Vol.21 Led Zeppelin
ロックの歴史として
70年代ロック(というよりもロックの歴史)を語る上で重要な意味をもつイギリスのバンドです。
68年のファーストアルバム以降3億枚のレコードを売り上げたと言われ、世界中のロックファンにとってのカリスマとなっています。
80年にドラマーのジョン・ボーナムが死去、黄金期の活動はここで終わっていますが、その後現在に至るまでなんらかの形で活動は続いていますし、彼らの音楽がその後に与えた影響は計り知れないものがあります。
60年代にビートルズによってロックバンドの基本的手法(作品制作としても商業性としても)が確立され、それを更に発展させたのがツェッペリンであるといえるとぼくは思います。
ハードロックというスタイルを作り上げ、その後のヘヴィメタルはもちろんパンク、オルタナティブなどあらゆるジャンルのミュージシャンに多様な形で影響を与えています。
よく知られている曲はいわゆるハードロックのスタイルですが、実際のところ多くの作品がブルース的進行やブリティッシュ・トラッド、ケルト音楽などをベースとしたもので、あまり「キャッチー」とは言い難いものが多くあります。
ヘヴィでドライブ感のある代表曲の多くもまさに彼らならではのものですが(ぼくは大好きです)、彼らの本来のスタイルは楽器演奏への新しいアプローチへの挑戦とそれをバンドによるインプロビゼーション(アドリブ)のプレイでひき起こすマジックの追求でした。
これはどちらかというとモダンジャズ的な志向であり、従来のポップミュージックとは一線を画するものです。
曲を「歌」として成り立たせるよりも「演奏力」や「サウンド」を重視するスタイルであって、その後のロックはこの方向性を基本にそれぞれが多様化していっているといってもよいとぼくは思います。
このスタイルを高いレベルで成し遂げたことこそがツェッペリンがあらゆるジャンルのミュージシャンに影響与えることになった理由だと思います。
メンバーのカリスマ性
このバンドの花形とも言えるのはギタリストのジミー・ペイジです。
ボーカリストではなくギタリストがバンドのメインになるというスタイルも彼らが確立した方法のひとつで、これもやはり演奏力重視のバンドならではのものです。
ロックギター界では彼はトップカリスマの一人であり、テクニック、サウンドメイキング、アレンジ、ビジュアルのあり方など多くのスタンダードを作り上げています。
一例を紹介すると、彼が愛用していたギブソン製レスポール・スタンダードのサンバーストモデル(オリジナル版)はいまや世界一高いギターとして知られています。
エレキギターの歴史のなかで重要な意味を持つギターであり、そのサウンドと希少性(1958年から60年に約1400本のみ生産)ももちろん大きな要素ですが、やはり「ジミー・ペイジのギター」という存在感がその人気を支えています。
日本のミュージシャンでは奥田民生が所有していますが、彼によると「買ったとき(ユニコーン時代)はクルマが買えるほどの値段だったが、今は家が買える値段になった」のだそうです。
ぼくの個人的かつ局地的見解では、ツェッペリンのサウンドはドラマーのジョン・ボーナム(愛称:ボンゾ)がすべてだと思っています。
そのテクニックとサウンド、ロックの楽曲におけるドラムのあり方、ロックバンドのプレイヤーのあり方などなど、未だに誰もその領域にたどり着いていないと思います。その音を聴くたびにこころが震えます。イギリス的にいうと"Lovely"です。
最近YouTubeで北海道の小学生「よよか」ちゃんという女の子のドラマーが話題になっていますが、何年か前に彼女がカバーした「Good Times Bad Times」はボンゾが乗り移ったとしか思えません。テクニックもスゴイですがスピリッツがボンゾです。世界中のボンゾファンがひっくり返りました。
おすすめです。