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【第35回東京国際映画祭&第23回東京フィルメックス】DAY 1

こんにちはギルドです。
10/28より東京国際映画祭、10/29より東京フィルメックスに参加予定なので現地で鑑賞した作品の短評をまとめます。

観た映画の概要はこちら


①「第三次世界大戦」

スコア:
69/100

短評:
エキストラとして参加する日雇い労働者の男がヒトラー役に急遽抜擢されるが…なお話。
戦争映画を撮る映画の裏話的な面白さから進んで、イラン映画特有のパワフルで面白いエンタメ映画になるかと思ったら良い意味で裏切ってくれた。

ある出来事をターニングポイントに闇の側面が顕になり「第三次世界大戦」や「ヒトラー」の意味合いが色濃くなる。その展開としての豊かさが良かった。

本作は「ちいさな独裁者」の一面はあれども「無敵の人」になるまでの映画を描いていて、震災によって妻子を失った何もない男が社会の急激な変化によって待遇が変わる。
これって日本の大企業に勤めるサラリーマンと同じで、名もなき人間に社会が「何者であるか」というのを誇張して誤解させて、自分は凄い人間であると錯覚させるのと似た匂いを感じて、普遍性があると思った。

映画が進むにつれて「悪魔の証明」「スタンフォード監獄実験」の要素を見えながらも段々と「無敵の人」へと近づき、戦争映画という虚構で干渉しなかった装置がカメラワークの変遷、身をまとう姿で徐々に現実へと色濃くなっていく姿には一定量の緊張感もあったし第三次世界大戦というワードが世界の様々な場所で起こりうる地続きさせる作りも面白かった。

②「波が去るとき」

スコア:
66/100

短評:
麻薬撲滅運動によって病んでしまった捜査官のお話。

ラヴ・ディアスの監督作品は今回が初めてだが、とにかく映像がかっこいい。モノクロ映像にノイズを混ぜたスタイルで進行していき、映画は時に霧をたちこませて「雨月物語」のような画作りを展開していったり、時には空間自体を窮屈にしたり広々とさせたり…と変幻自在に見せてくれる。

この映画は前半はドゥテルテ政権の麻薬没滅運動によって人生を棒に振ったり、自身の体に跳ね返る形で「壊れた人たち」の行方を追体験する形で進行していく。
映画は精神を病んで皮膚病を患うヘルメス、賄賂を受け取って自由な時間を得た元部長、ヘルメスの友人でカメラマンの男の三人で物語は展開していき、政府・警察の狂った世界で翻弄された人々を捉えている。

そこにあるのはタクシー・ドライバーのトラヴィスのような扱いもあるんだけど、狂った世界に唾を吐かずにアイデンティティを持って笑い飛ばそうとする姿があってそこが良かったです。
長く終わりのない煉獄を映画で表現し、時には「雨月物語」「ジョーカー」の他の映画がコンテキストとして語られて半狂乱に進んでいく姿にこそ凄みがあると思わせる、そんな映画。



③「マンティコア」

スコア:
81/100

短評:
大傑作でした。初日に観た映画で、この作品が一番良かったと誰が予想つくのか?と思わせるほどダークホースな存在でした。

カルロス・ベルムトは過去作「マジカル・ガール」で魔法少女まどかマギカ的なうつ要素強めの映画を撮影していて、本作にもそうゆう要素があるけど今泉力哉テイストの温かさを内包している映画でした。

この映画、何が凄いかってマンティコアという怪物が「自身の精神的なコア」のメタファーだけでなく、ゲームデザイナーの男のフェチ・仕事のアウトプット・他者から観られた自分自身・そしてラストの実質「マンティコア」…と多面的に展開していく姿にあると思う。

ランシスコ・デ・ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」引用も相まって、自分自身が抱える化け物のような深淵な精神的コアがどのように醸成していくか?の過程を水面下で発達していく話運びも面白いし、陰キャ体質の男が生身の女性との恋愛をする奥手な姿・トラウマ体験というのを如実に反映しているのも素晴らしかった。

あのラストも今泉力哉テイストを思わせていてloveとlike(とconvalesce)次第では希望にも絶望にも取れる話の締め方も見事で、ヤバい性癖を抱えた陰キャたちの恋愛に対するドキュメンタリー要素を捉えながらも最後には彼らに対して手を差し伸べるような、そんな映画でした。
個人的には凄く好きな映画で、劇中のBGMや内装設計のおどろおどろしさも素晴らしいしカメラワークで意図的に顔面を暗くする「光」の使い方がカチっとハマっている姿が最高でした。あとボーイッシュな女の子かわいいコーデも笑顔も美脚も最高…

でも監督、あのラストは淫夢4章を絶対に意識してるよね…


マンティコアは10/30にもやるので気になった方はぜひ鑑賞してください!


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