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B青年のGo遊旅行(11)
いよいよケアンズ最後の夜です。
今では全く見かけなくなりましたが、この時代はまだアルコールの自動販売機があったのです。
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しばらく歩くと川に出た。熱帯特有の濁った川である。ここからは船に乗って川を下るようである。
木の桟橋につながれていた船は、乗り込むと低いエンジン音を上げながら出発した。
川岸に立っている看板には「ワニに注意」と書かれていた。川にワニがいる!
しばらく進んでいくと、たくさんの黒い実がなっている木を何本も見つけたが、よく見るとそれは実ではなく木にぶら下がっているコウモリであった。
コウモリが木に何百匹もとまっているのであった。
船を降り、再び我々はジャングルの中を歩きだした。
湿った空気が重いマングローブ、透き通った水が流れている渓流、奇妙な形の木が生い茂る林、動物の姿は見えなかったが時々変な鳴き声が聞こえてくる。
言葉がわからずとも目に見えるものは圧倒的な説得力を持って俺に迫ってきた。
ガイド氏の説明は相変わらずわからなかったが、1つだけわかったのは、このジャングルも開発による自然破壊が進んでいるということ。
オーストラリアのような環境問題に対して意識の高そうな国でもそういった問題を抱えているのだなと妙に感じ入ってしまった。
様々なものを見ることができたジャングルツアーであった。
これはこれで大変ためになったのだが、正直言ってこの日は連日の暑さとツアー責めでかなりバテ気味であった。移動中のバスの中ではほとんど寝ていたかもしれない。
カメラを見てくれた隣の席のオーストラリア人にも、ずいぶんよく寝るねみたいなことを言われてしまった。
明日は移動日だから涼しい飛行機の中でゆっくり寝られる。ここで体力回復できるであろう。旅はまだまだ前半戦である。
ともあれこのちょっと変わったツアーも楽しく有意義に過ごすことができたのである。
この日は明日のことを考えて、宿を街中に変えることにした。ヤマグチといるのも明日の朝までである。
ツアーバスがバスターミナルに到着した。降りて待ち合わせ場所に向かおうとしたところ、「トモちゃん♪」とやけに弾んだ声が。見るとヤマグチが得意気な顔で女の子を連れていた。
我が目を疑うというのはまさにこのことであった。ヤマグチはこと女性に関しては超が3つつくくらいの奥手である。いつも威勢のいいことは言うが、結果を出したためしがない。
聞けば向こうから声をかけてきたらしい。まさかあいつが、女の子に何か一時の気の迷いでもあったのではないか、圧倒的な疑問を残しつつ3人で食事に行くこととなった。
女の子は年上の人だった。カスミさんという方で大阪で働いているそうだ。
関西人らしくはきはきと話す方で、そういえば学校の先輩にこんな人がいるなと思ったりした。
カスミさんは一人旅でオーストラリアを回っている。聞けばちょっと淋しくなったため目についた日本人(ヤマグチ)に声をかけたとのこと。要するに誰でもよかったんだ、まあそんなもんだろうと思った。
カスミさんの話は面白く、その日の夕食は大いに盛り上がった。それにしても女性一人の海外旅行とは大したものである。また面白い人に出会ったなと思った。
ヤマグチにとっても2晩連続で女性と食事をするというのは前代未聞であり、彼にとっても一生の思い出になったであろう。
ちなみにヤマグチは帰国後も「今でもカスミさんと連絡取り合っているんだよ」とか「今度大阪へ行こうかなあ」などとさんざん言っていたが、もちろんそんなことなどしていないことは言うまでもない。
ビールを2本ほど買って宿に戻った。
宿は前の所よりは安いが、エアコンが部屋についていない。とにかく暑いので冷たいビールでも飲んでさっさと寝るしかない。
こちらのビールは「XXXX(フォーエックス)」「VB」「TOOHEY'S」「FOSTERS」「ICE」などいった物が有名でお店でよく売られていた。全て店売りで自動販売機はない。
味は日本のビールと特に違う所はないと感じた。
薄暗い部屋でビールを飲みベッドに横になる。疲れているのですぐに寝てしまう。
明日はついにケアンズを離れ、ブリスベンに移動する。