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【Audeze MM-100 レビュー】DTM用ヘッドホン決定版!トランジェントが見えるってどういうこと?

皆様ごきげんよう。
LLSY music & V chのレーシーです。

買っちゃいましたというか買えちゃいましたというか、持って帰ってきてしまいました。

ウワー!!

AudezeというとDTMよりはオーディオ方面の方のほうが知名度がある気がします。
静電型といえばSTAXとAudeze、、
平面駆動といえばFostex、Hifiman、Audeze、、みたいな
DTMをやってらっしゃる方のヘッドホンのボリュームゾーンは2~3万くらいと、8~12万くらいの当たりな気がします。そんな中一番安いモデルでも20万前後みたいなAudezeは存在すら知らなかった人も多いのではないでしょうか。
そんな中Audeze MM-100は初回出荷定価77000円(税込)(次回出荷からは値上がるかもという噂)という、OLLO Audio S5XやノイマンNDH-20に真っ向からぶつかる価格で出してきました。
私も気になって夜しか眠れず、ちょうど愛用していたOLLOのS5Xの調子が悪くなり入院というタイミングだったこともあり、いつもお世話になっているお店の入荷翌日に聞きに行ってきました。

開封式

民生系メーカーと違い、スタジオ向け機器は高価なアウトボードやヘッドホンであっても簡素な梱包であることが多いです。

民生系メーカーは10万前後のイヤホンですら高級感を演出する箱や、開けたときの感動が演出されています。

音楽のプロの方は華美な包装や装丁を嫌う印象がありますが、そんな中AudezeのMM-100はなかなか立派な箱に入っています。

ヘッドホンが納められたウレタンを外せばポーチ、ケーブル類が入っています。欲を言えばべイヤーやFocalのようにハードケースがついててほしいな。。と思ってしまいますが、以前S5Xぴったりサイズ用に購入した汎用ケースにすっぽり収まります。

Made in USA
やわらかいタオル地のようなポーチ
S5Xのためにamazonでかった汎用ケース。サイズはドンピシャです。

イヤーパッドから中をのぞけば平面駆動らしい見た目のドライバが透けて見えますが、外観は何というかLCDのような高級感はありません。
グリルの造形や小さいけれど質感の高いメーカーロゴのおかげで安っぽさはありません。

なみいた
メーカーロゴはプリントではなく、妙に質感のいい凝った造形のアルミのステンシルです

ただし驚いたのはこのヘッドホン、アジャスターがありません。ヒンジ部分は回転のみです。ヘッドバンドがネジ止めされており、3段階で付け替えることができるようになっています。

いかにも伸びそうなアジャスターは回転のみ。見えにくくて申し訳ないですが、ヘッドバンドがネジ止めで3か所開いています。

ケーブルは一般的なステレオミニプラグです。
両側に刺し口がありますが、左右モノではなくステレオをどちらかに刺します。どちらに刺しても大丈夫なので、自分のどちら側に再生機器があるかで左右近いほうを選べますね。
付属ケーブルはまるで民生機器のような編み込みケーブルです。
驚いたのがこのケーブル、反対側がノイトリック系のプラグです。ロゴがないので何とも言えないですが、とても見慣れた形状ですが、ヘッドホンのプラグに使われているのは初めて見ました。
ミニプラグへの変換ケーブルも付属していますが、なかなかのサイズ感です。

この根元の見慣れた模様は、、しかしこんなデカい変換プラグ?もはや変換ケーブル?は初めて見ました。。

所有感はなかなかのものですが、長さも少し短め(一般的なヘッドホンとしては十分)で、布で覆ったりするタイプが多いモニターヘッドホンのケーブルと比べると長距離を引き回したり椅子の足でガンガン轢くような現場には向かないかもしれません。自宅での使用には十分です。
OLLOのように個体ごとの測定データは付きませんが、検査証とシリアルはカードが付属します。

トランジェントが見える

MM-100は非常にトランジェントやアタック感が判別しやすく、奥行き感のある音がします。
試聴でまず感じたのは、音が自分の周囲から広がっていくような奥行きの深さです。アタック感をしっかり感じられるイヤホンやヘッドホンは音楽の奥行き感のようなものをしっかりと感じることができますが、今まで聞いてきたヘッドホンの中でここまで大きく感じられるのはHiFimanのEdition XX (残念なことに限定品)くらいでしょうか。
コンプレッサーを扱う時やサチュレーションなど歪みを扱う時に、今まで以上に変化をしっかりと感じることができました。

低音の解像感も高い

また、低音の量感もかなりしっかり見えます。例えばPlugin Allianceの人気プラグインにSubsynthというものがありますが、サブハーモニックで30Hz前後を足していったときに一番変化が見えやすいのは今まで使ってきた中でもこのヘッドホンです。
特にベースミュージックなどではアタックの強い派手なキック、サブベース、高域の派手なワブルベースなどローエンドが見えにくくなる要素がたくさんありますが、この子なら自信をもって処理できそうです。

低位感や中域の解像感はほかにも優れたモデルも多い

ここまでべた褒めですが、ならMM-100はアンダー10万のモニターヘッドホンの頂点に君臨するのか?といわれると、そうだとは言い切れないところはあります。
例えば以前にもレビューをして実際に使用してきたOLLO AudioのS5Xは、中域の解像感がとびぬけていて、音のリリースを聞き取る面で見ればMM-100よりも優れていると感じます。
特にボーカルのリバーブなんかはかなりしっかり見ることができます。

当時の記事でも書いているのですが低域が若干見えにくい感じがあるので、S5XとMM-100を組み合わせて使うのはかなりいいかもしれません。

私が長年愛用してきているべイヤーダイナミックのT1 2ndはまるで一歩離れたところからステージを見渡しているかのような定位感の良さがあります。(ただしべイヤー全般に共通する感じとして"音がまるい"、つまり奥行き感の感じにくさがあります。ClearMGのような後傾配置のドライバも相まって一歩引いたところから聞いている感じが強いです。)

ライバルだったK812やHD820sが今でも売られる中、3rdで大きく方向転換してしまったT1。さすがに音の解像感や古さを感じるところもありますが、驚異的なのはそろそろ10年年近く使っているのに故障もなく、イヤーパッドも1回の交換のみでぴんぴんしていること。この辺りは経験値の多い老舗メーカーの強み。

再生機器側の能力も要求される

平面駆動型のヘッドホンは鳴らしにくい、、そんなイメージは強いですが、MM-100はインピーダンスが18Ωと非常に小さいです。
じゃあ鳴らしやすいじゃん!とはならないので注意が必要です。一般的にヘッドホンのインピーダンスが低いと鳴らしやすいと思われがちですが、正確にはそうとは言い切れず、もう一つの要素として音圧感度が挙げられます。
db/mWという単位であらわされ、1mWの音を入力した際何dbの音が発されるかを表しています。
MM-100の感度は100db/mWでこれはインピーダンスを考慮した場合やや大きな値です。
じゃあMM-100ってめっちゃ鳴らしやすいじゃん!とはなりません。残念ながら。
再生機器のヘッドホンアンプにも出力インピーダンスというものが存在します。一般的にインピーダンスの値が同じとき最も効率よく電力を送ることができるとされていますが、最近の再生機器は出力インピーダンスが非常に小さく設定されることが多いです。(特に小さな電力で大きな音量を得なくてはならないポータブルオーディオで顕著です。)
ただし再生機器側の出力インピーダンスが非常に小さく、今回のMM-100や非常に高感度のIEMイヤホンなどを組み合わせたとき、回路全体の抵抗値が非常に小さくなってしまい電流が過大に流れてしまうことになります。
そうすると機器側は回路の保護であったりバッテリーの過放電を防ぐため電圧を下げざるを得ません。
そうすると電流の供給が間に合わず音が歪んだり、バランスが悪くなったり、、いわゆる鳴らしきれてない状態になります。
インピーダンスが低い=鳴らしやすいと考えている方は多いですが、ここまで極端に低いインピーダンスになると非常にアンプに厳しくなってきます。

オーディオレビューで有名なSandal Audioさんの記事から引用した、私がリスニングに使用するmicro iDSD Signatureというヘッドホンアンプのデータ。Ecoモードで18Ωのヘッドホンをつなぐ場合ほぼ定電圧で駆動できていることがわかる。6Vppは90.14mWくらい

お店の視聴で使用したのはAntelope audio ZenQ SCとOrion SC、それと入門用IFとして大人気のUR-22CでしたがUR-22Cで再生したときには明らかに音が悪かったです。
DAやアンプの質的な話ではなく、明らかに音量はとれるが鳴らしきれてない感じがしました。
ですのでモニター環境のランクアップとしてMM-100を考える際、もし安価なオーディオインターフェイスを使用している場合はいずれそちらの買い替えも考えなくてはならなくなるかもしれません。

DTM用ヘッドホンとして最高のコストパフォーマンス

今回実際に購入して数日使いましたが、今の時点で言えるのは「マジでコスパがいい」ということです。
このサウンドが77000円?399USD?ちょっと意味がよくわかりません。。
この音の近さは多少人を選ぶかもしれませんし、正直以前S5Xを絶賛しておいてみたいなところはありますが、オーディオインターフェイスは入門用からランクアップして、次はモニター環境を改善したいな、、という人は少なくないと思うので、S5Xと合わせておすすめしたいヘッドホンです。
しかしUltrasone、ノイマン、ゼンハイザー(490PRO)、OLLOに今回のAudezeとアンダー10万のモニターヘッドホンはかなり激戦区になってきましたね。。

また半年か1年か使ったら、耐久性やいろんな部分を含めて振り返りレビューをしてみようと思います。

LLSY music


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