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緒方貞子の『共に生きるということ』を読む

書籍の記録

書籍情報
タイトル: 共に生きるということ be humane
著者: 緒方貞子
出版年: 2013年12月
ページ数: 125ページ




要旨

テーマ
本書は、国連難民高等弁務官(UNHCR)を務めた緒方貞子氏の生涯と活動を通じて、「難民支援」や「復興支援」という人道的課題について語られています。



具体的な内容

第1章: 国連難民高等弁務官という仕事につくまで
結論
緒方氏の人生に関わるきっかけは、子ども時代の戦争体験である。博士論文では満州事変をテーマに、政策決定過程について研究。41歳の時に市川房枝氏の誘いで国連総会の日本政府代表団に参加し、それ以降、女性初の国連公使を任されるなど、国際舞台での経験を積む。
根拠

  • ただ空襲で、アメリカ軍が爆撃をしてきたとき、「私の友達のいた国が、どうしてあんなことをするようになったんだろうな・・・・・」などと考えたことはありました。このときに経験したことは、私のその後の人生に深く結びついているのかもしれませんね。(P.11, 12)



第2章: 難民救済という仕事
結論
難民救済に関して色々なやり方があるが、「生きてもらう」ことが人道支援の一番の根幹にある。

根拠

  • 難民高等弁務官という職務をするにあたって、私が一番大切に考えたのは、持っている任務と権限でした。それを壊すことはできない。それに従う。しかし、その従い方にはいろんな工夫が必要でしたから、ずいぶん悩みました。最終的には、やっぱり、命を守るということでしょうね。死んだら何にもなりませんから。(P.68)

  • 「人間らしさに徹底せよ」。humaneというのは「人間らしさ」のことです。(中略)いろいろな迷いや問題が起こる中で、人間が、人間らしさを守ることによって、人間性というものを持っていられるんじゃないかと思うんです。私は、善を持っているのが人間性だと思っています。この世の中には、あまりに多くの不正や悪がありすぎますが。(P.74)



第3章: 復興支援を通して思うこと
結論
開発援助による復興支援というのは出だしが遅い。
根拠

  • 開発援助というのは政府から政府に対して行うからなんですよ。相手政府と取り決めを交わし、それに基づいて政府の持っている公的な資金を供与し、相手政府が中心になって、その国を復興させる。これが開発援助の基本的な仕組みです。(P.81, 82)




学び

本書とのギャップ
人道支援と開発援助によってスピード感が大いに異なることが明確になった。人道支援というのは、緊急なことであり、政治的なものであり、復興の第一歩だということ。そのために、政治的な圧力に対抗するなど、色々なことに俊敏に対応することが必要である。一方で、開発援助というのは、相手政府と取り決めを交わし、それに基づいて政府の持っている公的な資金を供与し、相手政府が中心になって、その国を復興させるためスピードが遅くなるという。
知識の活用方法

  • 国際協力分野でのキャリアを目指す際に、私はどのような形で携わりたいのか。人道支援なのか。それとも開発援助なのか。両者の解像度を上げていく必要があると感じた。いずれにせよ、本書を通じて新たな問いに出会えたことが良かった。

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