見出し画像

B青年のGo遊旅行(3)

早朝飛行機はケアンズに到着した。
快晴。一歩外に出るとそこには別世界が広がっていた。強烈な日差しと熱風。まさしく熱帯のそれである。
暑い!何しろ一昨日は真冬の日本にいた身である。感動も暑さで変形してしまった。

朝食をとった俺はバスで市街地に向かった。高校時代の友人と待ち合わせをしているためである。

彼は一足先にオーストラリアに入っている。本名は明かせないので、まあ、ヤマグチとでもしておこう。
ここケアンズではヤマグチと過ごすことになっているのだが、正直言って複雑な気持ちである。
この男、悪い奴ではないのだが、なぜか勝手に俺をライバル視し何かにつけて張り合ってくる。何というか面倒くさい奴である。
そもそも今回の卒業旅行もそうだ。
たまたま東京で会った時に卒業旅行の話をしたところ、行先どころか日程まで合わせてきた。
こっちは別に海外まで一緒にいたくないし、1人でいいと思っていたのだが、ケアンズを一緒に回ろうと言う。
おそらくこれまでの自慢話をたっぷりと聞かせられるのであろう。

バスで隣に座ったのは日本人であった。
ヤスカワ君という大学生である。聞けば俺と同い年、そして偶然にも同じ大学ということで仲良くなり、色々と話をすることができた。
彼も1人旅である。すでにシドニー、メルボルン、アデレード、アリススプリングスと回ってここケアンズにたどり着いたとのこと。
いわば旅の先達である。ばっちり日焼けもしていて何だかカッコいい。
彼ほどダイナミックな旅程ではないものの、これから1人旅をするわが身にとって彼の話は大いに役に立つこととなった。

バスは市街地のバスターミナルに到着した。待ち合わせの時間には早かったので、ヤスカワ君とブラブラと街中を歩くことにした。
それほど大きい街ではなかったが、高校時代に行ったアメリカの街に雰囲気が似ている。そのせいか当時の感覚がよみがえってきたような気がした。
思えばアメリカ旅行は楽しかった。これを話し出すと本一冊ぐらいの長さになってしまうのでここでは触れないが、一生大切にできる思い出ができた。
そして俺はこのオーストラリアでも一生の思い出になるような体験をするのだと考えていた。
バスターミナルに戻ると、いつものドヤ顔でヤマグチが待っていた。「どこ行っていたんだよ、遅せえよ。」ふてくされたように彼は言った。
ヤスカワ君と大学での再会を誓い別れた。ここからはヤマグチと行動である。

まず宿を押さえようと俺はヤマグチに言った。すると「もう宿は取ったぞ、感謝しろよ。モーテルだ。」と言う。「モーテル」を強調してきた。
おいおい何を勝手に、と思ったが、旅のしょっぱなからケンカしてもと思い直し黙ってついていくことにした。
ところがこの宿、一泊$30という宿代(1$=¥80くらい)はまあいいとしても(本当のところ、俺らのような学生の泊まる宿としては結構高いのだが)、場所がやたらと市街地から遠いのである。
おかげでただでさえ暑い中、重い荷物を背負ってたっぷり30分歩く羽目になった。大体車もないのに何でモーテルなんだよ。
辺りはどんどん寂しくなってくる。旅の醍醐味の1つは現地での人々との出会いであるが、あまりそれも期待できないような雰囲気になってきた。
明日は絶対宿を変えるぞとふらふらしながら思った。

いいなと思ったら応援しよう!