B青年のGo遊旅行(7)
海辺の町に来て、いよいよ海に乗り出します。
オーストラリアと言えばグレートバリアリーフですが、果たして。。。
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今日は今回の旅行の目的の1つでもある、グレートバリアリーフへのクルージングツアーに参加する。
青いサンゴ礁、色とりどりの魚、その中をシュノーケルとフィンを付け、あははうふふと笑いながらゆうゆうと泳ぎ回る。
よだれの出そうなシチュエーションである。
予備校に通っていた浪人時代、「彼女が水着に着替えたら」という映画が上映されていた。
原田知世演じるヒロインがスキューバの免許を取り、海で出会った織田裕二演じるガイドと恋に落ちるという内容である。
映画も華やかで面白かったし、この時2人が潜った海は素敵だった。いつかこんなことをしてみたいと思っていた。
(まるで浪人時代に映画ばかり観ているようですが、これは東京の予備校に通っていたからで。。。ちゃんと大学には合格しております!)
今回サンゴ礁の海に潜るという夢はかないそうだが、残念ながら同行者は原田知世ではなくヤマグチである。そこが唯一にして最大の不満ではある。
ケアンズという町はグレートバリアリーフの玄関口と言われている。
故にハワイのようにいきなりどんとサンゴ礁が広がっているというイメージを持っていたが、そうではなかった。
街の海岸は熱帯雨林から流れ出ている泥を含んだ川の水でかなり濁っている。実際泳げるとかそういうレベルではない。
サンゴ礁を見るには船でいくらか沖へ出なければならないのである。
そのため沖へ出るためのたくさんのツアーが出ているのだが、その中で我々が選んだのはクルーザーでグリーン島という島に行くというツアーであった。
周辺の海でシュノーケリングができるとのことである。スキューバの免許は持っていないがせっかくだから潜りたい。我々にとってうってつけのツアーであった。
もっともこのツアー、数あるツアーの中でも最も安くこれが最大の決め手となった。
ヤマグチが探してきた。俺が探してきたんだぞといばっていたが、そのために後々彼は地獄を見ることとなる。
朝、小雨のぱらつく中ヤマグチと俺は集合場所である桟橋へ向かった。
はっきり言って天気は良くない。海も見る限り荒れ模様である。
桟橋にはすでに船が停まっていた。名前はオーシャンズ・フリー号。クルーザーと聞いていたが、それよりは小ぶりなヨットと言った方がぴったりくる大きさである。
やや荒めの波に押され、ゆらゆらと揺れている船は何だか頼りなさげに見えた。
ツアー客は自分らを含め10人くらい。昨日とはうって変わって全員が外国人であった。
船長の名前はピーターと言った。ロバート・レッドフォードに似ているナイスガイである。それ以外にクルーが2人。
クルー3名に乗客10名、総勢13名を乗せたオーシャンズ・フリー号は一路グリーン島へ向けて出発したのである。
意気揚々と船は出発したのだが、やはり沖も荒れ模様であった。
オーシャンズ・フリー号は波の間を木の葉のように揉まれながら進んでいく。とにかくその揺れっぷりが半端ない。波の山の上に上がったかと思うと谷底に沈んでいく。この繰り返しである。
最初はあれだけ元気だったツアー客たちもバタバタと船酔いにやられだした。
哀れヤマグチもその1人になってしまった。彼はこういう船に乗るのが初めてだったらしく、船が出てすぐその顔色はみるみる青くなっていった。
海へ向かってゲーゲーと吐き、そのうちに吐くものもなくなったのか、コアラのように柱にしがみついて物も言わなくなった。
かくいう俺はというと、これがなぜか何ともならなかったのである。甲板に腰掛け、大きな揺れや波しぶきにはしゃぎ、1人で歌を歌っていた。
過去に同じような船に乗り、文字通り死ぬ思いをした経験があったが、その時に免疫でもできていたのであろうか。
次第に天気が良くなってきた。というより天気の悪い通気を抜け出したといった方が適切であろう。
波は次第に収まっていき、海の色も灰色から緑、コバルトブルーへと変化していった。
そして目の前には いつしか南の楽園が広がっていたのである。
(続く)