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読書感想「OSO18を追え ”怪物ヒグマ”との闘い560日」 藤本靖
(ヘッダー画像はAIで作成)
かつてニュースで話題になった牛を襲う熊、「OSO18」を追跡するハンターの記録。
僅かな手がかりを集め、罠やカメラを設置し、熊を探す様子が詳細に描かれている。人間たちの対策をことごとくすり抜ける「OSO18」の賢さ、用心深さ、悪運の強さに驚かされる。本書内では「OSO18」は「ビビり」だと表現されている。
ハンター達は執念深く「OSO18」を追い続けるが、事件はあっけない結末を迎える。偶然に発見され、それが「OSO18」だと気付かれないままに駆除、解体処理されてしまった。「OSO18」を追い続けた筆者らと関係のない所で知らないうちに終わっていたというのは、現実の無常さのようなものを感じる。
解体された後、堆肥置き場から骨を掘り出して分析した事や、何故「OSO18」が牛を襲うようになったかの考察、最期は罠にかかって負傷していたのではないかといった考察など、ニュース等で報道されてない部分の情報も載っていて、面白い。
この本では、「OSO18」が肉食になった原因を不法投棄されたエゾジカの肉を食べた事ではないかと考察している。エゾジカの死体が大量に不当投棄されている場所があり、そこが餌場になっていたというのだ。肉食に慣れた「OSO18」は、ある日牛の死体を口にする機会があり、それで牛を狙うようになったのではないかということらしい。
「OSO18」の危険性は人間側の行い(エゾジカの不法な猟や投棄)にも原因がある事や、報道で間違ったイメージが広められてしまう事等の問題点も挙げられている。
ニュースで聞いたことがある程度の熊事件だったが、より深く知ることができる一冊。