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言葉の記憶を超えているもの

脳のダメージで記憶力が低下することは健忘と言います。
ものを覚える力が低下したり、全くなくなってしまうこともあります。
でもね、モノ、人、場所の名前って大したモノではないと最近思うようになりました。

旅行に行った場所は忘れても感動は残っている

A氏は元気で手も足も麻痺はありません、ところが新しいことは覚えられないのです。
もうこの状態になって10年くらい経ちます。
A氏の妻さんは、少しでも良くなって欲しいと計算、塗り絵など色々試してみました。同じような方達の集いに参加したり、散歩したり。
ご家族も協力的に映画を見に行ったり、一緒に旅行したり。
A氏は体を動かすことが大好き。受傷前の趣味は水泳だったそうです。

先日、旅行に行ってその時は大層楽しんだようです。
ご夫婦の笑顔の写真も見せていただきました。
15日後の受診の時は「楽しかった、最高だ、美味しかった」と満足そうにお話してくれます。
その次の受診時には旅行のことを訊ねると
妻さんに「どこか行ったっけ?」と不思議そうに聞き返しています。
妻さんが「○○に行って楽しかったでしょう」とアドバイスすると
再び笑顔になり、「楽しかった、最高だ、美味しかった」と繰り返して、「旅行は大好き、また行きたいな~」とA氏は屈託なく言います。

妻さんは「ほんとに~すぐ忘れちゃうんだから。でも動けるうちにたくさん一緒に行こうね」と苦笑しています。
そして、最近二人で出かけた○○はとても楽しかった、と続けるのです。

妻さんとお出かけが楽しい、幸せだったという感情、気持ちは場所とかアトラクションの名前よりも大切なのです。
場所を忘れて、どこかに行ったことを覚えていなくても二人で幸せの時間を過ごした記憶は残っている。

感情はモノの名前より強い。

幸せの記憶は残る。

ドリルや脳トレより、一緒に行動することが幸せの時間をつくります。
A氏ご夫妻にさらなる幸あれ。

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