失敗したらどうするんだ?私が出世できないだろう。
15年ほど前の話・・・。
「この組織をもっとよくしたい。」
「そしてひいてはこの町を良くしたい。」
わたしは、かつてそう思っていた頃がある。
いや、自分に限った話ではないと思う。
そういう志を持った方が多かった。
でも、今は・・・。
#2.「変われない職場」
RYU@元公務員です。
地方公務員を15年もやっていたら、見えてきます。
「自治体が簡単に変われない問題点」を・・・。
■変化をきらう公務員の職場
入庁の頃を思い出してください。
・市役所の面接で語った言葉
・辞令交付式の宣誓をしたとき
・入庁時に感じた想い
これらのあなたの想いは、間違いなく本物です。
「僕が、わたしが、この市を良くしていこう。」
目標や志を持ち、市役所に入った方もいると思います。
でも、公務員という組織は、国、地方を問わず「変化をイヤがり」ます。
業務やコストの改善で、無駄な事業を廃止したい
市民の利便性向上で、「手書き」を廃止したい
パワハラ職員を罰する仕組みを作りたい
色々なアイデアを持って上司に提案します。
でも、大体の上司は面倒そうな顔をします。
「それ、本当に必要なの?」
ショックを受けたが、更にがんばって作成を続けた。
裏付けを準備し、予算を通す議会の時期、質問対応も準備し上司を説得してみることにした。
「これで予算を年間○○○万円減らせます!
人件費を割くよりよっぽど効果的なんです。」
それでも相手にしてくれません。
なぜ、市を良くする提案なのに、上司は話すら聞いてくれないんだろう。
こうして、入庁から5年の月日が経ち、ほとんどの職員は提案を諦めます。
そして更に10年。
あなたは部下に対し、元上司と同じことを言う自分自身に気付くのだった。
■変化をイヤがる理由
変化をイヤがる公務員・・・。
公務員批判で定番のテーマです。
一方で公務員としての生き方を分類する上では避けて通れない内容です。
結論から行きましょう。
変化をイヤがる公務員が増えるのは「公務員の組織風土」が原因です。
つまるところ、ありがちな公務員批判は的外れかもしれません。
職員個人の資質以上に、やる方が損な構造的原因があるからなのです。
原因となる問題点を3つ挙げてみます。
問題点① 事なかれ主義の出世構造
大体の自治体において、出世には「失敗をしないこと」が近道です。
最近だと、「係長のままが一番コスパが良い」なんて意見もありますが、今回は、出世した方がより良いと考えます。
さて、仮に出世(課長)するのに30点分の評価が必要としましょう。
まず、年功序列でみんな毎年3点もらえます(これも本来はおかしい)。
新しいことをした場合、
「成功の加点が5点」なら、
「失敗の減点はマイナス15点くらい」で評価されます。
しかも、2回も失敗すれば、上司次第ですが「終了」です。
表向きは「職場は失敗に優しい」と市長が公言してても挑戦できません。(「俺はチャレンジはさせてやる市長だが、お前じゃない」ってね。)
結果、出世の期待値を考えると、年功序列の加点の方が安全のため「ノーミス型」公務員を目指す人が増えます。
なお、上にもある通り「ノーミス型」の批判をする気はありません。
「ノーミス型」公務員をいじめて人気取りをするブログ等が時々ありますが、概ね誤りです。彼らは「現行業務の遂行する大事な屋台骨で、不可欠な存在」であることを理解してください。
「ノーミス型」職員の比率はともかく、地道に正確な業務をする彼らが居なくなると組織は崩壊するでしょう。
問題点② 市長・議員の票になる案件か
次に「市長や議員」が原因となるケース。
選挙で選ばれる公務員(特別職)は、原則的に「票」が行動基準。
住民にメリットのない「サービスの廃止」や「職員の給料アップ」では票はもらえません。(ここが大事です。)
したがって、市長や議員さんは「職員の給与を減らし」「無駄でもサービスを残す」判断をするようになります。職員の中にも市民はいますが、優先度は低くなります。
そして「票」のために、
・住民サービスは現状維持
・だけど「金はかけません」
・あって当然のサービスは加点されないので最低限
という最適解を目指すわけです。
最近崩壊しつつある「政令市などのバス事業」などを想像してみてもらえればと思います。
問題点③ 「行政」職員の限界
最後の原因、三権分立の話。
「行政職員」は「立法」側ではありません。
「まちづくりは政治(立法)」です。
基本的には議員が決めます。(実際は職員が提案・支援をするのですが・・・)
市長(行政)も議案提出権がありますが、②の通りあなたの提案を市長に納得させるのはイバラの道です。
また、ほとんどの場合、あなたは自身の業務と並行しながら作成します。
そのため、段々と心がすり減り「リスクを負ってまでやっても仕方ない」という空気が蔓延します。
これらが要因となり、手段とモチベーションを閉ざされた若手は、仕方なく定例業務に勤しむ「ノーミス型」公務員が最適解と考えるかもしれません。
■どうしても変えたければ・・・
それでも通したい提案があると思います。
イバラの道ですが、一応打開策としての提案手順も書いておきます。
①日ごろから「バリバリ型」上司への根回し
②部長・課長ガチャ
③隙のないプラン
④納得させる資料作り
⑤上へのプレゼン
この辺りを抑え、異動前に完成させる必要があります。
(良いプレゼンの作り方は他の人も多数書いているので割愛。)
それより、自治体で提案を通すのに重要なのは①と②です。
どこの役所でも「変化を好む」上司が僅かながら確実にいると思います。
バリバリ働き、新しいことに挑む「バリバリ型」としましょう。
その中の「出世した人と付き合う」ことです。
係長や課長クラスの方がよいでしょう。
部長・局長でも良いですが、関係を作りにくく、係長や課長クラスの説得で部長以上が十分動くためです。
なお、「バリバリ型」の若手と組むのも良いですが、人の良し悪しあるので難しいです。(個人的に「バリバリ型」には2種類あると思っています。どこかでもう少し踏み込んで書ければと思います。)
その後、②のとおり「バリバリ型」公務員の上司と一緒に仕事をするタイミングで提案をします。(一緒になれずに異動となったら・・・ほぼ無理です。)
■あなたはどちらで生きたいか
最後に・・・、
あなたが企画を通せるかどうかも大事です。
でも、公務員として幸せになるためにもっと大切なことは、
あなたが「ノーミス型」の公務員を目指すか
あなたが「バリバリ型」の公務員を目指すか
これを早いうちに決めておくことです。
入庁3年目くらいの時点で決まれば、その後の立ち回りが変わってくると思います。これらの職員のタイプについては、いずれ深掘りしていきましょう。
また、あなたが倒れないために、上司がどちらのタイプかを知って行動することです。
特に、対策を練らずに「ノーミス型」公務員が「バリバリ型」公務員の上司の下で働くと最悪です。病んだ方を何人も観てきました。
彼らの対処を誤ると、そのエネルギーが仕事からあなたに向きます。
彼らは良かれとして新しいことに挑み、あなたが耐えきれずすり減るという「パワハラ」に近い状態が発生します。
体感として公務員の職場では、
「ノーミス型」公務員 70~80%くらい
「バリバリ型」公務員 5~10%くらい
という割合です。
(組織規模や風土、派閥の偏りでもう少し変わるかもしれません。)
察しが良い方は、合計が100%でないことに気付いたかもしれません。
その通りです。
残りの10~25%どんな方がいるのか触れて行こうと思います。
でも、こちらは恐らくあなたのご想像のとおりの方だと思います。
今回も長めでしたが、次回も読んでいただければ幸いです。