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Vol.23 T. REX
グラムロックを生んだ恐竜
70年代前半に「グラムロック」というムーブメントがイギリスで起こります。初期デビッド・ボウイと並ぶグラムロックの代表格がこのT.REXです。
漫画「20世紀少年」がこのバンドのヒット曲のひとつ「20th Century Boy」にちなんだことで名前を知っている方も多いかもしれません。
バンド形式ではあるものの実態はリーダーであるマークボラン(Gt、Vo)のソロプロジェクトのようなもので、彼がこのバンドのそしてグラムロックそのもののアイコンであると言い切ってしまってよいと思います。
グラムロックは次世代に与えた影響の大きさからいまでも語り継がれていますが、実は70年代中期にはブームは終わってしまう短命なムーブメントでした。それに合わせるかのようにマークボランも77年に29歳の若さで交通事故死しています。
何かを壊すべくして
グラムロックは基本的にはハードロック系のラウドなサウンドでありながら曲調はキャッチーで、しかもビジュアル面(派手なメイクや衣装)がその重要な構成要素のひとつであることを特徴としています。
当時の他のハードロックバンドのような音楽的追求(セッション性やテクニック競争など)よりも総合的なコンセプトのほうが重視されていて、ひとつの音楽ジャンルというよりカルチャーのスタイルのように感じられました。
今思えばそのコンセプトは非常に70年代的なもので、変化する時代が求める破壊志向(アンチテーゼ)がそもそもの原動力だっとのではないかとぼくは思っています。
60年代末に始まったヒッピーカルチャーのナチュラル志向に対する徹底的した人工志向、中性的なビジュアルによるアンチマッチョ主義、演奏にテクニック追求をしないスタンスなどなど。
かなり「キワモノ」なアプローチとも言えますが、これが当時の若者に幅広く受け入れられたのはやはりそれが「求められていた」からだと思います。そしてこのコンセプトは次の世代にも引き継がれ進化をしていきます。
基本的にはイギリスのローカルムーブメントでしたがアメリカンロックにも影響を与えています。アリス・クーパー、ニューヨーク・ドールズ、ルー・リード、そしてラモーンズの誕生に与えた影響も小さくなく、そしてこれが80年代のUKパンク誕生へのひとつの道しるべにもなっています。
日本では純粋なグラムロックというスタイルはあまり定着しなかったように思います。メイクや派手なスタイルはいろいろな音楽ジャンルで取り入れらましたが。
ただ90年代に「マルコシアス・バンプ」というバンドが驚くべき完成度でT.REXを再現していました。全くのコピーではなく彼らなりの解釈もあり(結構テクニカルだったり)、これもまたグラムロックらしいといえます。ギターボーカルの秋間経夫氏はマーク・ボランに生き写しで、その日本人離れしたカッコよさにはほれぼれしたものです。
彼は楽器マニアが高じていまはギターアンプのビルダーとしてその世界ではよく知られた人物になっています。
今年還暦を迎えたそうです。
Keep on ロケンロー。