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【山崎蒸溜所】日本初の本格ウイスキー製造工場、その魅力とは

※ 2020年7月現在、山崎蒸溜所は一般見学の受付を休止しています。再開時期に関しては決定次第、オフィシャルページ等で発表されるとのことです。また、山崎蒸溜所は見学ツアーおよびショップ等への立ち入りに事前予約が必須です。必ず事前に状況を確認・予約のうえ訪問いただくよう、よろしくお願いいたします。

国内外で最も有名な蒸溜所のひとつ、それがサントリー山崎蒸溜所である。

ウイスキー愛好家なら言わずもがな、普段ウイスキーに触れる機会の少ない方、或いは全く飲まない方でも「サントリーウイスキー」という名はなんとなくご存じなのではないだろうか。

サントリーウイスキーで有名どころといえば「サントリー角瓶」、「サントリーオールド」等。特に角瓶は一般的な酒屋ないしスーパーで定番品のひとつとして常時置かれているし、「角ハイボール」は現在のところ一般的な居酒屋はもちろん、少しおしゃれなワインバル等でもオーダーすることができる。ニッカウヰスキーの「ブラックニッカ」と双璧を成す、日本の大衆向けウイスキーの代表格だ。また、オールドも70~80年代には「ダルマ」の愛称で大いに親しまれ、時代を映すウイスキーのひとつとなった。

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これらウイスキーのブレンド用原酒を製造している生産拠点のひとつが、この「山崎蒸溜所」である。また、現在世界的な人気から入手困難となっている「シングルモルト山崎」は同蒸溜所の名を冠したフラグシップ商品だ。

山崎蒸溜所とジャパニーズウイスキー史

本記事の表題にもある通り、山崎蒸溜所は日本において初の本格モルトウイスキーの製造工場である。

創業(着工)は1923年。サントリーの創業者である鳥井信治郎の指揮のもと、日本のウイスキーの父・竹鶴政孝の知識と技術を注いで、山崎蒸溜所は大阪府・山崎の地に誕生した。

親会社たるサントリー全体を含め、その歴史はまさしく浮沈の連続。第1号ウイスキーの不振、第2次大戦の戦禍を乗り越え、50~70年代の国内のウイスキー需要拡大による一大ブーム、そこから一転して80年代終盤から21世紀初頭にかけてウイスキー不況の苦しみを越え、現在再度のウイスキーブーム(それもジャパニーズウイスキー隆盛)の渦中にある。

特に近年の国内ウイスキー不況脱却については、サントリーが「角ハイボール」を市場に強く売り込んだことが、(他の要因も多分にあるとはいえ)重要なファクターのひとつとなったことは揺るぎない事実だ。

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また、現在でいうところのウイスキーツーリズム、つまりウイスキーないしウイスキー蒸溜所を主軸とした観光旅行に関しても、山崎蒸溜所はパイオニアといえる。というのも山崎蒸溜所はその創業当初より顧客(当初はおそらく販売店や料飲店の担当者が主だった)を蒸溜所に招き、見学してもらうことで直接的にその魅力を伝えようという考えを持っていたからだ。

かつての山崎蒸溜所がどの程度訪問客の見学に特化していたかは不明だが、少なくとも現在の形に改装されて以降の山崎蒸溜所は、見学を行うことを大前提に置いた構造となっており、極めて(非常に)観光的な蒸溜所といえるだろう。

尚、ジャパニーズウイスキー元年とされているのは1923年。まさに日本のウイスキーの歴史は山崎蒸溜所の創業を起点にして始まっているわけである。そんな意味でも、山崎蒸溜所と日本のウイスキーの歴史(の浮沈)は切っても切れない関係にあると言えるのではないだろうか。

初心者に超オススメの見学コース

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先に挙げたように、山崎蒸溜所は訪問客の見学を前提とした造りをしており、訪問客を積極的に受け入れる態勢を整えている。見学ツアーについては隅々まで気の利いたものとなっており(それは単純に工場設備のレイアウトのみならず、見学ツアーの構成・ガイドの説明等、ホスピタリティの面も含めて)、他の蒸溜所はおろか他の食品工場のツアーと比較しても非常に完成度が高い。

特に見学の順路に関してはモルトウイスキーの製造工程順に沿ったものとなっており(意外と「そうじゃない」蒸溜所は他に多い)、加えて製造エリアの前に予めウイスキーの製法概略を丁寧に説明してくれるので、とても理解しやすくなっている。また、ポットスチルや熟成庫の樽など、比較的近距離で見られる部分(樽に至っては実物に触れることもできる!)も多く、臨場感も抜群だ。

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ガイドに関しても製造方法におけるポイントの説明は勿論のこと、ブランディングや余談も含め、かなり充実したものとなっている。説明も過不足なく、興味を引くような工夫が随所になされており、飽きない。

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熟成庫を出、ウイスキーに対する興味とテンションが最高潮に達したところで、満を持してウイスキーの試飲が待っている(この一連の流れは見事だ!)。試飲では蒸溜所でのみ楽しめるシングルモルトの構成原酒2種と、製品(通常の1000円のツアーではシングルモルト山崎)を1杯、さらにハイボール用に製品をもう1杯(しかも増量して!)提供してもらえる。勿論、香りや味わい、そして製品に関する親切な説明とともに、だ。また、同時にスナックやチョコレートといったおつまみ類も供され、ハイボール用のソーダとして「サントリープレミアムソーダ」が配られる。まさに至れり尽くせりである。

試飲が終わってツアー解散となる頃には、すっかり山崎ファンに仕立て上げられてしまう。ツアーの締め括りとしてはもとより、製品のブランディングとしても非常に完成された試飲タイムといえる。

以上、大変行き届いた大満足のツアー構成であり、たとえ初心者でウイスキーの心得が無くとも、十分に楽しめるだろうし、ウイスキーや蒸溜所への理解も大いに深まると思う。是非オススメだ。そして勿論、既にウイスキーファンという方にも1000円で(しかも原酒を)存分に堪能できるという点で、間違いなくオススメのツアーである。

まだまだある、山崎蒸溜所の魅力

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山崎蒸溜所では先述の通り、訪問客に対するホスピタリティに重きが置かれ、非常に充実したツアーを体験することができるが、それ以外にも多くの見どころ、楽しみどころがある。例えば有料の試飲カウンターではサントリーの市販品・および蒸溜所限定商品が(希少な物も含め)手頃な価格で楽しめる。また、木製発酵槽やポットスチルを加工したオブジェや、サントリーおよび山崎の歴史を知ることができる展示物など、ビジュアル面も多くの工夫が凝らされ、飽きさせない造りとなっており、隅から隅まで楽しむことが可能だ。

さいごに

説明ばかり長々と書いてきたが、山崎蒸溜所の魅力は、まだまだここでは語り尽くせないほどある。しかし百聞は一見に如かず、残りの魅力は是非現地にて、ご自身の目で体験し、確かめて頂きたい。

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