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B青年のGo遊旅行(20)

意気揚々どころか、何だかコソコソとオーストラリアを去ることになってしまった。
いよいよ明日の夜には日本に戻っていることになるが、まずは経由地である香港に飛行機は向かっている。
ここで一泊し、明日は午前中一杯市内観光、昼頃に香港を離れる予定となっている。
隣に座っていたのはウスイさんという女の人だった。俺より2つ年上の24歳、1年間オーストラリアに語学留学しており、その帰りだそうである。
留学生活にまつわる様々な興味深い話を聞くことができた。

語学留学、最近この言葉をよく聞く。在学中、そして大学を卒業してから海外で英語を学ぶ人が増えているということだ。
語学をばっちり身に着けて、将来は世界中を飛び回ってバリバリ働く。
そんなイメージが膨らむが、現実はちょっと違うらしい。
ウスイさんの学校にも多くの日本人が学びに来ていたが、実際のところろくに勉強もせず遊んでばかりの人たちも多かったとのこと。
そうなると結局日本人同士でつるんでしまい、せっかく絶好の環境なのに語学力も身に付かず、なんの成果も上げられずに日本に戻っていくそうである。
これでは本当に「Youは何しに外国へ?」だ。
語学留学が成功するかどうかはしっかりとした目的意識を持っているか、ただそれに尽きるとのことである。

「語学留学」という言葉には、語学が身につくだけでなく、行けば新しい自分を発見することができる!そんな甘い響きがある。
でもよくよく考えてみたら、行くだけで何とかなりそうなんてずいぶん虫のいい話だ。それに本当に勉強したければ日本ででもやっているだろう。日本で勉強できないやつが海外でできるわけがない。
ウスイさんの話はそんな当たり前のことを気づかせてくれた。
こちらからは最近の日本の状況を教えてあげた。おかげで香港まで8時間、退屈せずに過ごすことができた。

香港に着いたときはすっかり日が暮れていた。行きに立ち寄った時よりも暑く、空気はねっとりとしていた。
何というか、油で揚げたような街である。
ウスイさんと別れ、俺はホテルを予約するため空港の予約センターに向かった。とにもかくにもまずは今夜のねぐらを探さなければならない。
受付のお姉さんはなぜか恐ろしく不愛想だった。フレンドリーな国から来たため余計にそう感じたのかもしれないが、それにしても不愛想すぎる。
中国ってこんなもんか。
単にホテルの紹介を受けているだけなのだが、笑顔の一つもなく、何だか尋問されている気分になってきた。
お姉さんが薦めてきたのは一泊$750(1HK$=15円)というホテルだった。正直高い。
この旅行では最高級の宿となってしまうが、これから夜の香港を歩き回って探すのは嫌だし、断ったらお姉さんの機嫌がさらに悪くなりそうだ。ここに泊まることにした。
受付を済ませると、お姉さんは少しだけ口角を上げて笑顔らしきものを見せてくれた。

部屋は1人で泊まるには広すぎるくらい広かった。広かったので、たまった洗濯物を一気に洗うことにした。
出るころまでに乾くかどうかはわからないが、明日の夜に家でやるよりはいいだろう。
明日の香港観光はおまけのようなものだが、アヤシの国に入ったので、気を引き締めていこうと思う。


(続く)

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