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インド旅行記 コツを押さえれば女ひとりでも行けます

インド旅行と聞くと何かしらトラブルがあるはずだ決めてかかる人も多いようだが、そんなことはない。
わたしは5日間、デリー、ジャイプール、アグラのゴールデントライアングルを女ひとりで旅行した。特に大きなトラブルも体調不良もなく、インドを満喫することができた。とても満足している。

とはいえ、完全なノーガードで何も考えずインドに突っ込むのは危険だ。というか普通に入国できない恐れすらある。

旅行とはリスクと戯れる遊びだ、という言葉が好きだ。
リスクを完全に消し去ることはできない。これは旅行に限らない。生きている限り人間は常に何かしらのリスクにさらされているものだ。それを軽減したり、受容したり、回避したり、移転しながら生きているだけだ。

旅行にも同じことが言える。旅行は非日常だ。非日常は日常よりリスクが高いが、それも軽減したり受容したり、「どのくらいのリスクであれば自分は取れるか、どのリスクは絶対に避けなければならないのか」を考えながら非日常をたゆたうだけだ。

女ひとり旅はリスクが高いと言われる。
そしてインド旅行もリスクが高いと言われる。
女ひとりでインドに行きたいけど、危ない?と気にしている人がいたら、「それなりに対策していけば問題ない」と伝えたい。

対策① 日本の大手旅行会社のツアーでインドに行く

これが一番大切だと思う。
HISでもJTBでもクラブツーリズムでもいいから、それなりに名が知れていて、インドツアーを頻繁に催行しているような旅行会社がいい。
そういう会社はインド支社を持っていて、現地の事情に詳しいし、日本語を流暢に話すインド人ガイドも多く抱えている。

なぜ日本の旅行会社のツアーをおすすめするかというと、理由はふたつ。

①インドは初心者がひとりで巡るのが難しいので、インド人ガイド必須

何かしらの形でインド人ガイドを雇う必要がある。
インド大好きインドマスターみたいな人はガイドを雇う必要はないが、「インドって女ひとりで行ける?やっぱり危ない?やめたほうがいい?」を危惧しているレベルの人が単身インドに行くのであれば、現地ガイドがいないと絶対に行きたいところに無事に行けない。迷子になる、公共交通機関がなんかよくわからないけど運行していないっぽい、オートリクシャー(インドのタクシー)でぼったくられたり知らない場所に連れて行かれる、などいくらでもトラブルが思い浮かぶ。

②インド旅行で多いトラブルは現地の旅行会社関連のトラブル

現地ガイドをつけなければ旅行が危ういと話したが、さらに厄介なことにインド旅行でありがちなトラブルは現地の旅行会社や現地で雇ったガイドとのトラブルだ。旅行会社にお金を払ったのに当日ガイドが来ない、行きたい観光地に連れて行ってもらえない、頼んでいないお店に連れて行かれて押し売りを受ける、などのトラブルがある。

つまり、インド旅行では現地に精通するインド人ガイドを雇う必要があるが、残念ながら現地でインド人ガイドを雇うとトラブルが多い、ということだ。

したがって、安全にインド人ガイドを雇うならば、日本の大手旅行会社がインド支社に抱えるインド人ガイドを、日本の大手旅行会社経由で雇ったほうがいい。ガイドを雇うと言うと大袈裟だが、要は「大手旅行会社の、現地ガイド付きツアーに申し込む」ということだ。

ちなみに、わたしはHISのインド人ガイド付きツアーでインド旅行へ行った。普段日本人の相手をしているだけあって、日本語も流暢であるし、日本人の内なる高すぎる要求にも応える大変気の利くガイドさんだった。トラブルといえそうなトラブルは、インド映画でRRR派のわたしと、バーフバリ派の彼でちょっとした口喧嘩になったくらいである。

そのガイドさん曰く、ツアー参加者は帰国後にガイドについてのアンケートに回答する。ここで低評価を受けたガイドは次の仕事が紹介してもらえなくなるとのことだ。逆に高評価を受けるとバンバン仕事がもらえる。

インドは、中国の人口を抜き爆増する人口に働き口の数が追いついていない。大卒でありながら職に就けない若者などたくさんいる。彼らも生活がかかっているので、ツアー参加者に満足してもらって高評価をもらい、旅行会社から仕事をたくさんもらってお金を稼ぐために、全力で旅行者をおもてなしする。
なんか大手旅行会社の回し者みたいになってしまったが、こういった理由で大手旅行会社のガイドの質は高いことが多い。わたしがいちばん好きなのはHISです。安いから。

対策②露出の多い服装をしない

「男による性犯罪を避けるために女が好きな服装を我慢するのはおかしい」という考え方が日本では主流だが、まあ聞いてほしい。

インド人女性はとても露出の少ない服装をしている。暑い夏場であってもだ。
パンジャミ・ドレスという、サリーよりも実用的なインドやスリランカなどの国の伝統衣装がある。街中ではこれを着ている女性がとても多い。どんな服装なのかというと、長袖のワンピース、長ズボン、スカーフのセットだ。

つまるところ露出の多い格好の女がその辺を歩いていると、とっっっても目立ってしまうのである。なぜなら誰も露出の多い格好をしていないから。

外国人旅行者が悪目立ちするのは百害あって一利なしである。性犯罪だけではない。どこにいても「あ、あそこに外国人旅行者がいる」とバレてしまうので、スリや外国人旅行者を騙す詐欺師にも見つかりやすい。

インド女性のように夏でもほぼ完全に露出を控える必要はないが、ノースリーブにショートパンツなどの露出だらけの服装は控えたほうがよいと思う。

あと単純に街中が日本より汚いので露出したら体が汚れる。衛生的にも何らかの布で体を覆っておいたほうが良いと思う。わたしはサンダルを履いていたが、1日歩くと足の甲が謎の埃で黒く汚れた。

ちなみにわたしは、インド初日は半袖だったが、翌日からは長袖ブラウスを着てストールで頭を追おう格好に落ち着いた。直射日光がとんでもなく強いからだ。すると、そういえば現地のインド人女性のパンジャビ・ドレスも、長袖にスカーフという格好であることに気づいた。その土地ではその土地の、理にかなった服装が人々の伝統装束となるのだとやけに感動した。

対策③デラックスホテルに泊まる

デラックスホテルの厳密な定義はない。五つ星か、四つ星か、もしくは三つ星ホテルの中でも上等なホテルか、という感じだ。

インドの建物は日本の建物のようにきれいではない。ホテルも同様だ。インドのデラックスホテルでようやく日本のスタンダードホテルと同程度か、ちょっと届かないくらいの質である。

特に厄介なのがインドではお湯が出ないことが多いことだ。機器の不調でお湯が出ないのではなく、そもそもお湯を出す仕組みがない、給湯器がない、ということだ。スタンダードホテルや、場合によってはスーペリアクラスのホテルでは、シャワーは水しか出ないということがある。夏場はまだよいかも知れないが、寒い冬のインドで冷水しか浴びることができないと普通に風邪をひくと思う。風邪を引いたら基本的に旅行はゲームオーバーである。

デラックスホテルともなると、まあお湯くらいは出る。少なくとも給湯器がないなんてことはありえない。出ないとしても、ベルボーイに「お湯が出ないんだけど?」と言ったら、お湯が出る別の部屋に通してもらえる。

あとトイレ。インドのトイレは基本的に汚いし、文化的な違いによりトイレットペーパーが備え付けられていない。インド人は排泄後の尻を不浄の左手で拭くというのは有名な話だ。
外国人が多く宿泊するデラックスホテルでは、多くの場合トイレットペーパーが準備されている。

ホテルのクラスはデラックスホテルか、百歩譲ってもスーペリアホテルをおすすめする。デラックスクラスの五つ星ホテルとて、1泊の料金は日本円にして8,000円程度である。日本人にとってものすごく高くて払えない、という価格ではない。
スタンダードクラスのホテルであると、お湯が出ない、トイレットペーパーないしトイレ流れない、さらに得体の知れない虫などが出たりするのでまったくお勧めできない。

対策④買い物は予算を決めて、オーバーするなら迷わず断る

インドは観光客を相手にしたぼったくりが多い。
インドは日本人のわたしから見て、手足を動かして働く層の賃金が不当に思えるほどに低い国なので、インド人価格の1.5倍程度をふっかけられたのならまあそれくらいならいいかと払うことにしている。が、インド人価格の3倍4倍でモノを売りつけようとしてくる場合はさすがに買わない。 

これはぼったくられない方法というよりも、買ってあとで後悔しない方法だ。
何かを買うときに、「◯ルピーまでだったら買う。それより高いなら買わない」と決めて買い物に臨むのだ。
この◯ルピーが正当な価格なのであれば、当初はふっかけてきたインド人も最終的にはこの値段で売ってくれる。ぼったくれなくても、売れないよりかはマシだからだ。逆に、◯ルピーが不当に安ければ、インド人も「じゃあ買ってもらわなくて結構」となるだろう。商売あがったりだからだ。

個人的に、ぼったくられないことを目指すのは難しい。これはインドに限らない話だ。我々は目の前にあるそれの価値を正確に測ることができないからだ。しかし、「これを、いくらなら買う」という主観的な判断ならできる。それがぼったくりだとしても、買える値段で買いたいものを買えたらいいのではないか。

対策⑤チップは多めに渡す

特にガイドさんには多めに渡すとよい。明らかに待遇が変わる。

チップの習慣は日本にはない。日本人には馴染みの薄い習慣だ。
インドもかつてはチップの習慣がなかったようだが、外国人が増えてからはチップの文化が浸透してきたようだ。

ガイドに渡すチップの相場は、1日あたり200-300ルピーと言われる。日本円にして400-500円程度だ。
この程度のお金で1日好意的に世話を焼いてもらえるのだから、払って損はないのではないかと思う。わたしは1日500ルピーのチップを渡した。日本円の強さを存分に活かすときだ。

チップを多めに渡すと何がいいって、困ったときに全力で助けてくれるようになることだ。インドで困るときはマジで困っている。本当に困っていることが多い。現地人に助けてもらわないとどうにもならない。
保険としてチップは多めに渡そう。

対策⑥お腹を壊さない

インドに行くと下痢になることで有名である。
が、こればかりは自分で対策するしかない。
対策は別の記事に詳しく書いたので、興味があれば読んでください。

勝負はインド入国前から始まっている。ビオフェルミンなど整腸剤を使って腸内環境を整えてからインドに入国しよう。日本でも調子の悪い胃腸がインドで無事でいられるはずがない。

次に、カレーをたくさん食べないようにすること。
インドといえばカレーだが、本場のインドカレーには我々日本人に馴染みのないスパイスや油がたくさん入っており、これらが胃腸を刺激する。
ここでデラックスホテルが効いてくるのだが、デラックスホテルには大体ビュッフェがついており、インド料理以外の、ヨーロッパ料理などがたくさん置いてある。スパイスの刺激が強いインド料理を毎食食べない、というのも大切である。

あと、これはインドに限らず言えることだが、火の通っていない野菜、フルーツは食べないほうが良い。ホテルのビュッフェのフルーツジュースも避けたほうが無難。
屋台の食べ物飲み物は絶対に口にしてはいけない。

対策しても下痢になってしまったときに備えて、常に夜用ナプキンをショーツにつけておくのもよいと思う。
水下痢は臭いがほぼないし、生理用ナプキン自体にも消臭効果がある。
夜用ナプキンをつけていることで、「急に水下痢に襲われたとしても、服を汚さずに済む」という安心感自体が腸に良い影響をもたらす。腸はストレスに弱い。

最後に インドに行くか迷う理由が不安なら行くべき

ということで、コツさえ押さえればインドは女ひとりでも安全に旅行できる国だと思う。
「女ひとりで行って大丈夫?危ない?」という不安のせいで、行きたいインドに行けないというのはとてももったいないことだ。
冒頭で話した通り、旅行とはリスクと戯れる遊びでしかない。
「女ひとりで大丈夫?」と思うのは、女ひとりでインドに行くリスクが高いと感じているからだ。であればそのリスクを軽減したり回避したりしたらよい。
リスクと戯れる覚悟を決めて、行きたいところには行けるときに行ったほうがいいと思う。
近年の世界情勢をみて、旅行はつくづく平和産業であると思い知った。疫病が流行ったり、戦争があったりすると旅行はできない。
疫病のリスクと戦争のリスクはわたしたち個人がコントロールできるものではない。しかし、旅行先でのリスクは自分でコントロールできる。

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