道とマンモス #シロクマ文芸部(ただ歩く)
何がいいってやっぱりこれだわ、と清子さんは柔らかい草を踏みしめながらサクサクと歩いています。最近引っ越してきたこの家の裏手には雑木林があります。小鳥たちの囀りに誘われながら、その木々の間を潜って木漏れ日の中を歩いているとしみじみと幸せな気持ちになります。
この木々の間で緑に包まれると、その瑞々しい色がこの世の中で一番愛おしいような気になるのでした。
地面を覆う野の草の中に、細く道ができています。それは人ひとり通れるほどのほっそりとした道で、誰かが通った後に、またそのうち誰かが通り、といつの間にかできた道でした。清子さんはこの道を歩きながら、緑を吸い込んで深呼吸していると、日々の憂いも忘れてしまいます。え?清子さんにも憂いなんてあるの?と思ったそこのあなた、鋭いですわね。そりゃあります。清子さんも人間、そう考える葦ですから。形の見えない漠然とした不安を持つことはあります。まるで芥川龍之介みたいですね。でも、清子さんはその憂いに飲み込まれてしまう前に、自分をあやすコツを飲み込んでいましたし、このグリーンウォークもその一つでした。
サクサクと歩いて、歩き続けていると、いつの間にか心がどこかへあそびに行ってしまいます。
この日も清子さんはふと思いつきました。
清子さんはクフクフと笑いながら、家に向かいます。もう憂いはどこにも残っていません。道がいつからできたのか、今の時代、そんなの調べればすぐわかるでしょう。でも、清子さんは調べないことにします。それがロマンですから。
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小牧部長、今週もありがとうございます。
清子さんはマロンもロマンも大好きなようです。
いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。