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最後の加えた15行で結末を変える

言論の自由が無くなりつつある社会を一人の作家の収容生活を通して語った「日没」桐野夏生さんの作品です。
主人公は作家「マッツ」は、書いている作品のために療養所で更生されることになります。

全然明るい気持ちになれない、この小説を勧められて読みました。
主人公と同じ、不条理な気持ちを抱えながら、主人公は療養所(収容所)から、私はこの小説から離れられず、一気に読んでしまいました。

やだな~と思いながらページをめくるのが止められない。(そういう声多数)
著者の桐野さんの力量を感じました。

著者は「日没」へのインタビューで、最終校了直前に最後の15行を追加したというエピソードを語っています.その15行が結末を救いのないものにしているという凄まじさです.
どこまでも、主人公を悲惨な目にあわせ、何も救わず、それが世間とでも言いたいのか...


どんなストーリーも結末で印象が変わります.
15行で読者のわずかな希望をさらに、粉々に踏みにじる.

結末を考えないで長文の小説を書き進むということは、作者の宇宙には数えきれないほどのアイデアがあり、ちょっと取り入れては捨て、気に入らなければ外し、選りすぐりのものだけを織り込んでいくのでしょう。
作家は小説宇宙の中では読者の気持ちを左右できる、神のような存在に思えてきます。

読了後、落ち込んで、暗い気持ちになった読者は、幸いなことにまた別の小説宇宙にワープできるのです。
あるいは、自分でさらに15行追加して、結末を変えてみようかな?

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