新人VTuberがおうちで歌ってみた&セルフMixをやる流れ
皆様ごきげんよう
LLSY music & V ch.のレーシーです。
今日は先日投稿した歌ってみたのお話について書いていこうと思います。
この音源、実は半年ほど前にとってショートでは出していたんですが、ファイルの整理をしていたらフル尺が出てきたので投稿してみたという運びです。
ちなみに私は普段全く歌を歌わないし、宅録環境もほぼ0です!
何の処理もしていない6畳ほどの自室で録音しています。
まずは早速曲から
う~~~ん、声を出しなれてないのがバレバレですね。
とてもかなしい。
具体的にどんな感じでやっていったのかを書いてみます!
マイクを選ぶところ
いくらミックスを頑張っても録音したテイクがだめだとどうにもなりません。
なのでまずは自分の声や環境にあったマイクを選びます。
私の部屋は長方形の6畳で、奥に窓があります。
ちなみにマイクスタンドがないので(!?)配信用のマイクアームを使います。
つまりマイクの設置位置は強制的にデスク周りとなり、マイクの奥1mほどのことろに窓か壁がくる形になります。
マイクには指向性があって、特に配信など周りの音を拾いたくない場合指向性のあるマイクが好まれます。
マイクの正面からのみ音を拾うカーディオイド、より拾う範囲を狭くしたスーパーカーディオイド、さらに狭いハイパーカーディオイドなどがあります。
今回は何の処理もしていない部屋ということで音がガンガンに回ります。なので極力狭い方がいいのかな、、と思いがちですが、ハイパーカーディオイドくらい指向性が狭いと、今度は背面の音を良く拾ってしまうという傾向が出てきます。
今回はマイクを立てた先の壁が近いので避けた方が無難です。
私の声は結構低いので、ある程度高音を出してくれるマイクの方がいいとも考えました。
ラージのコンデンサマイクはどうしてもこういう場だと部屋なりが大きく入ってしまうので、ハンドヘルド型で高音よりのAustrian Audioのマイクを使いました。
マイクは大体メーカーサイトやショップのサイトに指向性が乗っています。
自分のマイクも確認してみよう。
マイク、何に繋ごう
マイクが決まればお次は繋ぎ先です。
マイクは単体のマイクプリアンプに繋ぐか、オーディオインターフェイスに直接繋ぐかになってきます。(もちろん他にもありますが、個人配信が主なVtuberさんはたいていこのどちらかになってきます)
オーディオインターフェイスは当時Antelope Audioというところのデスクトップ型を使っていました。
この子の内臓マイクプリもいい音です。
が、ちょっとあっさりしすぎな気もします。
軽くとってみたところどうしても低音が少なくてちょっとスカスカになりがち。
マイクプリアンプは1台しかもっていないのですが、Oz DesignさんのOZ-2200です。
アウトプットにトランスが使われているタイプで、低音がしっかり出て音がどしっとします。
音抜けが欲しいから高音がよく出るマイクを選ぶと、場合によっては低音が薄くなりすぎてしまうことも多いです。
低音が薄いと音の芯みたいな部分がうまく出なくて、音が悪く感じてしまうことが多いような気がします。
マイクケーブルはタツタ立井、プリアンプ~インターフェイスはモガミのケーブルを使ってます。
高価なケーブルほど高音が派手になることが多いので、試聴できない環境なら高すぎず安すぎずくらいが一番使いやすいことが多いです。
もちろんORBやオヤイデもいいケーブルですよ!
マイクとの距離を決めよう
マイクとの距離はとても重要です。
近づけば近づくほど低音が膨らんでいくので、実際に1パート録音しながらいいところを探っていきます。
生の音だと判断に迷うことも多いので、仮でコンプをかけて聞き比べることが多いです。
例えばこちらは以前に投稿した歌ってみたのショート動画。
今回と同じ機材同じ部屋でとっているのですが、低音がスカスカになって軽い音になってしまっています。
この音質の差はマイクとの距離の違いで出ているものですね。
セッティングを変えながら録音していくわけですが、私は録音用のトラックにコンプを指しっぱなしにしています。
モニタリングはダイレクトモニターで行っているので、録ったあとすぐ確認できるようにですね。
歌ってみたの場合オケはすでに完成していて音圧が高いので、ボーカルの方もしかり潰して前に出してあげないとなかなか比較が難しいです。
操作が簡単で破綻しにくいコンプだとささっとかけれるので便利です。
私はいつもRVoxを使いますが、これはコンプを掛けるという作業に手間を取られたくはないという意図での選択です。
録る!録る!録る!
パートごとであったり、区切りやすいところで区切って何度も録ります。
画面にはトラックがたくさん出ていますが、この各トラックの中にテイクが10個前後入っています。
特に私のように歌が下手で普段から歌いなれていないと、録音しているうちに喉の開き方が変わって音色がどんどん変わってきます。
何度も録って、時には前のパートに戻って録ってを繰り返していきます。
録音して聞き返してを繰り返し、納得できるテイクが録れるまでがんばります。
コンピングしよう
テイクがたくさんあるので、その中からいい部分を選んで繋いでいくコンピングを行っていきます。
コンピングについては専用のモードを搭載しているDAWも多いです。
私の使用しているDAWはコンピングに切り貼りの作業が必要なく、欲しい部分をドラックするだけで持ってくることができます。
DAWもいろいろありますが、特に録音の頻度が高い方は単に録れればいい、というだけではなく、自分のやりたい作業が一番効率よくできるDAWはどれかなみたいな視点で選んでみると日々の細かなストレスや作業し始めのハードルが下がることもあります。(私は多いときに月7,8曲作曲することもありますが、クリエイティブでない部分の効率化は外部コントローラーに何万かけてもいいと思うほど重要だと思っています)
タイミング、レベルの補正をしよう
トラックが出来上があるとタイミングのずれを補正していきます。
これも最近のDAWだと専用の機能がついている場合も多いです。
特にピッチ補正とタイミング補正を別々に行う場合、タイミングの補正を先に行いましょう。
レベルの補正はいわゆる手コンプです。オートメーションを使って音量を手動で調整する必要があるならおこないましょう。
DAWにはインサート(プラグインが入る場所)の前にあるプリフェーダー、後ろにあるポストフェーダーがありますが、ここでは必ずプリフェーダーで作業します。
プリフェーダーではなくゲインという呼び方をするDAWも多いです。
ここでは音の流れ、特にプラグインのエフェクターがどこに入るかを知っておく必要があります。
インラインコンソールを模した大抵のDAWは プリフェーダー(DAWに入ってきて最初に音量を調節するトリム。最近はここでいじると波形自体が変化するDAWも多い)
↓ インサート(プラグインの刺さる場所)
↓ ポストフェーダー(画面上で一番目に付くフェーダーになっている部分) の順に流れていきますが、一番触りたくなるポストフェーダーは当然プラグインの影響を受けて最後に音が出てくる部分の音量の変化になるので、コンプの掛かりを考えたこの最初の処理はインサートよりも前のプリフェーダーで行うべきだということがわかります。
ここまで書いといてなんですが、今回ここでレベルの調整はやってません。
必要なければ無理にやることもないのだ。
ノイズの処理をしよう
私の場合ここでノイズの処理をしていきます。
音のリリースを切らないように、不要な部分を切り取っていくのもよい方法です。
今回はおこなっておりません。
ノイズ除去プラグインはいくつかありますが、やりすぎると音痩せしてしまうのでそこは注意します。
多少ノイズが残ったとしても、オケに混ざれば気にならなくなることもあります。
ピッチの補正をしよう
以前の記事でも紹介したのですが、私は基本wavesのTuneというプラグインが好きです。
ただ今回はどうにもならないくらいへたくそだったのでCelemonyのMelodyneを使用しています。
ピッチ補正はとても簡単に音声を破壊してしまいますので、しっかり通して聴いて破綻していないかチェックします。
Melodyneはピッチ検出のアルゴリズムでノートの切れ方が変わってくるのでいろいろやってみてもいいかもしれません。
私はあんまり詳しくないので雰囲気でやってます。おこられそう
ダイナミクスを整えよう
前述のとおり極端に大きいピークや歯擦音をプリフェーダーで抑えたら、コンプレッサーを使ってダイナミクスを整えていきます。
コンプの選び方や使い方についてはいろいろとこだわりがある人が多いかと思いますが、私は極力見やすくて音色に変化が少ないものであればなんでもオッケーという感じです。
ボーカルに関しては度々わたしのnoteで登場するsonibleのsmart compを使っています。
DAW標準のコンプでも全然問題ないのですが、ウィンドウが独立していて見やすいという理由でsmart compを使っています。
SonibleはAIアシスタント機能も搭載されています。
使わないことも多いのですが、今回はVocal(High)というモードで使ってみました。
Ratio 1:8 、リリースはオートでリダクションは最大-4dbくらいです。教科書のような掛け方。
今回はこれで満足したのでこのままでいきます。
ちなみにSmart compはAIアシスタントを使った時だけなぜかStyleとColorというサチュレーションの機能が出てきます。
もっと音圧の高いオケとかだとこの後もう一段掛けてつぶしたりすることも多いです。
EQしよう
個人的にEQはできるだけ使いたくない派です。
今回は録音の段階でしっかり音を作ることができたのでメインボーカルにはEQを使っていません。
ただ通常歌ってみたのMixとなると普通のMixとはだいぶ勝手が違うのでなかなかそうは言っていられないことが多いと思います。
EQを使えばたとえば中高域を持ち上げて音抜けを良くしたり、低域を削って音をタイトにしたりもできます。
その他部屋鳴りで増幅してしまった低音域(音は低くなるにつれ指向性が広くなるので、部屋鳴りは特定の中低音の帯域が増幅されることが多いです)を削ったり、マイクや機材の組み合わせで出てしまったレゾナンスを除去したり、外科的な処置を行えます。
EQは各バンドごとのフィルターになるので使えば使うほど位相がずれて隣の帯域とのマスキングが発生したりもします。
いまいちよくないなと思った音をEQで何とかしようと頑張ってるうちに、線の細いスカスカな音になってしまった。みたいなのも起こりがちな事故です。
EQも何を使うかは正直あまりこだわりはないので、普段は大きくて見やすいClaroを使っています。
Claroはラウドネスを計ってオートゲインをしてくれるのと、Fabfilterみたいな人気プラグインに比べてパラメータが少ないので迷いにくいのが助かります。
ダブリングを作る
途中でダブリングを入れたパートがあります。
ハモリじゃなくて同じ音を重ねたものですね。
とはいっても全く同じ音が重なるとただのモノラルになってしまうので、別のテイクから引っ張ってきたものをダブラーを使って左右に広げて被せています。
ダブリングはセンターを抜きたいかどうかで使うプラグインを変えています。
全く同じ音が左右から鳴ると音は真ん中から聞こえてしまうので、ダブリングプラグインは左右の音量差が出てしまうものが多いです。
そのあたり音量差なのか、ピッチなのか、何を犠牲にして音を広げるのかでプラグインを選んでみてください。
ハモリもそうですが、メインパートから生成するとタイミングやピッチの動きなどがぴったり重なってしまうので別のテイクを用意するのがよいです。
たとえピッチを動かしてハモリを作るとなっても、その作成用のパートは別で録りましょう。
今回はこのまま重ねてしまうと存在感が強すぎたのでコンプでぺったんこにしています。
へるぷ!のところ
ここも別でいくつか録ってます。
ここは音程も変えたものをいくつか録って重ねてます。
後ろでわっ!となる感じにしたいので音がきっちり左右に分かれるよりは、じわっと広がる感じがいいなぁと思ったのでダブラーを使わずコーラス系のプラグインを使っています。
コーラスは基本音が揺れてしまうものが多いので、揺れにくい/揺れないモードを持ったものを使うと扱いやすいです。
またビットクラッシャーで音を歪ませています。
ビットクラッシャー内にフィルターもあるので、低域と高域をカットして距離感やチープな感じを演出しています。
全体のおはなし
リバーブはおにぎりを使っています。
ボーカルはプレート系が多いと思うのですが、私はホール系の方が好きなのでレキシコンやRaumみたいなのもよく使います。
マスターにはコンプレッサーを刺しています。
音圧というよりはボーカルを真ん中でぎゅっと固めるようなイメージです。
サイドチェインがあるとバスドラムでコンプがボヨンボヨンなってしまうことを防げます。
最終段にGod Particleを刺しています。
なんでこんな音がよくなるんでしょうねこの子は。。
以上!ざっくりした歌ってみたの録音~セルフMixまででした!
歌ってみたって結構MIXで何とかする!みたいなイメージあるかと思うのですが、一番大事なのはやっぱり録音です。
ボーカルを普段やったりしない私でもちゃんとマイクプリを買おうねって思うくらいには録音が大事です。
しっかりした音で録れればMix作業なんてほぼ必要なくなってきます。(実際ボカロなんか作ってるとボーカルの処理なんてコンプ1つで終わることも多い)
全く同じ機材でも、マイクとの距離感で音は全然違うし、どこを狙うかでリップノイズや吹かれの入り方も変わってきます。
録音は難しいし、面白いですね。
下船したらまた何か録ってみたいな。
LLSY music