南の島も笑ってる 第9回
苦難の縦断ハイクが始まりました。
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「林道終点まで約10キロ」
「健脚の方でも約8時間かかります」
「ハブが生息しているので足元に注意」
登山口で心を折られるような看板を見て我々はいよいよ山に分け入った。しばらくは滝に行く観光客用に整備された道を歩いていく。
この先には昨日訪れたヒナイサーラの滝と並ぶ西表島の名瀑「マリウドの滝」と「カンピレーの滝」があるのだ。遊覧船の乗客の目当てはここである。本当ならゆっくり立ち寄りたいところであるが、先を急ぐ我々にはその余裕はない。
マリウド・カンピレーの滝はヒナイサーラの滝のように落差はなかった。幅広い滝が何段かに渡って落ちているという形であったが、水量が豊かでこれはこれでなかなか迫力がある。周辺で泳げるようであったが、見るだけ見て撮るだけ撮って、そそくさと後にする。
カンピレーの滝を右手に見ながら川沿いに歩いていく。遊歩道はいつしか消えていた。大きな岩をよじ登ったり飛び降りたりしながら上流に向かって進んでいくと、次第に川の本流からも離れていく。いよいよ縦断ハイクの本番である。ここからはわずかに人の歩いたような踏み跡のある道と木に巻かれた赤いテープを頼りに進まなければならない。
道は基本的に川から枝分かれした沢に沿っており、地形に合わせうねうねと絡み合うように曲がっていた。登山のように高低差はあまりないのだが足場がとにかく悪い。踏みしめると足がぐじゅっと沈んでいく。それに加え滑りやすい崖、膝上まである藪が絶え間なく襲ってくる。暑さ対策で半ズボンを履いていたのだが(本当はダメ)、藪漕ぎのおかげで足はたちまち傷だらけになった。
ルートもわかりにくかった。赤いテープを頼りに進むのだが、これがなかなかわかりにくい。気を抜いていると簡単に見落としてしまいそうだ。足場が悪いので上ばかり見ているわけにもいかないのである。2人で間違っていないか1つ1つ確認をしながら進んでいく。やっていることはほとんどオリエンテーリングであり、1人では入山できない理由がよくわかった。
それにも増してつらかったのが、覚悟はしていたがやはり暑さであった。
森の中はあまり日が差さず風通しも悪い。なので暑さプラス湿気が襲いかかってくる。不快指数200%だ。空気がどうしようもなく重いのを感じる。それが体にのしかかってくるようで体力が奪われていくのを感じた。
着ている物は全てが汗でぐっしょり。まるで水をかぶったようになった。そんな状況だから、時たま現れる光が差し込んだ乾いた場所にたどり着くと何ともほっとしたものである。
後で聞いたのであるが、このコースを一日で踏破するのはかなり厳しいことらしく、大概の人は山中で一泊するか下山前に日が暮れてしまうそうである。
そんな道を我々は一心不乱に突き進んでいった。
(続く)