNFTの特徴とコレクション価値】

  • 史上初の台湾籍芥川賞受賞者による初のNFT小説

  • 世界初、日本語&中国語同時発売のNFT小説

  • 李琴峰デビュー5周年記念数量限定NFT

  • 「流光」の中国語訳は世界初公開

  • NFT保有者限定の特典つき

【今後のNFT発行計画について】

今回はデビュー5周年という節目に、初の試みとしてNFT小説を制作してみました。
今後の発行計画については今のところ考えていませんが、もし今回の反応がよければ、今後も新刊発売や誕生日、デビュー10周年、20周年といった節目に、数量限定で記念NFTを発行するかもしれません。 

【注意事項】

  • 本NFTの一次購入者宛てに、李琴峰から「小説本体」と「特典」ダウンロード用の期間限定(7日間)URLとパスワードを個別に送付しますので、期間内にコンテンツをダウンロードしてください。期間が過ぎてからは、コンテンツのダウンロードはできません。また、いかなる事情であっても、URLとパスワードは再度発行しません。

  • 小説本体の奥付に、各NFTの「コントラクト・アドレス」と「トークンID」が記載されています(NFTごとに異なります)。奥付に記載されている「コントラクト・アドレス」と「トークンID」に一致するNFTを保有している方のみが、各NFTの適正な保有者となります。

  • 本NFTに付随するあらゆるデータとコンテンツ(小説本文と訳文、表紙、朗読の音声ファイルなど)の著作権その他知的財産権は、李琴峰および本プロジェクトの制作担当者に帰属します。本NFTの保有者は、保有者限定コンテンツをデジタルデータの形で保有し、鑑賞することができますが、本NFTを保有していたとしても、データとコンテンツにかかる知的財産権を有することを意味しません。

  • 購入者限定URLとパスワード、並びにそこからダウンロードされたコンテンツは個人での鑑賞・コレクション用途に限られます。個人で閲覧する範囲を超えた行為、商用利用、知的財産権を侵害するおそれがある行為(改変、公開、配布等を含むがこれに限られません)を行うことはできません。

  • 本NFTの保有者は、OpenSeaの利用規約に則り、OpenSea内で本NFTを転売することができますが、転売に際して、保有者限定コンテンツのデータ授受は転売当事者双方の間で行うものとし、本NFTの発行者である李琴峰は一切関与しません。

  • 本NFT小説の本文には一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理している歌詞が引用されています。転売に際し、データ授受の仕方によってはJASRACと利用許諾契約を結ぶ必要があること、あらかじめご了承ください。

  • OpenSea以外のマーケットプレイスでの転売は禁止とします。転売はOpenSea内にて行ってください。

  • 転売時には、転売金額から一定割合のロイヤリティが発生します。

  • 「流光」という小説に関しては、今後は紙形式や一般の電子書籍形式にて出版する可能性がありますが、NFTでの発行は今回限りとなります。 

【本プロジェクト発足にあたっての思い】

少し長くなりますが、今回のプロジェクト発足にあたっての李琴峰の思いを書かせていただきます。
 
今回、5周年記念としてNFT小説プロジェクトをやろうと思った理由は、大きく2つあります。「面白そうだから」、そして「新しい可能性を模索したいから」です。
作家が作品をNFTとして発行する例として、日本では小野美由紀さんや村上龍さんのプロジェクトが有名かと思います。台湾でも検索すればいくつかの事例(詩人など)が散見されます。
これらの新しい試みを見ていると面白さとともに新しい可能性を感じ、色々調べているうちに、自分もやってみたいという思いに至りました。
 
ご存知の通り、出版業界は今深刻な出版不況に見舞われています。本が売れない、とりわけ文学作品が売れないのは、日本でも台湾でも同じです。
そのため、文学作家が創作だけで食べていくハードルが年々高まっています。
例えば、定価1,600円の小説を1冊出版(初版3,000部)した場合、印税は480,000円(+消費税)になります(印税10%の場合)。
印税だけに頼れば、食べていくためには小説を年に10冊も出版する必要がありますが、そんな芸当ができる人はほとんどいないと思われます。
もちろん、文芸誌で発表すれば原稿料(1枚につき3,000円~くらい)が入るので、多くの作家はその原稿料で助かっていますが、それでも決して楽なことではありません。
 
また、作家が書いた作品について、そもそも編集者や出版社が首を縦に振らなければ雑誌に載ることもないし、本になることもありません。
出版社は営利事業を営んでいるわけだから出版する作品を選別するのは至極当然なことですが、それでもこの選別の段階において、作家の思いとは無関係に、「作品」が「商品」としての価値を有しているかどうかが判断され、世に出るかどうかが決まります。
新人作家のうちは特に厳しく、何作もボツを書いてしまうことはざらにあります。私も同じ道を辿ってきました。
 
私は幸運にも芥川賞をはじめ、いくつか賞を頂いたことにより、世間の認知度が少しばかり上がり、何とか作家業で生きられていますが、それでも自分が書いた作品が本当に読者に届いているのか、不安になる時があります。
これは恐らく作家の性(さが)で、そんな不安は全くないと断言できる作家の方が少ないのではないでしょうか。
だからこそ、私はこれまで「届ける」ための工夫を試みてきました。個人サイトを開設したり、SNSアカウントを運営したり、YouTubeをやったり、noteをやったり、Twitterのスペースをやったりしました。他の作家や、他分野の方とのコラボレーションの可能性も常に考えています。
そうした試みの一つとして、今回のNFTプロジェクトを立ち上げました。
 
NFTについて色々調べるうちに、この形式で作品を発表することに新しい可能性を感じるようになりました。
中間業者(出版社や流通など)を介さずに直接読者に届けられること。アイディアや工夫次第で作品に様々な付加価値をつけたり、他分野の方とのコラボレーションを実現したりできること。転売される度に著者にロイヤリティが入る設定にできること。そのどれもがとても魅力的です。
今回はプロの声優さんに作品を朗読(オーディオブックみたいな感じ)していただきましたが、もし反応がよければ、今後は漫画家やミュージシャンなど、様々な方とタイアップができるかもしれません。
 
もちろん、NFTそのものについて色々と批判的・否定的な意見があるのも承知しています。
中でもとりわけて気になるのは「NFTは単なる投機目的の取引になっている」というものです。
確かに、自分の作品が単なる投機資産として利用されているのなら、あまり気持ちのいいことではないかもしれません。
 
しかし、この問題についてもう少し掘り下げて考えると、作品を買う側がどういった目的で購入しているのかは、そもそも作る側がコントロールできる事柄じゃないのではないか、という結論に辿り着きました。
既存の紙の書籍だって、購入者は様々な目的で購入しているのではないでしょうか。
純粋に作品を楽しむため、書評を書くため、資料や教材、研究対象にするため、誰かにプレゼントするため、けなすため、などなど。
中には値上がりを期待してサイン本や初版本を購入する人ももちろんいます。たくさんいます。最初から転売目的で購入している人も当然います。
(しかも紙の本の場合、作品が転売されても著者には一銭も入りません。メルカリで自分の名前を検索する度に軽い絶望を覚えます。NFTの場合、転売される度に著者にロイヤリティが入る仕組みにできます)。
 
買う側の購入目的など、著者は知ることができないし、ましてやコントロールすることもできません。
しかしどんな目的であっても、誰かが作品を買うことで著者に収入が入り、それが次の作品に繋がれば、意味のあることだと思っています。
それは紙の本についても、NFTについても同じです。著者にできることは、しっかりと良いものを作る、その一点に尽きると思います。
 
もちろん、今回のNFTの価格は気軽に手が出せるようなものではないかもしれません。
しかし、だからこそ、作品に付加価値をつけるために、ここでしか手に入らない特典をたくさん用意しました。
小説の執筆と翻訳に費やされた時間と労力はもちろんのこと、表紙の装画、デザイン、編集、そして声優さんによる朗読、スタジオとエンジニアの手配まで、全てしっかりコストをかけて作っています。
それだけ価値がある、と胸を張って言えます。
 
今回のNFT小説プロジェクトはどうなるか、全く売れないのか、それとも思いのほか大反響なのか、現時点ではまだまだ未知数です。しかし、やりたいことをやってみた、実現してみた、そのこと自体に意味があると考えています。
 
何とぞ応援のほど、宜しくお願い致します。 

【本プロジェクトに関わった人たち】

■李琴峰(り・ことみ)
1989年、台湾生まれ。作家・翻訳者。2013年来日。早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。2017年「独舞」(後に『独り舞』に改題)で群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。2021年『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『彼岸花が咲く島』で芥川龍之介賞を受賞。他の著書に『星月夜』『生を祝う』など。(写真:稲垣純也)

■榎本温子(えのもと・あつこ)
1979年生まれ。声優・ナレーター。1998年2月、高校3年生で文化放送デビュー。同十月、エヴァンゲリオンの庵野秀明監督作品「彼氏彼女の事情」主役・宮沢雪野役でアニメデビュー、以降活動の場を広げる。主な出演作品に、「ヒカルの碁」「ふたりはプリキュアSplash☆Star」「LINE」など。AbemaTV 報道番組「Abema Prime」レギュラーナレーションも務める。趣味は映画鑑賞、茶道、オンラインゲーム、kpop、サバイバルゲームなど。 

■时光
中国出身のナレーター。プロフィールは非公表。
 
■松川朋奈(まつかわ・ともな)
1987年愛知県生まれ。2011年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。近年の展示に「Small is Beautiful XXXIX」(2021年、Flowers Gallery、ロンドン)、「上田薫とリアルな絵画」(2021年、茨城県立近代美術館)、「MAMコレクション011:横溝 静+松川朋奈―私たちが生きる、それぞれの時間」(2019年、森美術館、東京)、「六本木クロッシング 2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京)、「Artist Meets 倉敷vol.12 松川朋奈」(2016年、大原美術館、岡山)など。Asian Art Award ファイナリスト(2017年)、福沢一郎記念賞(2011年)、ホルベインスカラシップ(2010年)を受賞。作品は大原美術館、森美術館、高橋コレクション、ピゴッチコレクションなどに収蔵されている。

■下重ななみ(しもじゅう・ななみ)
1995年生まれ。日本画家。女子美術大学芸術学部美術学科日本画専攻卒業。日本画材を使用し、女子美術大学在学中より作品発表を開始。同性の視点から現代の女性像を中心に制作している。第39回三菱商事アート・ゲート・プログラム 入選等。
 
■ニシノフミナ
1991年生まれ。デザイナー。出版系の制作会社で漫画/文芸関連の販促物や装丁、ロゴ、イラストなどを担当したのち、現在はWEBデザイン会社に勤めながら個人で漫画/音楽関連のデザインを手掛けている。主な実績に『蒸気波要点ガイド』『黒髪巫女とマリアウィッチ総集編』など。
 
■添田洋平(そえだ・ようへい、株式会社つばめプロダクション)
フリーの編集者として、文芸やコミックなどの分野で活動。作家やアーティストのマネージメントなども務める。

書くためには生きる必要があり、生きるためにはお金が必要になってきます。投げ銭・サポートは、書物とともに大切な創作の源泉になります。