教育実習で注意すべきこと―その① 心構えの段
世界史講師のいとうびんです。
今回は、2回に分けての世界史に限らない話題、教育実習についてです。
この記事を書いているのが4月上旬、早ければ5月には教育自習が始まるみなさんも多いと思います。
教職を本気で目指すにしろ、就職の保険にしろ(私は後者でした;_;)、
いうまでもなく教員免許をとるにあたり、教育実習は避けては通れない最後の関門です。
この教育実習、経験者は口をそろえて「大変だった」と懐述するくらいハードなものです。
しかし、教育実習が大変である原因はかなりはっきりしています。
だからこそ、対策を立てる余地は充分あります。
……というわけで、今回は、教育実習に赴くにあたっての心構えや注意点、そしてどのような準備をすればよいかについて述べていきます。
教育実習を目前に控えた学生や教員志望者などなどプレ実習生のみなさま、ぜひ読んでもらえればと思います!
ではでは、さっそくいってみましょう~
【1】 指導教官の立場で考えると……
さて、まずは実習生本人というより、教育実習生を受け入れる側、つまり指導教官の先生の立場に立って考えてみましょう。
なぜこのテーマから入るかというと、教育実習中はなんといっても指導教官との関係がこれでもかというほど重要だからです!!!
この、指導教官との円滑な人間関係を築くには、「そもそも教育実習が現場の学校でどう思われているか」ということも、大きくかかわってきます。
【2】 学校現場と教育実習
結論から言うと、概して教育実習は、学校現場では歓迎されていないといえます。もっとストレートに言えば厄介ごと、お荷物と捉えている先生もいらっしゃるかもしれません。
この最大の理由が、教員の業務があまりにも忙しいということです。
以前の「#教師のバトン」など、しばしば話題になりますが、教員の業務は内容・量ともに多様かつ膨大です。これは公立・私立にかかわらず、程度の差こそあれほぼ共通しています。したがって、ただでさえ忙しい日々の業務に加えて、実習生の世話なんてやってられるかい! というのが多くの先生方の本音でしょう。単純に余裕がないんです。
おまけに実習生自身はもとより、指導教官になったからと言って、基本的には特別な手当てが出るわけではありません。指導教官はタダで実習生の面倒を見なければならないのです。
さらに、実習生にも授業やクラス運営を部分的に任せなければならず、このせいで(実習生だけが悪いわけでは決してありませんが)年間計画に狂いが出ることも珍しくはありません。具体例のひとつが定期試験です。範囲が遅れるだけならまだいい方で、実習生の教えた内容が穴だらけで、もう一度同じ内容を授業しなおさなければならない、二度手間になることもザラです。いずれにせよ当初予定していた試験範囲に大幅に遅れることは、火を見るより明らかですよね。
一介の実習生でこれらの問題が全部解決できるわけではありませんが、それでも教育実習は、現場の先生に迷惑をかけざるを得ないシステムなんだということを念頭に置くだけでもだいぶ違ってくるでしょう(繰り返しますが、実習生がすべて悪いと言っているわけではありませんよ!)。
ここまでお読みになった方は、「なんだよ教育実習って誰も幸せにならないシステムじゃん」という感想をもたれた方もおられるでしょう。残念ながら、現状の教育実習ではこれが紛れもない実態です。
プレ実習生の方々は、まず自分がこれから向かう現場の実情を把握しておくべきです。
【3】 実習生の心構え
では、【2】で述べたような実情を知ったうえで、実習生はどうするべきか。
まずは、「指導教官や現場に迷惑をかけないこと」。抽象的かもしれませんが、心構えの大前提として、です。これは教育実習に限らず、様々なインターンに関しても同じようなことが言えるでしょう。
そのうえで、より具体的なとるべき行動を見ていきます。
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① 勝手な判断をしない
接客業などでアルバイトをした経験のある人ならわかると思いますが、現場で勝手な判断をしてしまうのは厳禁です。「勝手な判断」には、「このくらいならいいだろう」という見立ての甘さも含まれます。
特に学校は校則のようなルールや、生徒の人間関係に個人情報など、デリケートに扱わねばならない問題がたくさんあります。ちょっとでも疑問に感じたら、即座に指導教官か近場の先生に報告・相談するようにしましょう。
② 指導教官と積極的なコミュニケーションをとる
①の内容と被りますが、上で述べたように、教員の日常は超多忙の一言に尽きます。だからと言って、指導教官に何も聞かないのはそれはそれで問題です。ただでさえ負担である教育実習で、実習生が何かしら問題やトラブルを起こしたら、それこそ洒落になりません。
お互いのためにも、指導教官とは積極的にコミュニケーションをとるよう心掛けましょう。また、授業案の相談なども、積極的に受けるようにするとさらに良いでしょう。
③ 時間に正確に動く
学校生活では、時間に対する正確性が求められます。出勤で遅刻をしないのは当然として、次の自分の授業や授業見学の時間にもきちんと間に合うようにしましょう。とくに、授業見学では、これから見学に行く先生に、事前のアポはもとより、直前にも一言「よろしくお願いします」と挨拶があることが望ましいです。授業や行事など、実習中はめまぐるしく移動や準備をせねばなりません。うっかり時間を見誤ってしまうこともあるでしょうから、気は抜けません(私も実習でやらかしました)。
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繰り返しますが、基本原則は、「人に迷惑をかけないこと」です。やや精神論めいていますが、これを意識しておけば、上記の3つの行動も、比較的とりやすくなるでしょう。
あとは挨拶をしっかりしましょう! 指導教官だけでなく、学校の先生方や生徒さんには、廊下ですれ違った時なども欠かさず「こんにちは!」とハキハキ挨拶できるようにすると、好印象をもってくれます。先生方だって、生徒さんにも積極的に声をかけているはずですからね。
【4】 教育実習の準備―事前のススメ
ここからは、教育実習の準備について見ていきます。
さて、教育実習で最もハードなこととはは何か。みなさんは何だかわかりますか??
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正解は授業準備です。
教育実習の期間で、大半の実習生が毎日労力をかけざるを得ないのが、この授業準備なのです。もちろん他にもあるでしょうが、授業準備は間違いなく実習生が苦労した上位に食い込むでしょう。
私もかつて教育実習に実習生として参加し、また高校で勤務していた時も、実習生の方々が控室などで授業準備に悪戦苦闘している様子を、何度となく目にしてきました。
実際、学校に限らず塾・予備校もそうですが、授業準備は本当に途方もない時間がかかります。実習生が担当するのは、年間の授業のほんの一部とはいえ、それでも準備がかなり大変であることに変わりはありません。
毎日のように翌日の授業準備に追われ、疲弊しながら実習を終える、というのが多くの実習生の日常なのです。
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では、こうした事態を緩和するにはどうすればよいのか。
一番効果的なのは、事前準備、なかでも授業準備をしっかりしておくことです。面倒に思われるかもしれませんが、実習期間はとてもではないですが授業準備をする時間は取りづらく、せいぜいマイナーチェンジを繰り返すのが関の山です。
事前準備の出来具合によって、実習期間の過ごし方もかなり差が出ることになります。
例えば、私が実習生であった時の経験談ですが、当時の私は塾講師のアルバイトをしていたので、授業準備の大変さは充分承知していました。すでに4月の下旬には、実習校の指導教官から担当する授業数と範囲を聞いていたので、ゴールデンウィークに実家に帰っていた3日間を、授業準備にあてました。
結果は大正解でした。事前に授業準備を済ませていた私は、授業案そのままに授業を進め、授業後は指導教官やほかの実習生からの指摘を、次回の授業案に反映させるだけでした。また、この時に手を加えたことといっても、マイナーチェンジ未満のアレンジに過ぎません。
放課後になると、他の実習生のみんなは、翌日の授業準備に追われていましたが、私は(申し訳ないとは思いつつ)そんな彼らを尻目に担当クラスの生徒の部活動に顔を出し、そのまま17時には帰宅しました。さらに付け加えると、私の授業はありがたいことに、指導教官からも高く評価していただきました。後から聞いたところだと、実習生のなかには20時に学校が閉校するタイミングまで残っていた人も多くいたとのことです。帰宅後も夜遅くまで準備作業を続け、寝不足のまま翌朝早く起床する、なんてことも。
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私にとって教育実習は、大変でなかったといえば嘘になりますが、それでも授業や授業以外でも生徒のみなさんの色々な顔に触れる機会があってとても楽しかった思い出が強いです。
充実した実習期間を送ることができたのも、事前準備を充分にしていたことが大きかったといえます。まさに差がつくポイントであったといえるでしょう。
あくまで私の経験則や聞いた範囲の話ですが、実習校の実習生に対する不満は、実習生の準備不足に起因していることが多いようです。現役の先生方、それも実習生の指導教官となるベテランクラスであれば、授業が準備不足かどうかは簡単に見抜かれます。準備不足で授業をしていると、「この実習生はこの仕事をナメてるんじゃないか?」と不信感を抱かれてしまうこと間違いなしです。
そもそも準備不足で授業をする時点で、学校の先生に対して失礼ですからね。例えば、劇団四季のミュージカルで、明らかに素人の役者が演技をしていたら、「客を舐めるな!!」という気分になりますよね。もちろん、最初から授業なんてうまくできるわけではありませんが、明らかに準備不足で臨もうものなら、先生方は「教職を舐めるな!!」という気分になってしまおうともいうものです。そういったことを、多くの実習生はそれとは知らずにやってしまっているのです。
授業準備は、実習期間に余裕を生むだけではなく、最低限のマナーであるとも言えます(とはいえ、これを実習生にちゃんと伝えてくれる人があまりいないのも問題ではありますが……)。
【5】 注意喚起!! 教育実習とSNS
さて、毎年のように教育実習関連で問題となるのが、SNSです。先ほど、【3】の①でも述べたように、学校には校則をはじめとしたルールや、生徒の個人情報などデリケートな問題がたくさんあります。
公立の学校であれば、地方公務員法によって守秘義務が定められており(第34条)、私立であっても同様の個人情報保護の規定があります。実習生は正規の職員ではありませんが、それに準じる立場であることを忘れてはいけません。しかし、毎年こういった点での問題行動が、SNSを介して発覚するといったケースが後を絶ちません。
例えば、
・実習校の生徒の名前(苗字だけも含む)を、実名で投稿する
・実習校の生徒が写った写真を投稿する(顔をスタンプなどで隠してもアウト)
・実習校の学校名を、実名で投稿する
・実習校の教室や控室など、校舎の設備の一部または全部を写真で投稿する
・実習校の教職員について書き込む(個人が特定できるレベルであれば言うまでもなく尚更アウト)
・実習校で聞いた職場の事情などを投稿する
以上はいずれも極めて深刻な問題行動です。実習期間中はアカウントに鍵をかけるか、あるいはログアウトするなどしてSNSからは距離をとった方がよいかもしれません。何にせよ、原則として実習や実習校に関する内容は、SNSに投稿しない方が無難です。てかするな、マジで。
実際に問題があると学校側で判断された場合、教育実習の修了を取り消されたり、あるいは将来的にその自治体の教育委員会でブラックリスト入りにされる可能性もあります。大袈裟に思われるかもしれませんが、それくらい危機感を持った方がよいです。
何より忘れていけないのは、実習期間が終わってからも同様であるということです。とりわけSNSで問題になる投稿は、教育実習が終わった直後の1週間が多いとすら言われています。せっかく無事に乗り切った教育実習を、ここぞというところでフイにしてしまっては、これはもう悔やんでも悔やみきれませんよ。
「気をつけろ」としか言いようがありませんが、SNSでの教育実習に関する発言・投稿は、充分注意してください。
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今回はここまで!
次回は、より具体的な授業準備についてお伝えします!!
≪今回の記事のまとめ≫
[1] 教職の現場はとにかく忙しい
[2] 指導教官や現場に、なるべく迷惑をかけないように
[3] 事前の準備をしっかりと(GWなどまとまった時間を充てるとよい)
[4] SNSは要注意!! 実習関係は期間が終わっても絶対にしない
後編はこちら!! ↓
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