私のもう一人のお母さん
事情があり、今年は年末にお義母様と過ごしました。
お義母様と会うのは、2年ぶりでした。相変わらずお元気そうで、ほっとしました。
お義母様は、地方とはいえ町中の良家のお嬢様でした。ある時出会ったお義父様は、その地域でもかなり田舎の、大家族の長男でした。
そんなところに嫁に行ったら苦労するに決まってる、と周囲が止めるのも聞かず、お嫁に行き、やはり想像を絶する苦労をされたそうです。
それでも、お義母様は本当に明るくて優しくて、きらきらしています。
どうしてあんなにきらきらしているんだろう・・・と、ずっと思っていましたが、今回、1つだけそのヒントが分かった気がしました。
お義母様の実のお母様は、お義母様の出産時に亡くなりました。
お葬式にも出られないほど悲しみに暮れたお父様でしたが、それでもお義母様を育てなければと、もらい乳をしていたそうです。
それを見かねたおばあさまが、お父様にお見合いをすすめました。
お見合いの席には、まだ生まれて間もないお義母様も連れて行ったそうです。
そのお義母様が、後の継母になる女性に、にっこりとほほ笑みかけました。
それを見た女性は、私がこの子を育てなければ!と、結婚に踏み切ったそうです。
それから、お義母様は新しいお母様に育てられました。
新しいお母様も、子どもを何人か授かりましたが、全員を分け隔てなく育てました。
そして、お義母様は20歳になった時、初めて、そのお母様の口から、「あなたの本当のお母様は亡くなっているのです」と聞かされました。
そんなことを全く思いもしなかったお義母様は、天地がひっくり返るほどびっくりして、「そんなの嘘、私のお母さんはお母さんだけ!なんでそんなこと言うの?」と泣きじゃくりながらお母様に抱き着いたと言います。
「あなたがこれを知ったからと言って、私とあなたの関係が変わることは決してありません。でも、あなたを生んで亡くなったあなたのお母さんのためにも、これを黙っているわけにはいかなかったのです」
そんなことを全く知りもしなかったのは、お義母様だけでなく、お義母様の異母兄弟も同じだったそうです。
お義母様の妹さんは若くして亡くなりました。亡くなる前の病気で苦しい時、「なぜお姉さんは元気で幸せで、私は身体が悪くて死にそうなの」と恨み節で言いました。
そこへ、親戚の人が、「そうは言っても、あなたのお姉さんだって、早くにお母さんを亡くして辛い思いをしたじゃない・・・」と言ってしまいました。知っているものと思ったのだそうです。そうしたら、その妹さんも全く寝耳に水の話に仰天したそう。
それほど、お義母様のお母様という人は、それはそれはもう必死に、お義母様たちを愛情いっぱいに育てていたとのことでした。
お義母様の素直で明るい性格、どこまでも優しい性格は、きっと、このお母様の愛情によって育まれたんだなぁ・・・と思いました。
実の子に対しても酷いことをする話を耳にする世の中、継子を苛めない継母などいないと、多くの人が想像するところですし、実際、とても難しいことなのだと思います。
「だから、継母は・・・継子は・・・」と後ろ指指す人もいるそうですが、しかし、お義母様の周囲にそんなことを言う人は一人もいませんでした。お母様という人の愛情が見えていたからでしょう。
お義母様は、継母だからって酷い人たちばかりじゃない、私の母は世界一優しいお母さんよと叫びたい、と言っていました。
そして、私にこうも言いました。
「義母とか継母とか継子って言葉に、私、ちょっと切なくなっちゃうの。だからね、あなたには、私のことを、お母さんって呼んでほしいの。実際、私はあなたのことを自分の娘だと思っているのだから」
お母さん、ありがとうございます。お母さんのおかげで、私は本当に、好き勝手させてもらってます。
ずっと前から薄々、すごい人だな・・・と思っていたけれど、改めて、心から尊敬しています。
明るく優しい母に、そして、その母を育てたお母様という人に、心から感謝だし、尊敬するなぁ・・・私も、かくありたい、と思った一日でした。