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B青年のGo遊旅行(1)

連載小説始めます!
卒業を間近に控えた大学生が一念発起して1人で海外旅行に行くというお話です。
あくまでフィクションです(笑)。

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1994年2月25日。
俺は明日から卒業旅行に出発する。行先はオーストラリアである

ひょんなことから暮らすことになったここ京都での学生生活ももうすぐ終わりを迎えようとしている。
4月からは東京で新しい生活だ。
学生にとって学生の自分にけじめをつけるための卒業旅行。
多くの友人から誘いを受けたが、僕は1人旅を選択した。
そう、これは4年間の総決算であり、これから社会という荒波に漕ぎ出す自分を試す旅、そして新しい自分を探す旅なのだ。。。

などと柄にもなくぐふふと感傷に浸っていたが、とにもかくにも明日から旅である。
オーストラリアは今は夏、楽しみ楽しみ。準備はOK、パスポートも確かにあるな。
さてそろそろ寝るかと、思った瞬間1本の電話が。
サークルの後輩からだった。

「鈴木さん、麻雀やりませんか?メンバー足りないんです。」
「・・・あのさ、俺明日から卒業旅行って知っているよね?」
「寝ないで空港行けばええやないですか。時差ボケも解消ですよ。」
「オーストラリアに時差はないよ(注:正確には1時間)。」
「じゃ、今から行きますんで。」
「!」

結果は記録的な負け。
旅行資金を取られ感傷どころではない。後輩3人の暖かい励ましを背に、俺は壮大なる旅の第一歩を踏み出したのである。

京都四条から十三、十三から蛍池と阪急電車を乗り継いで大阪・伊丹空港に着いたのは朝の8時頃である。
寝不足のぼんやりした頭で全ての手続きを終えた。
伊丹空港は何だかみすぼらしかった。羽田や成田空港よりずっと寂しく、これから未知の大陸に踏み出すといった雰囲気は感じられない。
成田空港のように「ユナイテッド航空 803便 シアトル行きのお客様は~」といった、旅の雰囲気を大いに盛り上げるようなアナウンスもあまりなかった。よく見るとここは国際空港とはいってもメインはアジア向け路線ばかりの
非常にこぢんまりとした空港なのである。出国手続きもずいぶん簡単なように思えた。

無事飛行機に乗り込んだ。あとは飛び立つのを待つばかりである。
しかし、旅はまだまだ始まらない。
意気揚々と日本を脱出しようとしたその矢先、その事件は発生した。

財布がない

まだ出発には間があったので、俺は慌ててスチュワーデスに訳を話しゲートまで戻った。もちろんロビーまでは戻れないので空港の係員にも話をして立ち寄った売店なども探してもらったが、結局見つからない。
中身は日本円が少々、旅行資金は別に除けておいたので文無しにはならなかったのがせめてもの救いである。
読み漁った旅行記で、海外で盗難にあい苦労した話はよく聞いていたが、日本を出る前に盗難にあったいう話は初めて聞いた(というか恥ずかしくて普通は書かないけど)。
寝不足で頭がぼんやり、完全に油断していた。これは無理やりマージャンに誘った後輩の責任である。

まあ、これが海外だったらおそらく出てこないがここは日本。帰国時に見つかっていることを祈ろう。
そんなのんきなことを考えながら、ようやく俺は日本を出発した。行先は中継地である香港である。

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