10/16 しげ旅に思う事
最近、旅系Youtubeにハマっている。
イチオシはBappa Shotaさん。よく言われることだが、もはやYoutuberの域を超えてジャーナリスト、動画というより渾身のルポルタージュである。
⇧ファストファッション御用達、Made in バングラデシュの裏側。衝撃の内容だった。
初期の「映像の世紀」が大好きな自分としては、こういった隠された現実に迫る内容は本当に興味深く、行動を喚起させてくれるものだ。
(決して「考えさせられた」だけで終わってはいけない)
一方でもっとライトに、気軽に旅を楽しめるチャンネルといえばしげ旅。
とにかくのんべえで、ポテトをつまみに各地のご当地ビールを飲みまくる。
自分はビールは味が好みではないのでそこまで飲みたくなる気持ちが分からないが、これだけ飲めたら楽しいのだろうと思う。
そんなわけで、今年の春ごろから始まったアジア編。
インドに始まり、やがて中東へ。
(ところで、最近「中近東」と言わず「中東」と表記する事が増えた気がする。なぜだろう?)
イスラム国家なので、基本的に飲酒はNG。
そもそもお酒が売られていないので、入手するにも苦労する。
〇時までしか販売していない、イスラム教徒にとって特別な日なので販売できない、今日はもう売り切れ(何日も続く)・・・など、酒にありつけない日々が続く。
しげさんも「飲めない」「残念」というワードが多くなる。
・・・と、これまでは楽しく見てきたのだが、ここで段々と疑問が湧いてくる。
そもそもイスラム教という飲酒を禁じている宗教の国家を訪ねておいて、初手で飲酒ができると噂のホテルを予約したり、何とか入手しようと方々を訪ねたりするのは、果たしていかがなものなのか・・・と。
酒好きは性質だとして、ここまで酒にかける姿を見せてしまうのも、何だか依存症めいている。
しげさんにとっては「イスラム国家を訪れたい」わけではなくて、「すべての国を巡る中にイスラム国家も含まれる」だけかもしれないが、ちょっと出先の国に対するリスペクトの念に欠けてはいないだろうか。
もし自分が禁酒の国の人間なら、遠い外国から来た人間がずっと酒を求めている姿はあまり気持ちの良いものではない。
イスラムは客人をもてなす文化が根強いので、外国人向けにそういう店も用意してくれているものだと思うが。
また、食事もその国らしさ(メニューだけでなく、マナーも含む)をいまいち感じられないものが多く、カフェはWifi環境が欲しいためか大手チェーン店を利用する。
まぁ、これはそもそもの利用目的が動画編集なので、カウントすべきではないかもしれない。
更に言うと、インドはそれなりに何か所か訪れたが、他国では3日滞在して「ハイ、次」というのがお決まりのパターンで、これもちょっと味気ない。
その国のスタンプさえもらえれば良い、というような淡白さを感じてしまう。
(最近は入国スタンプなんて殆ど無いが)
で、何とイスラエルを訪問。
訪問した時は7月だったそうだが、戦闘は去年の10月からなので当然戦時下である。
ロシアには行かないのにイスラエルには行くのか・・・という気もするし、いくら世界を巡るにしても今このタイミングでこの国を訪れる事の意味を考えなかったのだろうか?
自分はHirbawiでクフィアを買うくらいにはパレスチナを応援したいので、さすがにこの内容には怒りを覚えた次第だ。
これでパレスチナ訪問が無ければ、ちょっともう視聴はやめようとさえ思う。
勿論、勝手にやめればという感じだろうが、逆にそういう意見を持つ人にこそ「本当にこの国の歴史とパレスチナのこと、知ってて言ってる?」と聞いてみたい。
今やインスタでもガザの様子を垣間見ることができる。
当たり前だが、爆撃を受けた人間の体は内臓もろとも吹き飛ぶし、血を吐いて息絶える。
生まれたばかりの子供が血塗れになって横たわっている。
ネタニヤフの悪魔のような形相と、「俺達はパレスチナの人間を根絶やしにするぞ」という声明を聞いてもなんとも思わないのだろうか。
元々そこに住んでいた人の家をグシャッと壊してしまって、抗議する人の腹を打ち抜いて、「先祖の苦労によって手に入れた土地だ」とか言ってせせら笑うようなことを何十年とやっているわけだが、もし自分が同じ目に遭っても構わないのだろうか。
そんな事は起きないと高をくくっているのかもしれないが、シオニズムの前では日本人も排除対象だと知らないのだろうか・・・?
ていうか、自分の身に起きてなくても、さすがに「これはない」のレベルではないか・・・?
と、自分はどうしてもそういう事が思い起こされてしまうし、それが特殊なことだとも全く思わないので、たとえビーチが美しくても、夜中に通りを歩けるほど安全であっても、「簒奪した土地で育て、かつて迎えようとしてくれた人々を裏切った血のビールは旨いかい」と引いた目で見てしまうのである。
しげさんは自分より2歳年上。
全世界を旅するには上手くやらなくてはならないのだろうが、中立なんて土台無理だし(見て見ぬふりをした時点で加担するのと同義)、世界を相手にしながら「うちはそういうのじゃないんで」というのも通用しないのではないか。
まぁ、もうどうしてもビールしか見えないのであれば、いっそ血のビールも飲み干せば良いと思うが。
少なくとも、このあたりで旅の目的を再定義する必要があるのではと思う。
(現在帰国されているのも、実は自分でもそういう感覚があったのかな、と少し期待しているが)
ちなみに、別のYoutuberがアップした「戦時下ロシアへ行ってみた」は戦争を全く感じさせない首都の様子がうかがえて、かなり有意義だったと思う。
最初からそういう名目があるなら資料的価値もあろうものだが、広場にあった人質解放を訴えるものと思しき大量のプラカードをガン無視しているあたり、「現実を伝える貴重な映像」としての役割も殆ど無いと思う。
何にせよ、ロシアはそのうち行くと思うが、台湾を国としてカウントするのか、ウイグルには行くのか、パレスチナは結局スルーなのか・・・
「あと〇カ国」という表記にハラハラしてしまう自分がいる。
戦場カメラマンでなくとも、ただ旨い酒を飲みたいだけだとしても、自由に渡航できる身分である以上、責任もついて回るという事を考えてほしいとひそかに思う。
以上!
BH
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