食べる夜 #シロクマ文芸部
その文字を見た時、もしかしたらこれは夢なのかなあと黒代志麻子は頬をつねりました。
ゼブラ食品株式会社企画部に勤め始めて早15年が経とうとしています。あれはまるで昨日のことのようです。受ける会社受ける会社、どれも採用をもらうことができず、途方に暮れかけた時に大好きな「パンダクッキー」を作っているゼブラ食品の社長面接まで漕ぎ着けました。
「黒代志麻子と申します」
と名前を告げた途端、社長が
「うん、合格!」
と言ったのです。夢を見ているようでした。その時も頬をつねりましたが、痛かったことを思い出します。社長が、
「だって君の名前って、うちの会社のためにあるようでしょ?」
と言ったときに、そんな理由で合格したのかとびっくりしましたが、それ以来、真面目一辺倒に働き続け、気づいたら15年も歳月が流れていたというわけです。
企画部では企画をするのではなく、庶務としてずっと働いてきました。ですから、新商品の開発に自分の意見を出したことはありません。そんな志麻子が企画書を出すことになったのは、「志麻子くんに企画出してもらって」という社長命令が下りたからでした。どうしてそんなことになったのか、志麻子にはさっぱりわかりません。もしかしたら、私を首にするためにわざと無理難題をふっかけているのかしら、とかちょっと疑ったりもしました。実は志麻子には元々胸に秘めていた企画がありました。
ランチ後に眠くなった時にこんなものがあったらいいなと思っていました。 ありそうでないクッキーです。そして、この企画がとんとん拍子に進んで、志摩子は首になるどころか、大人気ヒット商品の生みの親になったのでした。それでも志麻子は相変わらず控えめで、以前からの仕事も引き受けて、頂き物のお菓子をみんなに配ったりしていました。フロアのお掃除係の人にも必ずそっと渡しています。
社長室では、そのお掃除係の女性が、ソファにどっかりと座っていました。コーヒーを片手にさっき志麻子にもらったお菓子をパクパクと食べています。社長に隠れて、とんでもないと思いましたよね?実は目の前にはニコニコと社長が座っていて、こう言いました。
「お掃除が趣味なのはいいけど、社長夫人のくせに、身元を隠して会社の掃除なんて君は本当に悪趣味だね。まあそれで、ゴミ箱から志麻子くんの捨てたメモを見つけてきてくれたのはお手柄だったけどね」
小牧部長、今週もなんとか書き上がりました。
提出させていただきます♪
今週はなかなかアイデアが一つにまとまらず苦労しました。
志麻子さんの名前だけは最初から決まっていたのですが
食べる夜となんら関係はありませんでした。笑