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B青年のGo遊旅行(15)

今日はこの旅のクライマックスと言ってもいいかもしれない日。
いよいよセーラとの対面です。

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快晴。
セーラとは10時に宿の前で待ち合わせをしていたのだが、外へ出ると既にセーラは親父さんと一緒に待っていた。
3ヶ月ぶりの再会であった。当たり前だが変わっていない。
いわゆるオーストラリア人というと大胆、元気、活発と言ったイメージがあるが、セーラはどちらかというとおとなしくて清楚な女の子である。
色に例えるとオーストラリアのナショナルカラーである黄色と緑というよりは水色といった雰囲気。
そんな女の子がよく日本くんだりまで来て長期間滞在できたなと思うが、むしろこういった気質だから日本に合ったのかもしれない。
今回俺がオーストラリアに行くと言った時、ホームステイを受けたお世話になった家の人たちは大層喜んで送り出してくれた。
なので帰国したら様子を逐一報告しなければならない。ちょっとした親善大使の気分である。

何をするかは基本お任せなのだが、まずはシドニー郊外のボンダイビーチという所に向かった。
車中では親父さん、セーラパパと色々な話をした。セーラパパは最初怖い人だと思っていたが、話をするうちにわりとしょうもないこと言いの気のいい人だということがわかってきた。
もっとも日本から得体のしれない男が愛娘に会いに来たというのであれば、身構えるのは当然かもしれない。
そんな親父さんが冗談を言うと、セーラは大体苦笑いをしていた。

ボンダイビーチは「Beautiful!」としか言いようのない景色であった。
青い空、青い海、白い砂浜。海に面した山は階段状に造成され、真っ白な壁の家が多く建っている。
しばしその景色に見とれた。ギリシアかどこか、南ヨーロッパの写真で同じような景色を見た覚えがある。
泳ぐための用意はしていなかったのでしばし歩き回ったのち、海岸でやっていたフリーマーケットに立ち寄ることにした。売っている物はガラクタばかりであったが、結構店も客も多く、見ているだけでも飽きない。
俺はお土産用にカラフルなローソクを何本か買った。セーラパパが俺にレターセットを買ってくれた。セーラはアクセサリーを見て回っていた。

その後ボンダイビーチを離れ、セーラの家へ行った。アメリカ映画に出てくるような、これまた綺麗としか言いようのない町に家はあった。周りに比べたら小振りな家ではあったが、それでも日本の家に比べたら立派すぎる大きさである。
京都に来て、そのごちゃっとした街並みを見たとき、セーラはさぞかし驚いだだろうと思った。
家に入るとセーラママが出迎えてくれた。感じのいい人だった。
そして4人でランチを食べた。
セーラには兄弟が2人、お兄さんとお姉さんがいるそうだが、今日はお兄さんはアルバイト、お姉さんは友達の所へ遊びに行っているそうである。
話している雰囲気からこの家族がとても仲の良い家族で、その中でもセーラがとりわけ大事にされているというのが伝わってきた。
セーラはサムという名前のネコを飼っていて俺にも抱かせてくれた。サムはよほどいい暮らしをしているのか、まだ1歳だというのにやけにでかくて重かった。全身真っ黒なのに首の所だけが白く、まるでツキノワグマのようだった。

ランチの後、4人でコアラパークに出かけることになった。途中、セーラパパがあの世間を騒がせた山火事の現場を見せてくれた。
この山火事はセーラは日本に来ているときに起きたので、セーラも俺たちもずいぶん心配したものである。
確かにどこまでも続くシドニーの緑がそこだけ黒と茶色の世界になっていた。
そしてそこが住宅地から結構近いのに驚かされた。話によるとセーラの家までは火は来なかったものの、夜になっても空が赤く、熱風が吹き付けてきたそうである。
災害の現場は実際に見ると胸を打つものがあった。先日家族で旅行に行った雲仙普賢岳の噴火現場を思い出した。
途中ガソリンスタンドに立ち寄ると、店の男がいきなり握手をしてきた。訳も分からず「サンキューサンキュー」と返したが、後で聞くと、それがセーラのお兄さんと言うことであった。
もっと愛想よく返しておけばよかった。
それにしてもガソリンの安いのには驚かされる。リッター30~40円くらいであった。日本の軽油より安い。日本の石油会社は足元を見ているのであろうか。
コアラパークはブリスベンの動物園よりは小規模で、動物もそこで見た物ばかりであったが、ブリスベンでは寝ている姿しか見られなかったウォンバットが俺たちの方にのこのこ歩いてきたので、フェンス越しにさわることができた。

この後家に帰ってまた色々と話をした。
大分打ち解けてきたのだが、聞けばセーラは陰険な学校の先生のおかげで明日試験を受けなければならず、これから試験勉強をしなければならないそうだ。
もう夕方だしそろそろ帰り時だなと思ったので、再会を約束してこの素敵な家族と別れることにした。
そしてセーラパパに宿まで送ってもらったのだが、その途中に見た夜景の綺麗なこと!夕闇迫ったシドニーの街には沢山の明かりがついていて、その中でハーバーブリッジやオペラハウスがライトアップで輝いていた。
こんな景色を見られた感動とともに、今日一日俺のために付き合ってくれたセーラファミリーに感謝の気持ちで一杯になった。
ありがとう、セーラファミリー!!

夜は宿の近所で少し買い物をした。お土産と水、ビール、雑誌を数冊買った。
帰りがけに実家に電話をした。この旅のお金を出してもらっているので、一応無事くらい知らせておかねばと思ったのである。
拝啓、あなたの息子は4年間京都で好き勝手やってきましたが、そろそろ卒業なわけで。
それにしてもここから何千キロと離れている場所に普通に電話できるというのは何だか不思議な気分であった。
明日は一日シドニー市内観光である。セーラママの薦めてくれたくれたハーバー巡りに行ってみようと思う。

(続く)

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