不動産売買登記を自分でやってみよう(DIY)
自分にその不動産の所有権があることは、実際に契約するだけでなく、その後速やかに登記を行うことで、登記簿の権利部に自分の名前が記され、その不動産が自分のものである(自分にその不動産の所有権がある)ことを証明できる。
新たに所有権を得た不動産の登記は
・当事者(前の所有者+新しい所有者) または
・当事者を代理して行う場合は司法書士
が行うことになっている。
司法書士以外の第三者が代理で登記を行うことは違法であるが、当事者が登記をすることは違法でもなんでもないので、機会があったらチャレンジしてみてもよいと思う。
なお、不動産の所有権が変わる(所有権移転という)タイミングは、不動産を買う、不動産を故人から相続する、競売で落札するなどがあるが、今回、公簿売買(測量や土地家屋調査なし)による所有権移転登記の体験記を書いてみる。
当事者による登記は買主(権利者)と売主(義務者)が一緒に法務局に申請することになっているが、
・売主の委任状を回収する
・委任状、契約書、その他添付書類に売主に実印を捺印してもらう+印鑑証明を出してもらう
を満たせば、買主だけで登記申請を行える。
また、申請の方法もいくつか種類がある。
①書面申請 窓口提出
②書面申請 郵送提出
③QRコード申請(書面申請の一種)
④オンライン申請
今回は、①、②を書く。
Step1 不動産業者と相談
不動産業者に自分で登記してもよいか、買付後に契約することが確定となったら確認する。不動産業者と売主が了解すれば自己登記で進められる。私の場合は不動産業者が売主に説明して進めてくた。売主や不動産業者が司法書士を指定する場合もあり、その場合はその希望に従うしかない。
Step2 書類作成の事前準備
不動産業者を通じて、登記簿謄本(登記ネットからの印刷PDFでもよい)、(固定資産税)評価証明書を、コピーやスキャンでよいので入手する。Step3の登記申請書、登記原因証明情報、委任状の作成のときに内容を参照しながら作成するため。
Step3 書類の作成や入手
①登記申請書
不動産登記の申請書様式について(法務局)
上記ページの 4)所有権移転登記申請書 (売買)の記載例のようにWordなどで作成する。
■注意点■
・権利者(買主)の住所氏名は、住民票記載の通り正確に記載する
・義務者(売主)の住所氏名は、登記簿謄本の通り正確に記載する
・登記識別情報を紙で受け取りたい場合は下記のように書いておく
登記識別情報通知希望の有無: 送付の方法による交付を希望する
・課税価格は評価証明書から1000円未満は切り捨てて転記する
・土地の登録免許税については、土地の売買はR5/3/31までは1.5%なので、課税価格×0.015の金額を記載。また、税額の横に(租税特別措置法72条)と記載しておく。
・建物の登録免許税について土地以外の不動産の売買は2%なので、課税価格×0.02を記載。
※建物の性能によって軽減税率が適用されたりするので、税率については自分で調査する。→ 登録免許税税額表(国税庁)
・登録免許税を合計する際は、合計結果から100円未満を切り捨てる。
・不動産の表示に、評価額を記載しておくと、登記官が見やすい。
・売主が法人の場合は、法人番号、代表者名を記載する。
・複数枚を綴じる場合は、契印を押印する。
②収入印紙貼付台紙と収入印紙
登録免許税は収入印紙で納める。法務局の見本に添付されている用紙のほか、ただの白い紙や収入印紙貼付台紙と記載した紙でもよい。登記申請書にスペースがあるなら、余白に収入印紙を貼付しても受理された。
収入印紙を事前に購入する場合は郵便局(ゆうゆう窓口含む)で購入できる。法務局の窓口に提出する場合は、法務局にも収入印紙売り場があるので、当日の購入も可能。
登録免許税の収入印紙は割印をしない。
③登記原因証明情報
不動産登記の申請書様式について(法務局)
上記ページの 4)所有権移転登記申請書 (売買)の記載例のようにWordなどで作成する。
登記申請書と同様、住所等は正確に記載する。この書式は見本と同じでよい。
④委任状
不動産登記の申請書様式について(法務局)
上記ページの 4)所有権移転登記申請書 (売買)の記載例のようにWordなどで作成する。
登記申請書と同様、住所等は正確に記載する。この書式は見本と同じでよい。
⑤買主の住民票
私はマイナンバーカードを使って、コンビニで印刷している。
⑥返信用封筒
登記完了証と登記識別情報を郵送で受け取る場合は、切手を貼って宛先を書いた返信用封筒を用意すれば送付してもらえる。法務局は本人限定郵便の書留指定なので、その料金分の切手を用意する。
・大きさは角2
・切手は660円~680円(50g以内は660円、100g以内は680円)
・切手を貼付せずに660円+20円のように同封すれば、必要な分だけ貼って返してもらえる可能性もある
・宛名を書いておくこと
Step4 決済の前に売主に用意してもらうもの
⑦(固定資産税)評価証明書
取引直近に入手してもらったものを提出してもらう。コピーでもよい。
⑧売主の実印
③登記原因証明情報、④委任状 に、売主が実印を捺印する欄があるので、決済の際に捺印してもらう。なお、契約書は実印でなくてもよい。また、買主も実印でなくてよい。
⑨売主の実印の印鑑証明書
捺印が間違いなく実印であることを証明するために必要。必ず原本を入手。
⑩登記識別情報
不動産の持ち主にだけ渡されるパスワードのような情報。登記識別情報自体は英数字の羅列で、書面で渡されていることが多く、肝心の登記識別情報の部分は袋とじになっている。
Step5 決済日
決済日、不動産の代金の全額を支払い、鍵をもらう、引き渡し日。
①登記申請書
②収入印紙貼付台紙と収入印紙
登記申請書内容を売主と読み合わせ、登記の内容が売主が売却する不動産であることを確認する。
③登記原因証明情報
記載内容を売主と読み合わせ、売買取引の内容が間違いないことを確認する。売主の実印を捺印してもらう。
④委任状
記載内容を売主と読み合わせ、委任する内容が間違いないことを確認する。売主の実印を捺印してもらう。
⑦(固定資産税)評価証明書
(固定資産税)評価証明書を受け取る。
⑨売主の実印の印鑑証明書(原本)
売主の実印の印鑑証明書の原本を受け取る。③登記原因証明情報、④委任状に捺印してもらった実印の印影と重ねてパラパラめくり、印影が証明書と違っていないか、照合する。
⑩登記識別情報
登記識別情報の通知用紙を受け取る。コピーを受け取る場合には、登記識別情報が見えないようになっている袋とじの部分を開いて、登記識別情報が読める状態にしてコピーされたものを受け取る。
Step6 いよいよ登記申請
登記申請はなるべく早く実施する。法務局は平日しか営業していないが、最短の営業日に行う。(なお、登記に法的な義務はない。司法書士いわく通常はありえないことだが二十売買などが行われている場合は、先に登記を得たものが所有権を持つことになるため、迅速に行ったほうが良い。)
持ち物
①登記申請書
②収入印紙貼付台紙と収入印紙
③登記原因証明情報
④委任状
⑤買主の住民票
⑥返信用封筒
⑦(固定資産税)評価証明書
⑨売主の実印の印鑑証明書(原本)
⑩登記識別情報
用意した上記の書類一式を、不動産を管轄する法務局の窓口に提出するか、法務局に郵送する。
窓口提出
コロナウイルスが流行する前は、登記相談窓口を予約しておくと、提出前に書面の内容をチェックしてもらえたりするメリットがあった(相談窓口閉鎖の場合、予約が必要だが電話での相談サービスがある)。また、登記申請書のコピーに、受領印を押してもらって、受理証明を出してもらうことができる。法務局に確実に提出できる安心感があるが、反面、平日に法務局を訪問しなければならないという時間、場所の制約が発生する。
郵送提出
郵便が届いた日を申請日として処理してくれる。書類一式をレターパックや「不動産登記申請書在中」と記載した封筒に入れて法務局に送付する。
郵便で追跡番号が取れる方法であればよいとのこと。レターパック青、レターパック赤、簡易書留、特定記録など、どれでもよいようなので、安かったり楽なものを選ぶとよい。
ちなみに私の最近のトレンドは、登記申請書と委任状を法務局のソフトで作ってQR申請書を印刷し、郵送で提出することが多い。法務局に行くためには平日休みを取る必要があり、現地に行く時間も必要だが、郵送なら時間の節約になるからである。
Step7 登記が完了すると
本来Step7は不備があった際の修正という項目になると思うが、私は執筆時点で4回経験したが修正になったことがないので書けない。
登記は法務局が申請を受理してから、法務局の申請混雑状況にもよるが、翌々日ぐらいに完了するようだ。完了後、本人限定郵便で発送され、ポストに本人限定郵便到着のお知らせという封書が郵便局から投函される。Webか電話FAXで受け取り日時を指定し、身分証明書等を提示して受け取る。
月曜日に法務局が申請受理すると、水曜日に登記が完了し、金曜日に本人限定郵便到着のお知らせが届き、土曜日以降配達を頼めるといった具合である。
登記完了証と登記識別情報通知を受領して、無事登記完了である。
まとめ
やることが多いので複雑そうではあるが、法務局が指定する書式の通りに申請書を作成し、添付書類を準備すれば、登記そのものは問題なくできる。心配な方は司法書士に任せれば安心だが、自分でできるということは知っておいてもよいだろう。
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