草が生え苔むし、傾斜が悪く滝のように漏れる雨樋をDIYで補修してみる
築古物件にありがちな傾斜が悪く途中に土が溜まり、草が生え、苔むしてしまった、滝のように漏れる雨樋。1階部分や平屋であれば、DIYでの補修も可能である。何度か補修しているが、今回は既存の雨樋をすべて外し、架け替えたので、そのプロセスを紹介する。なお、デザイン性より、価格を重視している。かかった金額は3万円ほど。
なお、雨樋架け替え工事は
・樋の勾配が不良になっている
・劣化が著しい
・金具がなくなってしまっている
など、軽微な補修では解決にならない場合に行う。
安全はすべてに優先する
雨樋の補修は屋根の高さでの作業が非常に多い。平屋の場合で2.5m 前後、2階建ての場合で5m 前後で作業することになる。1階の高さでも転落すると死亡する場合もあるため、転落には細心の注意をして作業する。
最も安全なやり方では足場を設置した上で、ヘルメット、屋根用の靴、動きやすい服装、安全ゴーグル、軍手、プロテクターなどを装着し、万一踏み外しても落下しないように安全帯やハーネスをつけて作業することが望ましい。
とはいえ、経費を抑えたDIYで足場を組むようなリソースはないので、作業は脚立を使った。墜落への備えはヘルメット(頭部を衝撃から保護)、安全ゴーグル(目の保護)、地下足袋(滑落防止)、バイク用の脊椎プロテクター(背部保護)を装着した。作業の際は、脚立は最大まで開き、開き止め金具をしっかりつけ、安定した地面に設置(脚立の転倒防止)、梯子として使用の場合は設置角度を守り、安定した場所に設置(梯子の転倒防止)、重心に注意して(転倒防止)、移動は三点支持(四肢の1本ずつを動かす)でゆっくりと(引っかかったり躓くと危ない)、大きな力の加わる動作を極力しない(反動や、無理な姿勢で重心が崩れ倒れる)ように気を付けた。
事故を起こすとお金を払っても健康は返ってこないので、最低限この程度の安全対策は必要だ。危険な作業は業者に発注するようにするほうが望ましい。もしけがをされてしまっても当ノートは責任を取れないので、くれぐれもご安全に。
1.計画
今回チャレンジした建物は平屋である。高さが低く、すべての樋に脚立でアクセスできるため、大規模に架け替えられると判断した。
まず屋根の上下や傾斜方向、雨樋の最上部(始点)から最下部(終点・排水場所)までの流路を計画する。現在の排水経路の活かせる部分は活かしつつ、状況に応じて経路変更を検討する。
屋根の形状は①のような状況である。既存の雨樋は図②のように組まれているが、いたるところで、破損したり、勾配不良で漏れて直接地面に滝のごとく水が落ちている。水が漏れていた場所では落ちた水が建物の外壁に跳ね返っており、長年そうなっていた影響か、水が落ちる場所に近接して基礎のコンクリートに破損が見られたり、木材に腐食が見られたりした。なるべく少ない材料で効率よく雨水を排出するために、どこからどこへ流すかを考える・・・。
考えた結果、図③のようにもともと4箇所あった排水ポイントを、1箇所削って3箇所にまとめる。右上の経路の勾配方向を当初と逆に取り、縦樋③に合流させる。縦樋①についても、経路を変更する。新しい流れの計画が決まったら採寸して必要なパーツを計算し、ホームセンターで購入する。
2.必要な道具・装備
機材:脚立、水平器、水糸、インパクトドライバーまたは1.5kg程度のハンマー(金物によって変わる)、電動のこぎりまたはのこぎり(樹脂用の刃と金属用の刃を用意。既設雨樋の解体や新設雨樋のカットに使用)
装備:作業着、ヘルメット、ゴーグル、胸部・背部プロテクター、足袋、手袋
3.必要なパーツ(塩ビの樋、集水ます、エルボ等)
雨樋の部材は主に図④ようなパーツを揃えればひと通りの経路が組める。トヨ雨樋のカタログに詳しい説明があった。メーカーはパナソニック、積水(エスロン)、トヨの3社が有名どころのようだが、トヨ雨樋が一番安く、次が積水、その次がパナソニックといった具合。なお私はカインズで調達したが、パナソニックはトヨの1.5倍ぐらいであった。3社の樋は規格になっていて互換性はある。幅の広さが100、105など数種類あり、縦樋の径も数種類あるので、一部だけやりかえる場合はサイズを慎重に選ぶ。
パーツ同士は専用の接着剤で接着する。雨樋売り場に置いてある。この接着剤はプラモデルで使うような樹脂を溶かして接着するタイプで強力だ。接着面にぐるりとたっぷり塗りたくって、ねじ込んだりはめたりすると、かなりしっかりとくっつく。
4.必要な金物
雨樋のパーツを壁や軒に留める金物は主に図⑥のような種類がある。凝った塗装などしていない銀色の金物であればひとつ130円ぐらいである。ネットで分かりやすいPDFファイルがあったのでリンクしておく。
大きく分けるとビス止めの金物とハンマーで打ち着ける金物とに別れる。波板などが貼られている庇には桟木にビス留めするしかないため、ビス止めタイプしか選択できない。
破風板に樋受けを固定するために、打ち込みはパワーが要るため、楽なビス止めの金物を買ってきたら瓦の張り出し部に届かなかった。雨樋が軒の内側にあっては、雨は樋を流れない。仕方ないので買ってしまった分は防腐処理した木材を噛ませて軒の外に張り出せるように調整。追加で購入する際は、ハンマー打ち込みの樋受けに変更した。
5.工事のコツ(方向)
樹脂パーツの組み合わせる際、例えばエルボでは上流と下流がある。
流れを示す矢印が刻印されているので向きを間違えないように接着する。逆にすると継ぎ目で漏れる可能性がある。
6.工事のコツ(勾配)
雨樋を設置する際は勾配がしっかり取れていないと水が流れ切らず、滞留したりする。間に泥が溜まったり、思いもしない場所から滝のように途中であふれてしまい、外壁や基礎にダメージをもたらす。初めて雨樋を設置した時はこの勾配が均等になるように金物を設置していくことに大変難しさを感じた。微妙にずれてしまい、樋を固定したタイミングで凸凹になっていることが判明するのだ・・・。
何度か施工して水糸をうまく使うことで確実に勾配を取ることができることに気づいた。
図⑧のように最上流と最下流を場所に金物を先に取り付け、そこに水糸をピンと張り、その水糸に沿って残りの金物を打ち付けていくことで、ほぼ均等に勾配を取ることができた。こんな当たり前のことになぜもっと早く気付かなかったのか・・・。我ながら正確で早かった。
おわりに
いかがだっただろうか。このような形で既存の雨樋や金物を取り外した上で新しく金物や雨樋を取り付けていくことで、不具合のあった雨樋をリニューアルすることができた。取り付け後にテストで水を流しても問題なく、実際に雨が降っても、滝のように水が漏れて建物にしぶきがかかることもなくなり、雨の日が大変静かになって一安心である。晴天続きの冬の終わりかけの日、雨が増える春夏を前にして、正味2日程度で無事施工を終えることができた。
あまりよい写真や動画がないため図での紹介となってしまったが、DIYチャレンジャーの参考となれば幸いである。
(完)
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