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◎仏教由来の道教儀式?◎香港映画『ラスト・ダンス』を知っていこう

先月開催された香港映画祭Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinemaにて、香港映画「ラスト・ダンス」を見てきました。

ラスト・ダンス詳細
原題:破・地獄/THE LAST DANCE/2024年/広東語/127分
▶ 監督:アンセルム・チャン(陳茂賢)
▶ 出演:ダヨ・ウォン(黄子華)、マイケル・ホイ(許冠文)、ミシェル・ワイ(衛詩雅)、チュー・パクホン(朱栢康)

疫病が猛威をふるい経済が低迷するなか、葬儀社に転職したダオシェン(ダヨ・ウォン)。当初は先輩のマン(マイケル・ホイ)と衝突するダオシェンだったが、彼と仕事をするうちに人生観に変化が生まれていく。ダヨ・ウォンとマイケル・ホイ、香港映画界の二大コメディアンが『マジック・タッチ』(1992)以来32年ぶりに共演とあって、撮影時から大きな話題となっている注目作。「破地獄」とは、故人の霊を地獄から救い出すための道教の儀式を意味している。

https://makingwaves.oaff.jp/info.html

 TIFF2024の上映作品でも感じましたが、コロナ後の社会を描いた作品が続々と製作されるようになってきましたね。
 映画祭のQ&Aにて、監督が男尊女卑的な道教の考え方に対するアンチテーゼでもあると語っていましたが、その精神を強く感じるストーリーでした。 
 香港でも絶賛公開中で、24年11月26日現在で興行収入9千5百万HKドル(約19億円)を突破しているそう。
ちなみに、23年に香港の歴代興行収入1位を記録した大ヒット映画『毒舌弁護人~正義への戦い~』の最終興行収入は1.21億HKドル(約22億円)。
実は『毒舌弁護士~』の主演も本作と同じダヨ・ウォン氏。
去年行われた同作の単独インタビューでは自身について「過去に香港映画界の興収の“毒薬(絶対にヒットしない俳優)”と言われた男」と自嘲気味でしたが、この調子だとウォン氏主演作が2年連続で興収1位も夢じゃないような…

本作の知ってこうポイント:破地獄の起源と二次葬(複葬)

●儀式の起源『目連救母』
 道教の葬式で行われる儀式「破地獄」。死者があの世で苦しまぬように、地獄の門を道士が破壊する舞いを行います。多くは広東正一派の道士が行う儀式で、起源はなんと仏伝故事の『目連救母』。
 道教の儀式の起源が仏教から?とも思いますが、仏教伝来以降、道教にもその教えが影響され、似た故事が多く存在するそうです。
 仏教では、目連が餓鬼地獄にいる母が成仏できるように、修行僧へ善行を行い母を救済します。一方道教は、目連が地獄へ赴き、釈迦から借りた錫杖で地獄の門を破壊する話に。このエピソードが儀式の下地となっています。
 余談ですが、道士の中には女性もいるのだとか。破地獄儀式を行う場合、月経期間中は避け、儀式前に斎戒沐浴(身を清めるための水浴び)を行った上で式に臨むようですね。
 
●二次葬(複葬)
 映画冒頭、先代の葬儀屋が墓から土葬遺体を取り出し、遺骨を洗って再度埋葬するシーンがあります。これは二次葬(または複葬)と呼ばれる葬俗。
 沖縄でも同様の風習「洗骨葬」があり、ガレッジセールのゴリが照屋年之名義で監督した映画『洗骨』の題材にもなっています。
 土葬が主流だった時代、特に南方では湿度と虫による棺の腐敗から守るために、一定期間後に行われていたそうです。 
 この他いろいろ探りたい要素がたくさんありますが、今回はここまで。
それではまた次回。

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