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南の島も笑ってる 第14回

今から話すことは全て実話です。
皆様を恐怖の世界にご案内します。。。

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よほどテント暮らしが辛かったらしい。
エガさんからもう勘弁してくれというリクエストもあり、沖縄本島ではキャンプとせず宿に泊まることにした。
那覇についてから早速宿探しを始めたのだが、ハイシーズンのためかどこも満室で、手ごろな値段で泊まれそうな場所がなかなか見つからない。
観光案内所とあれこれ交渉したところ、市街から少し離れますがということで紹介されたのが一泊3000円のホテルであった。
えっ?一泊3000円?ユースホステルより安い値段じゃん。
旅も終盤であり旅費も底をつきつつあった。安く泊まれるのはありがたいがそれにしても安すぎる。余りの安さにうれしいというよりは一抹の不安が頭をよぎった。

那覇市街からバスに乗り国道沿いに少し北上したところにそのホテルはあった。道を挟んで目の前には米軍基地が広がっている。
期待にたがわず外観は古さを隠しきれなかった。デザインは築20年くらいの公営団地に似た温かみのない雰囲気。強い日光と海風にさらされてきた、つぶれた海辺のホテルのような佇まいであった。
3000円だ、仕方ないさと気を取り直して中に入る。
中も相当怪しげだった。
フロントにいた女性は優しそうな人であったが、奥の喫茶店には平日の昼間だというのに怪しげなおっちゃんたちがたむろしていた。

ガタガタと揺れるエレベータを降りると、廊下の両脇にはリネン類が山積みされていた。我々以外に宿泊者はいないようであった。
まるで倉庫のような廊下を歩き部屋に入る。真っ赤な絨毯がかえってわびしさを醸し出していた。
そして部屋の中も我々の期待(不安)を裏切らなかった。
部屋はベッドが2つ備え付けられていた。TV、エアコン、バスルームと一応一通りはそろっていたのだが、よく見るとベッドは高さが違っている。
何気なくその下を覗いてみると、そこにはしっかりとゴキブリホイホイが据え付けられていた。もちろん中身入りである。
エアコンは昭和の団地でよく見た、窓を半開きにして据え付けるタイプで相当の年代物だった。
バスルームの壁は打ちっぱなしのコンクリートで、当然のことながらカビだらけ。そこにはこれ本当に洗ったの?と疑ってしまうような薄汚れたタオルがかかっていた。
こんな廃墟のような部屋であったがエガさんはご機嫌であった。思ったよりええやないかと信じられないようなことをのたまわっていた。

日も沈んできたのでそろそろ夕飯でも食べに行くか、公設市場で美味しいもの食べましょうとホテルを出ることにした。
とにかく怪しい部屋なので戸締りをきちんとしようと思ったのだが、窓の鍵がうまくかからない。
閉まらないのは窓だけではなかった。
部屋を出てきちんと鍵をかけた、はずだったのだが、ドアノブを回すと扉は簡単に開いた。
我々は貴重品をすべて持って外出することにした。

夜戻り、侘しいバスルームでシャワーを浴びた。
既にホイホイ以外で何匹かのゴキブリを発見しており、口の中に入りませんようにと祈りながらベッドに入る。
こういう時はさっさと眠るに限るのだが、、、うるさい。どうにも寝付けない。外の国道では暴走族が爆音を轟かせており、その音が良く閉まらない窓から飛び込んでくる。周囲には飲み屋も多いのか、酔った客やホステス達が騒ぐ声も聞こえていた。
そんな状況なのに、エガさんは横ですうすうと寝息を立てながら寝ていた。俺はこの時ほどこの人を大物だと思ったことはなかった。

それでも夜も更けていくと、暴走族も警察に追い立てられ、ホステスもお目当ての客とどこかへ行ってしまったようで、ようやく辺りに静寂が訪れた。
やれやれやっと寝られるわいとほっとしたのもつかの間、それまでおとなしく動いていたエアコンが突然ブーンとうなり声をあげだしたのである。
再起動しても音は止まらない。
沖縄の夜でエアコンなしで眠れるわけがない。俺の安眠はまたもお預けである。

ここまででも十分すべらない話だと思うのだが、まだオチてはいなかった。
結局ほとんど眠れなかった俺であるが、もう白々と夜も明けようかという頃になるとさすがに連日の疲れもありウトウトとしていた。
すると「ガチャ、ガチャ」という扉を開けようとする音が。前述の通りこの部屋の鍵は壊れているので、簡単に扉が開く。
1人の男らしき人物が入ってきた。
暗くて顔はよく見えない、というか恐怖で目を開けることができない。
男が近づいてきた。
あ、もうだめだ、やられた。黒人の兵士だったら勝てないな。どうしよう。
必死で寝たふりをしながらそんなことを考えていると、男は部屋を間違えたという仕草を見せ、部屋を出ていったのであった。

朝がやってきた。待ち遠しい朝であった。
俺はエガさんに別のホテルに変えてもらうよう懇願した。
あれだけ色々なことがあったのにエガさんは全く覚えておらず、「俺は今夜もここでええで」みたいなことを言っていた。
今思うとあそこは基地の軍人を相手にした、いわゆるそういう宿だったような気がする。そうとしか思えないほどあらゆるものが怪しさに満ち溢れていた。
真夏の夜の恐怖体験であった。

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この話には後日談があります。
この恐怖体験から10年後ぐらいでしょうか、僕は家族で沖縄旅行に行きました。
北部のリゾートホテルに泊まるため、空港でレンタカーを借り国道を北上。
その時にふとこのことを思い出し、運転をしながら何気なく探したところあったんです!
そのホテルは10年前と変わらない姿で佇んでおりました。。。


(続く)

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