理想のソシャゲがないので自分で作って運営することにした話
神ゲーの続編が出ないから自分で作ろうとした話
ラストレムナント(The Last Remnant)(略してラスレム)(2008年発売)という神ゲーがあります。RPGですが戦闘が特に面白く、味方18人敵それ以上との集団戦闘はバランスが絶妙で、コマンド選択、演出や表現を含めて最高の神ゲーでした。
でも、続編は出ませんでした。
※最近(2018年)になってリマスターされましたが、PC版が出てくれません。
なので、自分でラスレム2を作ろうと思いました。
これまで「餅つき(2012)」「羽根つき(2013)」「鐘つき(2015)」などのミニゲーム、「ラッシュのことなんて全然好きじゃないんだからねっ!!」(兄好パロ動画)を作ってきた自分ならいけると思ったのです。2013年8月頃のことです。
いけませんでした。
とりあえずパーティ編成画面を作ってみるか……と企画書に16:9の大きな画面でUIを置いてみた時点で、これをメンバー出し入れしたり装備変えたりする操作をできるようにするなんて果てしない作業量だし、どうしたら実現するのかもさっぱりわかりませんでした。
なので、己の身の丈にあったゲームを作ることに方向転換することにしました。
企画の見直し・ダウンサイジング
これまでFlashでミニゲームを作ってきたので、ラスレム2を企画した時点でもFlashゲームの予定でした。この頃はFlashで作られたブラウザゲームも多かったので(艦これとか)、ラスレム2もサーバー・クライアント型の、よくある「クエストに出発してイベントストーリーを読んで、ガチャしてキャラや装備を得て編成して」を繰り返すタイプのブラウザゲームにしようと思っていました。
ですが画面も大きくてキャラいっぱいで画像も用意しないといけなくてそのうえストーリーまで書くのは大変なのでまず……
画面サイズを320x320にすることにしました。
画面サイズが小さい、という制約があればおのずと実現できることも減り、身の丈に合わないことはしなくなるはず。
そもそもゲームボーイは160x144でも神ゲーばかりなので、その4倍以上使えるなら素人の自分にもなんとかなるはずです。
と、ゲームボーイのことを考えたので、色もゲームボーイっぽいモノクロにすることにしました。色のセンスとかないので。
さて画面を小さくしたのでラスレムのように大量に敵味方が入り交じる戦闘を表現することは難しいです。なので戦闘参加人数は減らすしかありません。
パーティ戦闘もののRPGといえばドラクエ。ドラクエは基本4人パーティですが、RPGの戦闘ならMMORPGのようにタンク、ヒーラー、アタッカーがいて欲しい……バッファーもデバッファーも……と考えると4人だとちょっと足りません。
世界樹の迷宮なら5人、前衛後衛の仕組みもあります。三種の役割も実現している。……けどあれはUI的に6人置けるところを減らしているので……。
6人、出したい。なぜなら多いほうがお得で楽しいから。6人パーティで前衛後衛があり、画面サイズが小さいといえば……そうだ、Wizardryだ!
ということで基本的な画面構成はWizardry(FC)を参考にすることにしました。さらにWizardryといえばダンジョン探索に特化していて、やることがシンプルです。
なるほど、目指すべきはこれか。さっそくワイヤーフレームの3Dダンジョンを探索するシステムを作り始めました。
できませんでした。
プログラミング能力が低いので3Dダンジョンの表示にも一苦労。曲がり角とか視界とか難しすぎる。壁にドアがあるとドアも描かないといけない……そもそも、迷路を用意するのも大変すぎます。
なので、少しだけ作って3Dダンジョンは諦めました。よく考えたらオートマッピングとかも作らないといけないし。
というかそもそも、迷路探索はあまり好きな要素ではないのです。パズル的なギミックも楽しさより面倒臭さが先に立つタイプで、とにかくハックアンドスラッシュさせて欲しい。なのでバッサリ切り捨てました。
とはいえ……迷宮を探索している感じはほしい。
そこで、メイン画面に自動で迷宮を探索している様子……昔のスクリーンセーバーにあるあの迷路のやつみたいに自動で進んでいる様子が映るといいなと考えました。
が、3Dダンジョン表示は完成しなかったので、とりあえず床と壁を映して、なんとなく奥に進んでいるようにスクロールさせました。
これで迷宮を自動で移動している感じが出てきました。……ところで、移動しているということは、そのうち敵とエンカウントしたり、宝箱を見つけたり、罠に引っかかったり、階段を見つけたりするはずです。表示上だけでなく、実際にそうなったほうが自然な感じがしました。
ということで、自動でダンジョン探索して結果を得られるようにします。エンカウントしたり宝箱を見つけたりしたときにプレイヤーの操作を待っていると「自動」感がないので、戦闘もオートで行うことに決めました。
プレイヤーの操作は編成をするだけで、自動で進んで勝手に戦闘して、勝手に宝箱と資金が増えてレベルアップしていく。これって……
CookieClicker(2013年8月)に似てるなぁと思いました(当時あまり放置ゲームの存在を知らなかったので……というかあまりなかったはず)。そのため、最初の頃はCookieClicker系ゲームだと称していました。
完成、運営、その後
さてほぼ完成したので、人に遊んでもらいたい。そのためにはタイトルを決めなければいけません。もう全然ラスレムっぽさはありませんからね。
作っているうちにダンジョンにだけ潜ってハックアンドスラッシュするのが、hengbandに似ているなと思いました(ローグライクのゲーム、angbandのバリアントです)。そこでそれにあやかって、「houtiband」と名付けることにしました。
……angbandとはシンダール語で鉄の牢獄の意味で、要はそのダンジョンを指す言葉なのですが……まあ、houti(放置)でband(英語で一隊、あるいはシンダール語で牢獄)でも良いでしょう、ということで。
そしてフリーブラウザゲームのアルファ版として2014年春に、PeerCastの創作系オンラインイベント「きゃすけっと」に出展。2014年秋にベータ版を公開。その後そのまま正式版となり、2016年秋頃に最後のアップデートを行って2017年8月末にサービスを終了しました。
運営中はいろいろ大変なこともありましたが、いい経験になりました。たくさんの人に遊んでもらって、なぜかRTA勢まで(放置ゲームなのに)現れたりして……素晴らしい思い出です(干芋でPS4までいただいたり)。
それから約4年半経って、また新しく作ることになった話
一部の方に気に入っていただけたおかげで、その後もたまに思い出話をしてもらったり、また作らないのかという話を振ってもらうことがありました。
あれから4年半です。Flashゲームはサポート終了により死滅し、ブラウザゲームよりもスマホのソーシャルゲームが全盛になった今。houtibandのようなゲームは必要ないだろう、放置ゲームジャンルも増えたし……
と思っていたのだけどそんなことはありませんでした。
最近のソシャゲ、僕にはつらい
確かに時は過ぎ、ソシャゲは洗練されていきました。ダウンロード数とか売上額とか見てるとまぶしいぐらいです。
しかし一方で「ユーザーの時間の奪い合い」は過剰になっているかなと感じました。期間限定イベント、1日も逃せないログインボーナス、デイリーミッション、曜日限定コンテンツ、ゲームによっては1日数時間しか遊べないコンテンツなど。
課金圧はゲームによってまちまちですが、FOMO(fear of missing out)、やり逃して他から取り残されることに対する恐怖に関しては、どのゲームもかなり強く持っていると感じていました(そうではないゲームもたくさんあるかもしれませんが)。
スキマ時間にプレイする、ではなく、もはやスキマ時間を作ってプレイし続けなければならない、という状況になっているように感じ……それから解放されているゲームを必要としている人もいるんじゃないかな、と。
少なくとも僕は最近のソシャゲについていけてないですし、需要は0じゃないだろう。ということで、「houtiband2」を作ることにしました。2022年1月ごろの話です。
無料、NoFOMOなソシャゲを目指して設計する
houtiband2では、前作同様に「プレイヤーは編成をするだけで、オートで戦闘が行われ、宝箱や資金を獲得する」という骨格を引き継ぐことをまず決めました。その他の方針も固めていきます。
まず課金要素は、なしです。ありえないと思うのですが万が一バズって大儲けしてしまうと副業の申請をしないといけなくなってしまうので……。開発者だけがドメイン維持費やサーバー代を廃課金するゲームということにしました。
デイリーミッション、ログインボーナスも、なしです。数日や数ヶ月遊ばないぐらいプレイヤーの自由ですし、それで損した気持ちになってほしくありません。
期間限定イベントもありません。無料ゲームなので集客の必要もありませんからね(広告も出してないですし)。
放置した見返りの「時間の力」
そして次に、放置することを損だと思われないようにしたい。
いくつか放置ゲームジャンルを触っていましたが、例えばCookieClickerでも、放置していただけでは効率が悪くてアップグレードを適切に買う必要があります。他のゲームでも、レベルが上がったのでステージを変えないと効率が悪いとか、装備を更新しないと効率が悪いとか……
貼り付いて遊んでいる人と放置している人では、どうしても差は生まれます。それでもなんとかそれを軽減したい……操作するタイミングはプレイヤーの自由にしたい。そのためにhoutiband2では、「時間の力」を導入することにしました。
戦闘していない時間を「時間の力」としてミリ秒単位で蓄えて、100連戦にかかった時間を元に、「時間の力」を消費した分だけ結果を手に入れることができる、という仕組みです。
100連戦に10分かかったなら、10時間分の「時間の力」を使うと6000回戦った分の経験値、資金、宝箱を入手できるわけです。
これによりレベルアップしたりアイテムを入手して編成を変えるタイミングを、プレイヤーの手に委ねることができるようになりました。
ちなみに「時間の力」はいつゲームを開始しても「サービス開始時から今までの分の時間の力」を手に入れられますので、スタートダッシュとかそういうことは気にせず、いつ始めていただいても大丈夫です。上限もないので、例えば1年後にプレイしたらいきなり1年分の時間の力が使えます。
ベンチマークソフトとしてのhoutiband2
「プレイしない放置」も大切ですが、「プレイする放置(自動戦闘をバックグラウンドで流しておく)」も重要です。houtibandには前作から「戦闘速度」の仕組みがありますが、最高速度で進行する自動戦闘は見ているだけで楽しいものでした。
RPGのキモである戦闘が、ログさえ追えないスピードで進行する。そのハチャメチャさを楽しんでもらうため、今作ではさらにFPS上限なしで動作するモードも用意します。PCスペックによっては500とか700FPS以上になるので、ベンチマーク的な使い方もできるはず。
さすがにFPS上限なしでずっと戦闘しているのと、放置して時間の力を貯めるのとでは、前者の方が効率が良くなりますが……そこまでPCリソースと電気代を負担して遊ぶのであれば、あっても許容される見返りかなと考えています。
前作の反省を活かして作るhoutiband2
という感じで大枠を決めたので、作り始めました。
ツールはFlash(parafla)からUnityに変更。ブラウザゲームではなく、PCクライアントゲームにします。実は前作では作っている途中から「アクティブではないタブの動作を抑制する」という仕組みがいろんなブラウザで実装されてきて……裏のタブで放置しているとFPSが1になる始末でした。それを回避するために無音の音楽を流すとかいう小技を使っていたのですが、今はそういうことも許してもらえなさそうなので、ブラウザゲームにすることは諦めました。
ところがそうすると一つ問題が発生します。アップデートどうするの問題です。ブラウザゲームなら常に最新なのですが、クライアント版ではそうはなりません。
Unityにはアセットバンドルとかアドレッサブルアセットシステムとか、そういう便利な仕組みがあるのは知っている……けどよく分からないし、Unity自体のバージョンを上げることになると全部ダウンロードし直しになるはず……その度にzipファイル落としてもらって解凍してもらうのは心苦しい(計画性がないので細かくアップデートすることになることが予想される)。
ので汎用的に使えるアップデート機能付きランチャーを作りました。
アップデートといっても新しいクライアントのzipファイルを落として上書きしているだけなので、転送量の節約とかにはなりませんが、そんなに重くないゲームになるはずなのでこれで大丈夫。
画面サイズは320x320ではさすがに狭すぎ、やりたいこともできないので1600x900に拡大。あんまり大きくすると無理なことを始めそうなのでこれぐらいが限度です。
ログインシステムは前作から引き続きTwitter認証。ただ、PCクライアントでTwitter認証をそのままやる方法がわからなかったので、Twitter認証後にゲーム専用のパスワードを発行することにしました。
なお前作まではTwitterのAPIが使い放題だったので、進捗の報告などをつぶやかせていましたが、今回からはAPIが使えないので認証のみです。
ゲーム内容的にはキャラクター関連を大幅に変えなければいけません。houtibandアルファ版では、なんとなく何処かで見たような設定のキャラ(名前「番長」説明「田舎にやってきた転校生」能力:雷系の魔法スキルが使える)がガチャで手に入ったのですが、「元ネタが分からない」と一部不評だったので、ベータ版からは完全に二次創作ゲームに変更しました。
結果、アリーナ姫がばくれつけんを放つ横でクロノとカエルがエックス斬りを連携し※1、星空みゆきが変身※2してハッピーシャワーをぶちこみ、カミーユが金ピカ塗装の逆関節に改造されたZガンダムに乗りんで※3ヒートサーベルを振り回し、若がたまご召喚でエッグマンを呼び出して※4最終防衛システムに立ち向かう……という戦闘が展開していました。
※1 スキルに設定されたキャラが編成されていないと使えない。
※2 変身するまでは一般人ステータスなので先制攻撃を受けないようにしないといけない。
※3 誰も乗り込まないと行動できない。
※4 召喚した1キャラだけが矢面に立って戦う。
……さすがに今回は一般の人にも遊んでほしいし、この内輪ノリは問題を起こしそうなので、二次創作路線はやめました。
とはいえ一次創作でキャラガチャに興味を持ってもらえる自信もないので、Wizardryや世界樹の迷宮を参考に、houtiband2ではキャラメイク型に変更しました。キャラ画像は自分の好きな画像を使ってもらうようにすれば解釈違いも起きませんよね。
あとは入手アイテムによるキャラの永続強化要素や、対人戦の闘技場はhoutiband2では実装しないことにしました。ソシャゲにおける対人は無限にユーザーがコンテンツを作ってくれるのですが、バランスが難しいし、トップ層には勝てなくてつまらないし、報酬を用意すると義務化されてFOMOになってしまうので。
また戦闘に関しては、自動戦闘から実装していった前作と違い、手動戦闘を最初に実装しました。そのうえで自動戦闘を実現するためのAI設定、いわゆるFF12で言うところのガンビットを実装しました。
前作までは「条件のとき、何する」まででしたが、今作はさらに「条件のとき、さらにこの条件なら、何する」まで設定できるようにしました。設定を詰めれば自分が操作しているのと変わらないぐらいの動きが見られるかと思います。
タイムライン戦闘もやりたかったことの一つで、むしろこれのために画面サイズを大きくしたと言っても過言ではありません。敵の行動順を操作するスキルも一部用意しています。
あとは前作の反省というと……ぶっ壊れスキルを作らないことと、そうなっても安易にナーフしないことですね……
houtiband2、サービス開始
そうして2023年春、満を持してhoutiband2アルファ版を「きゃすけっと春」で発表し、ユーザーの利便性周りが全然足りなかったことに気づかされて、2023年9月、「きゃすけっと秋」にクローズドベータ版を公開、その後オープンベータに移行して今に至ります。
真にスキマ時間に遊べる、FOMOのない理想のソシャゲを作れたかどうかは……よくわかりません。
なぜなら自分で遊ぶとテストプレイになってしまうからです……仕様も隅から隅まで知ってるしマスクデータも把握してるし……
なのでぜひ、皆さん遊んでみて確かめてくれたらと思います。誰かの理想になれてたらそれにまさる幸せはありません。
(でもめちゃくちゃバズってサーバーがパンクしちゃったらちょっと困る……起きないだろうけど)
それで結局houtiband2ってどんなゲーム?
ここまで読んでくれたということは、houtiband2に興味があると思いますので、さっそく遊んでほしいのですが、まだ説明を聞きたい方向けに。
houtiband2はあなたの作成したオリキャラでパーティを編成してステージを攻略し、宝箱を開けて新しいクラス、スキル、装備を獲得し、得た資金で装備を強化してさらに次のステージに進んでいく放置型RPGです。
面倒な移動や探索は一切なし。戦闘を効率化して成長することにだけ集中することができます。
戦闘も常に操作する必要はなく、何のコストも支払わずにオート戦闘が可能。オート戦闘時の行動も、各キャラごとに条件と行動をカスタマイズすることができます。
放置ゲームにありがちなスタミナ溢れや、レベルアップの時間を見計らって操作する必要はありません。戦闘していない間のすべての時間は「時間の力」として蓄えられ、スキップ戦闘に使用できます。いつでも好きなときにプレイして損がありません。
スキップ戦闘の効率は、あなたが叩き出した100連オート戦闘のタイム次第。パーティを成長させ、タイムを短縮し、さらなる成長へ繋げていきましょう。
houtiband2は絶賛オープンベータテスト中! 無料!(開発者だけが廃課金!) ログインするとサービス開始時からそれまでの時間の力がもらえるので、実質全人類が放置中! そろそろ放置をやめてプレイしてみませんか?