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銭湯と持続可能なコミュニティとは?

銭湯めぐりの合間に銭湯本を読んでみた。

『銭湯から広げるまちづくり: 小杉湯に学ぶ、場と人のつなぎ方』加藤 優一著だ。

単に銭湯好きで小杉湯にも行った事があるため手に取った本だが、プライバシーと孤独の相剋に悩む現代に必要な場と人々との関係性について、貴重な示唆に富む実践本だった。銭湯を一種の公共施設と捉え、食事と同様に、個人として必要な行為(入浴)をしながら、各人の好みに応じて人間関係の強弱を付けられる場。こども食堂での議論に類似。銭湯自体の利用者増、会員制による小杉湯となりの安定的な運営、原宿出店を含めた全国への広がり等の成果を見るにつけ、箱物と人を切り離してきた公共施設のあり方そのものをアップデートする必要性を感じた。

筆者は、東北大学大学院の博士課程で建築計画を研究し、東日本大震災では被災自治体に出向して復興事業を支援しながら研究していたとのこと。東北芸術工科大学で専任講師をしながら、(株)銭湯ぐらし代表取締役などを務める。人口減少時代の人々の仕事やコミュニティとの関わりについて、「一人複役」という言葉も使われたが、コロナ禍の厳しい状況で、まさにそれを自ら実践しながら、同じように複数の役割を持つ仲間を増やしてきた実績に敬意を表したい。来春に原宿の東急プラザB1に(仮称)小杉湯原宿が「その他公衆浴場」(スーパー銭湯等と同じ。入浴料金規制は掛からない。)としてオープン予定のようだが、今から楽しみではある。(一般公衆浴場としてやりたかったが、条例規制との関係上無理だったとのこと)

銭湯スタンプラリーも、通年のアプリベースのものに加え、今だけやっている東京都公衆浴場業生活衛生同業組合のものと、江戸川区浴場組合のものを併用している。富山県では、県全体の取組を今年からやっているが、1日何軒もハシゴしてとにかくスタンプを集めることに必死になっている人がいるようで、訪問した銭湯の女将さんはやや懐疑的であった。

スタンプラリーは簡単な支援策ではあるが、自発的かつ継続的で、地に足の付いた小杉湯のような取組にそっと寄り添う方が(やり方に工夫はいるが)、長い目で見れば正しいようにも思う。

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