読書感想:「ロボット・イン・ザ・ファミリー」

「ロボット・イン・ザ」シリーズ4作目。
今回はタングの出番が少ないと感じた。ボニーが中心に描かれている。
ジャスミンが去り、代わりにフランキーがやってくる。
ボニーは自閉スペクトラム症らしく、逐一困った事が起きる。
他人ごとではないので頭と胸が痛むが、赤の他人から見れば迷惑にしか見えないだろうな、とも思う。本人も世話する人も大変。悩みの種になっているボニーだが、終盤でフランキーの為に行動する部分も見せる。
フランキーは捨てられても元の持ち主、ソニアの世話をしたいと言い、彼女のもとに戻ろうとする。その健気さが泣かせる。
しかし、ソニアがフランキーをベンの家の前に捨てていった経緯は、
ペットを飼っている人の家や動物園に動物を捨てていく人を連想させて印象が悪い。フランキーが捨てられた理由は長年修理してはきたが、老朽化の為か止まってしまう事が多くなり、直し切れなくなったためだ。
ボニーは私たちがフランキーを直すから、と約束してフランキーがソニアの元に帰れるよう説得し、それで彼女も納得するのだが、
登場人物たちの心境を除いて事実だけ抜き出してみると
・壊れかけのロボットを他人の家に捨て、他人に直させて返してもらう
と、なかなかひどい事をしている気がする。
フランキーはベンたちが直すということになったが、いつか壊れてしまう事、つまりロボットにも死がくることを少し感じられた。
ロボットは歳を取らない、不老不死のようなイメージもあるが、実際の機械は老朽化し、壊れてしまう。パソコンの寿命は5年ほどともいう。
思っているよりロボットの「寿命」は短いのかもしれない。
ロボットは修理する事ができるので、死の概念は生き物よりも曖昧になりそうで、この点は難しくてはっきりとした意見が持てない。

もう一つ、AIの「寿命」を感じた出来事がある。
ChatGPTでは、かつて「GPT3.5-Legacy」というモデルが使用できたが、現在は廃止されている。

2023年5月3日:「チャット履歴のオフ」「Legacyモデル廃止」
「チャット履歴のオフ」「Legacyモデル廃止」が実装されたのは5月3日のアップデートです。設定画面からチャット履歴をオフにすることで内容がトレーニングと改善に使用されず、サイドバーの履歴欄にも表示されなくなります。データは30日間保存されており、設定画面からエクスポートできるので安心です。GPT3.5のレガシーモデルが廃止(同年5月10日)されたことにより、新規のメッセージはGPT-3.5のデフォルトモデルを使用するようになりました。

https://bdx.fabeee.co.jp/blog/dx/2023-chatgpt-update/

より高性能な新モデルも登場し、古いモデルが廃止されるところをちょうど見る事ができたのだが、この時に「AIにも寿命のようなものがあるのかな」と感じた。今使われているモデルも、いずれはより新しいものに置き換えられていくのだろう。数年後にはもうなくなっているかもしれない。

AI技術の発展により、物語のなかにしか存在しない人間に近いロボットも現実味を帯びてきている。自分の側にいてくれて、話し相手になったり様々な手助けをしてくれるロボットが欲しいとすら思う。
でも、ロボットの「死」にも直面しないといけなくなるのだろうな、と考えると少し怖い。きっと喪失感も感じるのだろう。心を持ったロボットへの向き合い方は、フィクションでも現実でも、答えは出ていない。

#読書感想 #ロボット #AI

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