世界遺産検定2級合格体験記 満点でなくていいから危なげなく合格したい
去年の12月に世界遺産検定3級に合格したので、2024年8月に2級も受験し、合格した。
60/100で合格のところを、78/100で合格した。超高得点とはいえないが、危なげのないスコアだ。
2級の合格率はおよそ50%。3級の合格率が8割近かったことを考えると、グンと難しくなると考えたほうがよい。
世界遺産検定2級 試験要項と配点率
試験要項と問題の比率(配点率)は以下のとおり。
世界遺産検定2級 試験要項
解答形式 選択式
問題数 60問
試験時間 60分
合格基準 60/100点以上
世界遺産検定2級 問題の比率
基礎知識 20%
日本の遺産 25%
世界の自然遺産 10%
世界の文化遺産 35%
その他 10%
3級に続き、基礎知識と日本の遺産の比率が高い。
2級ではどのくらいのレベル感の問題が出るか
基礎知識では、特定の遺産ではなく、世界遺産という枠組み自体の知識が問われる。
3級では世界遺産条約、ユネスコ、世界遺産になるための必要要件などが問われていたが、2級ではより詳しい世界遺産成立の歴史が問われる。
例えば、世界遺産という枠組みが成立するきっかけとなったキャンペーンは何年に開始されたか、世界遺産においては文化遺産の保護が憲章によって定められているがアテネ憲章とヴェネツィア憲章の相違点は何か、といったような、一問一答的な知識ではなく、世界遺産という概念の成立の歴史にどのような出来事や考え方があったのかがキーとなる。テキストに年表が載っているので、まる覚えするとよい。
日本の遺産についても、3級と同様日本の遺産全てが問われるが、3級よりも詳細な知識が問われれる。
3級であればテキストの赤字や黒太字を覚えればよいレベルだったが、2級ではテキストの一言一句とまではいかないが、全体を何度も読み込んで覚えたほうがよい。ワードではなく、文全体を何度か読まないと、思いもよらないところが出題されたりする。3級で問われるようなキーワードはもちろん、構成遺産、登録基準なども出題されることがある。
構成遺産の詳細まで暗記する必要はないかもしれないが、「この構成遺産はどの遺産のものか」程度は暗記しておいたほうがよい。
登録基準についても、例えば広島の原爆ドームは負の遺産であり例外的に登録基準ⅵだけで登録されていること、屋久島は日本の自然遺産の中で唯一自然の造形美を認める登録基準ⅷで登録されていることなど、特異的な登録基準を持つ遺産については試験で問われやすいと思う。
ちなみに、基礎知識では世界遺産の10の登録基準が登場する。登録基準の表を見て10の基準を全て暗記するのは難しいが、日本の遺産とともに、どの遺産がどの登録基準で登録されているのかを考えると案外覚えやすい。
寺や神社には宗教的な価値を認めるⅵが、縄文遺跡や白川郷には独自の集落があったことを認めるⅴが、姫路城などの大きな建築物には人類の創造的価値を認めるⅰや建築技術を認めるⅳが、多くの日本の自然遺産は生物の独自の進化を認めるⅸが認められていることに気づくだろう。
世界の自然遺産は、これも3級同様出題比率が低い。勉強時間が確保できないのであれば、まず捨てるのはここだ。
自然遺産に関しては、基礎知識にも関連して、「ウィルダネス wilderness(手つかずの自然)」という概念が登場する。ウィルダネスの考えにおいては、たとえ自然遺産の森林で山火事が起こったとしても、人による消火活動をせず、自然に消火されるのを待つ。世界最古の国立公園であり、初めての世界遺産でもあるアメリカのイエローストーン国立公園を発端として、このウィルダネスという考えは自然遺産に適用されている。
世界の文化遺産については、3級では100件であったのに対し、2級では300件に出題範囲が増える。よほど時間がある人でもない限り全てを暗記することは不可能なので、自分の好きな遺産や気になる遺産などに絞って勉強したほうがよい。これは世界遺産検定公式より推奨されている勉強方法である。
わたしは古代文明、古代ギリシャ・ローマの遺跡、宗教関連の遺跡あたりが好きなので、この辺を勉強した。
基礎知識に関連し、1994年より採用された「グローバル・ストラテジー」という考え方がある。一言でいうと、「な〜んも考えずに遺産登録を進めると、遺産を保護するお金のある先進国や、石像建築が主流であったため状態のいい遺産が多く現存するヨーロッパばっかり有利になるので、その辺の偏りを何とかしましょうね」というものだ。例えば日本も含めアジアの湿潤な気候の国では木造建築の遺産が多いが、木造の遺産が石像の遺産に比べて後世に残りにくいことは考えるまでもないだろう。木は石と違い、焼けるし腐る。石像建築が数百年にわたり残ることはよくあるが、木造であるとレアだ。だから1,500年前に建てられた法隆寺の五重塔が「世界最古の木造建築」なのだ。石造の遺産はもっと古いものがざらにある。
世界遺産になるためには「真正性」という、どれくらいちゃんとその遺跡が残っているか?が大切である。この真正性が全ての遺産に適用されたら、ヨーロッパの遺産ばかりが登録され、アジアの遺産は状態が良くないので登録されない、ということになってしまうのだ。
このグローバル・ストラテジーという考えが生まれる前はヨーロッパの石建築の遺産が多く登録されてきたため、現時点においてもヨーロッパの遺産の数が多くなっている。そしてヨーロッパの遺産というのは大半がキリスト教に関連するものだ。なので宗教関連の遺跡を中心に勉強したわたしの選択は、たまたまではあるがコスパのよい選択だったことになる。
逆に自然遺産は先ほども述べたように配点率が低い。自然遺産への愛に満ちている人を除けば勉強しなくていいと思う。全くの手付かずは気に引けるという人は、世界初の国立公園であるイエローストーン国立公園、世界で初めて文化的景観が認められたトンガリロ国立公園のふたつをテキストで読み込んでおくともしかしたらいいことがあるかも……しれない(過去問によく登場している)。
勉強時間
2ヶ月くらい勉強したが、毎日勉強したわけではないし、勉強時間も日によってまちまち。通算でたぶん15時間程度だと思う。
個人的には勉強時間よりも勉強方法のほうが大切だと思う。
勉強方法
世界遺産検定に限らず、わたしの資格勉強のスタンスは基本的に同じだ。
まず過去問を解く。これが最初。もちろんカスみたいなスコアになるが別にいい。まだ勉強してないのでいい点が取れないのは当たり前だ。ここで知りたいのは、「どのくらいのレベル感の問題が出るの?」ということだけだ。
次に、過去問で登場した遺産をテキストで読む。過去問でキーになっていた知識には蛍光ペンで線を引いて覚える。
さらに、テキストで配点の高い基礎知識と日本の遺産のページを読み込む。赤字や黒太字のキーワードには蛍光ペンで線を引く。テキストの文章は音読または黙読する。音読または黙読は、勉強する日にはできるだけ毎日やる。
最後に、どの世界の遺産を勉強するか決める。興味があるものや、行ったことのある遺産などがいいと思う。わたしは古代文明、ギリシャ・ローマの遺跡、三大宗教の遺跡、ヨーロッパの近代以前の建築あたりにロマンを感じるのでこの辺りの遺跡を勉強した。これらについては出題される可能性も低いため、赤字と黒太字のキーワードだけ覚える。出題されたらいいね〜くらいの気持ちでいい。
合格後に考えると、基礎知識と日本の遺産を音読して読み込んだことがいちばんよく効いたと思う。
基礎知識は20/60、日本の遺産は25/60で、この2つで満点を取れたとしたら45/60に届く。あとの15/60は世界の遺産で適当に稼げばよい。
私のスコアは、
基礎知識 16/20
日本の遺産 24/25
だった。日本の遺産はあと一息で満点だったのに惜しかった。悔しい。とはいて基礎知識も日本の遺産もかなりの高得点である。この2つですでに40/60に届いている。ここで得点が稼げないと、範囲が広く各遺産の出題率が低いため勉強が実りにくい世界の遺産でたくさん点を取らなければならない。世界遺産検定公式が言うとおり、ぜひとも基礎知識と日本の遺産で取れるだけスコアをむしり取ったほうが良い。
ちなみに、「その他」つまり時事問題が無視できない割合で出題される。前回の世界遺産委員会が開かれた都市の名前、次の世界遺産委員会が開かれる都市の予定、直近の世界遺産委員会で登録された危機遺産などがあれば覚えておくとよいと思う。
時事問題といえば、時事問題かつ日本の遺産という感じなのだが、これを書いている月の前月に日本の佐渡の金山が世界遺産に登録された。登録後1ヶ月後に試験を受けたところ、もちろん佐渡の金山の問題も出題された。日本の遺産は「必ず」全件が出題されるからだ。わたしは佐渡の金山の問いに正答した。試験直前にあわてて佐渡の金山のホームページを見に行った甲斐があった。
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