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忙しい中でも曲をたくさん作るには。

ボカロP Advent Calendar 2024の8日目として参加させていただいている記事です。

皆様ごきげんよう。LLSY music & V ch.のレーシーです。
ボカロPとしてDTM活動をしながらVtuberとして活動したり、本業で外航商船の航海士として乗船したりしています。

私は2021年の11月ごろからDTMを始めてちょうど3年ほどになるのですが、その間に130曲ほどボカロ&歌物の曲を製作してきました。

直近の10曲ほどはアルバム収録のためまだ公開していませんが、本業で仕事をしながらも最大で11曲ほど作った月もありましたので、今回はたくさん曲を作ることに関してのお話を書いていきたいなと思っています。

今回の記事にはモチベーションの話だったり、何を目的にするかだったり、そういった人によって違うものがたくさん出てきます。

あとはお金の話なんかも人によってそれぞれ感じ方や大小に差が出る部分でもありますが、あくまで私の話をしていこうと思います。

・モチベーションの話

この項はどちらかというと精神的な話であったりそういう部分が多くなると思いますので、あやしい自己啓発本のようになるかもしれません。

皆さんごとにスタンスや方法はあると思うのでこういう人もいるのかくらいに思っておいてもらえればと思います。

大人の趣味のモチベーション

DTMに限らず大人の趣味はモチベーションとの戦いです。忙しかったり、ちょっとした時間を活用できなくなってくる大人にとって趣味を続けることはなかなか難しい。

モチベーション維持には人それぞれ方法があるかと思いますが、趣味のモチベーションを保つ上で一番の難関が「趣味なんだからやってもやらなくてもいい」ことと「趣味なんだから自分のペースでできる」ことだと思います。

趣味だから楽しくやろうよ、みたいな話はよく耳にしますが、個人的に好きなことに前向きに取り組むというのは精神的、時間的に余裕がないとなかなか難しいです。

モチベーションとしての大きさはやりたいという前向きな気持ちよりも、やらなきゃという焦りの気持ちの方が大きいと思います。

折角買ったものが無駄になってしまう。周りの友達に置いて行かれてしまう。みんなから忘れられてしまう。やらないと損をするんだというマインドでいる方がモチベーションを引き出しやすいと思います。

スポーツやトレーニングを趣味としている方なら、続けないとやってきたことが目減りしてしまう感覚はなんとなくわかると思います。

やろうというよりやらないといけない方向にもっていくためには例えば何かを買ったり(とりあえずジムを契約しろ理論)、参加するコンペや投稿祭を定めたりするのも一つの手だと思います。

個人的には1曲ずつではなく、ここまでに何曲必要だ、みたいに複数曲用意する必要がある状況にできると一番効果がある気がします。

買ったプラグインはちゃんと触るんだ

これ意外とできてない人は多いような気がします。買うだけ買って満足しちゃうみたいなのはありますよね。

バンドルで買ったプラグイン、ちゃんと全部触ったことがありますか?

ソフトシンセ、ちゃんと全部プリセットを触りましたか?イニシャルから音を作ってみたりしましたか?

「このプラグイン使ったことないから使ってみたいな」「このプリセットの音使ってみたいな」「作ってみたこの音を使いたいな」この時点で3曲作るきっかけができてます。

まずは音を出して、アイデアを出すところから。

またソフトシンセのプリセットなんかは暇があれば何順もしながら遊んでると、こういう音欲しいなって思った時に作った方が速いのかプリセットから持ってきた方が速いのか、プリセットはどのあたりにあったのかなんかがすぐ出てくるのでおすすめです。

インスピレーションはすぐ隣にいる

プリセットの音一つから曲が出来上がっていくことは珍しくありません。何をきっかけにするかは自分次第ですが、日常の中にもきっかけになるものはたくさんあります。

例えばカメラにはスナップという文化があります。これを撮りに行くぞ!ではなくカメラ片手にそこらをぶらついていろいろ撮るというやつです。そんな感じでちょっといい景色だったり雰囲気のいい路地裏だったり、植え込み、街路樹、看板、ショーウインドウ、少し欠けた縁石、壁の汚れ、ふと目に留まったものをスマホのカメラで撮ってみたり、そこからいろいろ思いを馳せてみたりすると題材が思い浮かぶこともあります。
例えば電車で移動する間でも、目に付くいろいろなものに考えをめぐらしてみるといい思い付きがあるかもしれません。

こういうアイデア帳的なやつだと紙のメモ帳を使おう!みたいなことを言われることもよくありますが、個人的には何でもいいと思うし、そもそも一種類に限定することもないと思います。

私はスマホのメモも使うし、スマホのカメラもミラーレスも使うし紙のメモも家のPCのメモ帳も使うし仕事用PCのメモ帳も出しっぱなしにしています。思いついたときに思いついたことを気兼ねなくかけるのが大事だなと思います。

SEQTRAKやAira compactみたいなバッテリーで動いて持ち運べるものを使ってみるのも一興です。
外で機材を出すのはなんだか大仰だなぁとなることもありますので、スマホやタブレットのアプリを使ってみるのも面白いです。iPadでElectribe waveを使ってみたり、スマホでコアラサンプラーを使ってみたりすることもあります。

最終的にはDAWに移すとしても、いろいろな手段を持っておくのは飽き防止にもなってよいです。

やる気は始めないと出ない

受験勉強とかしてた時のことを思い出しましょう。なかなか始めるまではぐずぐずしてたのに、始めてしまえば意外と続くみたいな記憶がある人は多いと思います。それと同じで作業もやり始めたら集中力が上がってそのままできる場合も多いです。

ただし人間準備が面倒なことはすぐにやらなくなってしまう。作業を始めるためのハードルをどれだけ下げられるかはとても大事だと思います。これに関しては後述します。

投稿した曲のことは忘れる

投稿した曲のことはいろいろ気になってしまいます。一喜一憂、、できればいいですが憂いの方が多い方も多いのではないでしょうか。私もそうです。

投稿したら思い切って何も見ない!すぐ次に取り掛かると無駄にへこんでうむむとなる期間を短くできます。しばらくたってすっかり過去の曲になってから覗いてみるとほとんど再生されてなくてもダメージは少ないです。

ネガティブな感情が薪になることもありますが、創作に向かう上ではポジティブな感情の方がよりエネルギーが少なくて済む気がします。しんどい感情を昇華させるにはかなりのエネルギーが必要で、それは忙しい本業の合間になんとか時間を作って活動にいそしんでる人間には相当な忍耐を要求します。1曲くらいは何とかなっても、それを何十曲と続けるのは辛いものです。

たまには泥みたいな感情をこね回すのもいいものですけどね。

方法を一つに限定しない

色々書いてて中身のない自己啓発本みたいになってきてしまいましたが、趣味でやっている以上"飽きたら終わり"は常について回ります。

それは例えばモチベーションの保ち方であったり、手法であったり、道具であったり、、いつものやり方を確立することは効率化の上で非常に重要ですが、それを増やしていくことも重要だと思います。

よく~~先で作るみたいな話が出てくることが多いですが、いろんな方法で作り始めることができると毎回同じ事やってるな、、みたいな気持ちを払拭することができるかもしれません。

コードを付けるのが苦手なら補助プラグインを使ったり、リズムパターンを先においてみてそこから音を付けていったり、シーケンスフレーズを組み立ててみたり、、

とにかく完成させて、公開する

これはさっきの投稿した曲を忘れるとちょっと被るかもしれません。この辺りは人それぞれスタンスがあると思いますが、これに関しては当てはまらない人も多いかもしれません。

先のようにいつもと違うアプローチをとるとどうしても納得できるクオリティの楽曲はできないと思います。それでも折り合いをつけて、とりあえず完成までもっていって公開するということを私は行っています。

曲を完成させる癖をつけること、またミックス以降の工程はどうしても途中で廃棄すると辿れませんので経験値を積むという観点からも、とにかく完成までもっていくんだという作業はやって損ないかもしれません。

ただそれを公開するかは人それぞれかなとは思います。ブランディングをしっかりしている人もいるでしょうし、一定再生数に届かなければ削除して整理する方もいるでしょう。私はVTuberアカウントも併用している超ごった煮アカウントなので何も考えずに上げ続けていますが、、

・作業のストレス軽減に投資はできる?

この項からはより具体的な、私が実際に行っていることについて書いていこうと思います。

基本お金のかかることが多いです。なかなかただで便利さは手に入りません。

DAWは成果物に影響する

過去はどうだったか知りませんが、現代はDAWの種類が成果物にも影響してくる時代だと思っています。大半のDAW、例えばCubaseやLogic、Studio oneなどはインラインコンソールのレイアウトを汲んでいます。

そうでないDAWもあります。Ableton Liveはグルーヴボックス的なフローを、BitwigはLiveに加えモジュラーシンセ的な要素を、もともとDAWではなかったReasonなど、全く違うワークフローを提供するDAWも少なくありません。DAWソフトを乗り換えることは容易ではありませんが、もし自分のやりたいこととDAWのレイアウトがかみ合わないなと感じたら、ほかの選択肢も考えてみるというのも一つの手です。

1アクション減らすこと

以前Loupedeck Liveの記事を書きました。DAWは非常に多機能ですのでマウスとキーボードだけで操作しようと思うと膨大な量のショートカットが多かったりなかなか効率的に操作するのが難しい。

そういった時に助けてくれるのが各種マクロです。DTMだとMIDIコントローラーを使っている人もいるでしょうし、MIDIキーボードにも多機能なものもあります。LoupedeckやStreamdeckのような自分で環境を作っていくタイプのものもあります。例えばメニューを開いて行う作業だったり、頻繁に切り替えるものであったり、たった1アクション減らすことができるだけで作業のストレスは劇的に減ります。こういったデバイスは少し高価な場合も多いですが、プラグインや音源を買い足すよりもよっぽど貢献してくれる場合も多いです。

また自分でアサインできるタイプのものに関しては、LoupedeckであったりStreamdeckであったりアイコンの設定も自分でできるものがよいです。いくらいろんな機能が割り振れたとしても、まっさらなつまみが並んでいて毎回あれは何番目だっけ。。となるのが一番ストレスがたまります。

ケーブルを触ること

これはこの後する話にもつながりますが、完全にITBで作業する人もいればハードウェアを組み合わせる人も多いと思います。例えば外部シンセをDAWでコントロールして録音するとなると、MIDIまたはUSBケーブル、音声ケーブルが1,2本、間にエフェクターをかませようと思うとさらにパワーサプライを繋いで音声ケーブルと結構煩雑です。手持ちのハードウェアが増えるほどこの作業は増えていって面倒になってきます。

そういった繋ぎ変えの作業は正直言ってクリエイティブなものとは言えません。特に時間がなく疲れているときなどは面倒でやっぱいいか、、となってしまいがち。それらをつなぎっぱなしにしておいて、電源を入れるとすぐ使える。そんな状態にしておくことは趣味でDTMをしている人ほど大事なことなのかなとも思います。

ストレージ速度は心の余裕

ソフトシンセやソフト音源の魅力はその手軽さと作業のスピード感です。DAWを立ち上げて腰を据えてしまえば思いつくまま立ち上げすぐに音が出るスピード感は特に音を重ねていく現代のベースミュージックやクラブミュージックにとってとても重要です。

私はVital, Pigments, Spire, Falcon(Vintage Vault含む)なんかの音源をよく使いますが、音源にはモデリングだったりサンプリングだったり色々な方式が存在します。

UVIはサンプリング音源になみなみならぬ情熱を注ぐベンダーですが、サンプリング音源はプリセットの切り替えに少々時間がかかるという非常に大きな弱点があります。

こういった音源の読み込みなどには当然ですがストレージ速度が大きく関係してきます。最近は外付けSSDも増えてきて音源用に使っている方もいるかと思いますが、実際どのくらいの速度が出ているか知っているでしょうか?

外付けSSDの速度はUSBの規格に準じます。ケース、USBケーブル、USBポートの最も低い規格に引っ張られることになります。また一般的に速度はシーケンシャルで表されるのでランダムアクセスはもっと低速です。

基本的には音源用ストレージはPC内部に収めたいところです。PC用HDD、SSDの接続規格としては長らくSATAが使われていて、シーケンシャルで600MB/sが最大です。近年主流になりつつあるM.2はSATAベースのものとPCIeベースのeNMVがあります。近年はミニPCやラップトップでもM.2のスロットを2つ備えるものも多く、購入した時点でスロットが一つ空いているものが多いです。お手持ちのPCをチェックしてみて空きスロットがあれば、外付けSSDを購入する費用と同じくらいか少し安いくらいで何倍も高速なストレージが手に入るのでおすすめです。

私は今可搬性が必要ということでミニPCのMinisforum um780XTXというものを使用していますが、内部ストレージ2枚でDドライブに音源を格納して使用しています。

過去に記事を書きましたが、m.2のSSDは結構熱くなることが多くしっかりと冷却しながら使ってあげる必要があります。サンプリング音源の読み込みが突然遅くなるのはSSDが熱くなってサーマルスロットリングが発生していたからということも少なくはありません。

また外付けストレージを使う際にもUSBの規格などをしっかり理解することが重要です。基本的にはUSBポート、ケーブル、外付けストレージの端子の最も低い規格に速度は引っ張られます。

メモリの余裕は心の余裕

ストレージも大切ですがメモリも大切です。メモリ8GBの時代も今は昔、windows11の現代はビジネスノートでも16GBないと厳しくなってきました。高性能なPCを買おう!と思うとおのずと視界に入ってくるのはゲーミングPC、ゲーミングノートです。ただゲーム用はクリエイター用途ほどメモリを要求されることが少ないので16GBで売っているBTOも少なくはないです。

実際にどのくらいないと厳しいのかは人によりけりですが、DDR5も値段が下がってきた今私はとりあえず64GB積んどこうが多くなってきました。大量の音源を立ち上げっぱなしにするDTMでは割とメモリ総量がモノを言います。容量を削って高価なOCメモリを購入するなら、安価な片面実装で32GBx2を組む方がよっぽど実用的かなと思います。

ちなみにここまでの話はwindowsでの話、Macについてはメモリは統合されており後から増設ができないモデルがほとんどだったかと思います。

またWindows機とはメモリの速度が1桁違うのでMacのメモリ論については正直私にはわかりかねます。多分はるかに少ない量で実用に足るはずです。

CPUの余裕は

PCの話が続きますが、ラップトップ/ミニPCを選ぶ際に気を付けたいのがCPUです。特にIntel CPUの場合Core i以降の数字で判断する方も多いかもしれませんが、ラップトップ向けCPUは省電力モデルも多くcore i7を謳っていてもマルチコアでさえデスクトップ用core i3に及ばないみたいなモデルもあったりします。特に最近のintel CPUはPコアEコアに分かれていたり、昔ほどクロック!コア数!みたいなシンプルな比べ方がしにくくなっています。

ただcore ultraやZen4以降のRyzenなどワッパの非常にいいモデルも揃っているし、ラップトップ、ミニPCのパワーは格段に上がっています。

今はベンチを計っているサイトなんかも山のようにあるので参考にしながら選ぶとよいでしょう。

"すべて用意されている"を用意する

私はソフトシンセが制作の中心ですが、ハードのシンセも使うし、ガジェット系のシンセやグルボも使うし、エフェクターも使います。思い立った時に電源を入れてそのまま使えるというのが理想です。

長らく持ち運びが必要ということで4in4outのオーディオインターフェイスを使用してきました。

パラ出しのドラムマシン、シンセ、ガジェット、エフェクター。。それらをすべて繋ぎっぱなしにするため12inのインターフェイスを買う予定です。(記事公開時にはもう買ってるかもしれません)

ゆくゆくはADATで8in8out追加で拡張し、各エフェクターをすべて繋ぎっぱなしにしてプラグインのようにインサートしていけたらなと思っています。

配信には別に配信用ラップトップがあり、メインPCは常に2in2outのHDMI分配器を通過してメインモニターに繋いでいます。もう片方にはゲーム機やiPadのHDMI出力を繋ぎ、アウトのもう片方にはキャプチャボードを。サブモニターにはメインPCからの2画面目の出力とキャプボのパススルーを接続することでメインPC、ゲーム機、iPadを面倒な配線変えなく配信PCに送ることができます。

こんな感じで自分のしたい作業をしたいときに基本的にケーブルの差し替えなしですぐアクセスできるようにしています。

お金はかかりますが、椅子に座って電源を入れればやりたいことにすぐ取り掛かれるというのは忙しい中でもDTMを続けるためにもっとも重要なことだと思っています。

また2画面やワイドモニターは複数画面を行き来したり横に長いDAWにとって非常に相性が良いです。私は下段にウルトラワイドモニター、上段にもう一枚モニターを置いています。

また画面がデカくなればなるほど重要なのがマウスの存在です。DTMではトラックボールを使う方が多いですが、あれは限られた面積を効率よく使う分には優れていますが狙った位置にカーソルを持っていくことはなかなか苦手です。

エイムの非常に重要な競技シーンFPS用マウスなどは非常に細やかな設定ができ、手の負担を極限まで抑えながら精密なエイムが行えます。またマウスパッドも非常に重要です。高価なものが多いですが、こういった入力機器ほどケチるところではありません。

設備にはお金がかかる

色々用意してきたこれらの設備、なかなかお金がかかります。ほんと音に関係ない部分で何十万掛かってるんだって感じですが、正直言ってしまうと一番手間がかからないのはハイパワーなPCですべてソフトで完結してしまうことです。ハードは増えれば増えるほどお金も手間もかかります。そして今の時代はもうハードよりソフトの方が音もいい。

そのあたりは自分の興味やこだわりと合理性を天秤にかけていくしかありません。実際につまみを触ることによるパラメータの理解やモチベーションはなかなか手を出してみないとわかりにくい部分です。

・どこで妥協をするのか、のライン

ここからは実際に曲を作っていく中身に入っていきます。

趣味の製作で一番重要で、一番飛ばされがちで、一番時間のかかる部分はどこで妥協するかです。皆さんや皆さんのお友達の中にも、こだわってこだわっていつまでも曲が完成しなかったり、どうしても気に入らない部分があって立ち止まってしまう、やめてしまう人もいるかと思います。

ここはなかなか難しい部分だと思いますが、少なくとも今回のたくさん曲を作る、作るペースを上げるという部分ではどのラインで良しとするか、先に進むかはとても大事な部分かなと思います。

詰まったり悩んだり、最終的にたとえ公開しなくとも完成までもっていくということは大事なことかなと思います。

気に入らない部分が解消できなかったとしても、曲を完成させたぞという経験は完成させないと得られません。

・やりたくないからミックスの勉強をする

DTMをやる人にはもともと何かしらの楽器のプレーヤーの方が多いと思います。もちろんそうでない人もいるでしょうが、おそらくほとんど全員にとってミックス作業というのはDTMを始めた時には経験が0という人がほとんどかと思います。

音楽もそれ自体は理詰めなところはありますが、少なくとも自分の経験のある楽器なら感覚や経験で組み立てていくこともできます。ただミックス作業はおおむね理の上に成り立っています。

ミックスはそれぞれのプラグインの使い方から、今まで音楽を聴いたりプレイしたりするときには意識しなかった部分まで考えていくことが求められます。今はAIを使った自動化プラグインも珍しくない時代ですが、そういった便利ツールを併用しながら数をこなし学んでいくしかありません。

↑で曲を完成までもっていくことは大事という話をしましたが、これはミックスの経験を積むというところにもつながってくると思います。

ミックス作業を楽しいと思うかどうかは人次第ですが、、私は個人的に極力しなくていいならしない派です。

もちろんミックスやマスタリングはそれ単体で食べていってる人がいるほどのプロフェッショナルな領域です。ただアマチュアミュージシャン・コンポーザーにとって残念ながら(?)音質の良しあしは楽曲の評価にほとんど考慮されません。

私は普段音作りにはガンガンプラグインを使いますが、ミックス的なプラグインはデジタル系のコンプやEQとリバーブくらいしか使いません。アレンジの段階ですみ分けが住んで極力触らなくていいのが理想かなとは思いますが、フェーダーとパンだけで出来上がるならそれが一番いいのかなと思います。

こういったところから逆算して組み立てていけるのは作曲~完成まで行えるDTMならではかなと思います。

特にITBで作る際はレベルが揃うことも多いので、コンプはアタックコントロールに終始することも少なくないと思います。録音が中心だ!という人にとっては歪み系のプラグインもとても重要かとは思います。

あとは位相問題、DTMだとほとんど問題にならないことが多いのも助かるところです。

作曲で縦をそろえて編曲で横を考えていくとうまくいくこともいいです。

ミックスの勉強をしようと思ってネットを徘徊すると、最近よく見るのが歌ってみたミックスに関する記事です。私もたまにやるのですが、すでに出来上がったオケに乗っかるボーカルの音質は本当に千差万別で(スマホのボイスメモでとったボーカルが送られてきたことも)、外科的な作業を詰め込んで何とか合わせていく作業はDTMのミックスと全く違います。ミックスとアレンジの作業を完全に分けるかどうかは人それぞれかと思いますが、むむと思ったらアレンジや音作りに戻るのもいい方法だと思います。

セオリーや住み分け、忘れがちな時間軸

そうしてミックスを見据えたアレンジや音作りをしていくと、各ジャンルのセオリーみたいなものが理にかなっているんだなと納得することがあります。

ミックスの勉強に手を出した人は上下左右どこにどの楽器が来るかみたいな表を見たことがあるかもしれません。正直あんまり当てにはならないですが、今作っている自分の曲を聴いてこの部分が込み合ってるなとかここにスペースが空いてるなとかを思い浮かべることは大切だと思います。

後こういった話だと周波数帯の話ばかり出てくるのですが、エンベロープ、つまり時間経過でも考えることは大事かなと思います。例えば同じコードを同じオクターブで同時にならしても、パッド系のサウンドにプラック系の音をかぶせると周波数的にはダダ被りですが音のすみ分け自体はしっかりできますよね。ベースミュージックとかだと同じMIDIリージョンで複数のサウンドをレイヤーすることが多かったり結構考慮される点なのですが、ほかのジャンルだとあまり聞かないような気もします。

もちろんこれはエンベロープ自体を制御できるシンセサイザーならではなのかもしれませんが、必ず周波数の被りを防がねば!でもなんだか思うような密度感にならないなぁと感じている人なんかは考えてみてもいいかもしません。

インターネットでミックスに関する話を調べると、今は本当にたくさんの情報やTipsが出てきます。特にコンプやEQに関しては非常に高いレベルで会話している方も少なくありません。

飽和感のコントロールやプリリンギングの話の前にまず、作曲の段階で縦をそろえて横に広げていくみたいな基本的なすみ分けを意識することが結果として結果にも、時間の短縮にもつながることが多いのではないかと思います。

食い違う話、音質の話

DTMって結構理詰めで話されることが多いと思うのですが、音質や音色に関しては急にほんわりした単語でまとめられてしまうことが多いです。暖かみのある音とかまさに代表格ですね。活性炭でも入ってるのかな。

人が使う分にはそんなに気にならないんですが、個人的にはあんまり使いたくなくて避けてる表現でもあります。あとはすごい人たちがよく使う低音が速いとか音が丸いとか、最初のころはこのヘッドホン音が丸いんだよねなんて聞くと高音の落ちた音なのかなって思っていました。実際にはトランジションの表現があまりできてないものに対して使われますよね。かと思えば高音の削れた音に対して使う人もいる(ギタリストなんかはトーン絞った音に対して使う人が多い気もします)のでうむむって感じがします。

私は今でも音は丸い丸くないよりも奥行きがあるみたいな表現の方がしっくりきます。これは私が楽器じゃなくオーディオから音楽の世界に入ったからかもしれません。

ほかにもオーディオだとSNがいいと背景が黒いという言い方をしたり、音や音質について話す際にはみんな同じような言葉で同じようなところを、実際には少しずつずれた部分を指しながら話すことが多い気がします。

"モニター用"のデカすぎる括り

これは特にヘッドホンに対して言えることですが、モニター用ヘッドホンのモニターのくくりがデカすぎて、そもそも同じ音源に対して同じような聞こえ方がしていない場合が多々あります。

よく機材のグレードを上げた時に今まで聞こえなかった音が聞こえるみたいな表現をされることがありますが、いろんな講座を見たりYoutubeで勉強しても肝心の音や変化が聞こえてなかったみたいなことは往々にして起こります。あとは周波数特性がフラットか否かという部分だけで議論されることも多いように思います。トランジェントの出方はどうなのか、音場感や分離感はどうなのかとかとかは置いていかれがちな気がします。

レコーディング向けの密閉型モニターヘッドホンでフェーダーワークができるのかとか、技術的な部分もあるでしょうけれど私たちのようなミックスまで自分でしなくちゃいけないアマチュアほど、いろんなモニター機材を聞き比べたり所有してみて勉強していくのも大事なのかなと思います。

個人的にはあれこれプラグインを買う前にまずインターフェイスやモニター機器に投資する方がいいかなとも思います。DAW標準のプラグインでも割と十分です。

・作業に飽きてしまわないために

とり掛かりからミックスダウンまでの流れを作ってきました。できるだけ作業を効率的にしてきましたが、DTMは結局クリエイティブな分野。

色々な工夫をしてもそもそものアイデアが出てこなかったり、毎回同じことの繰り返しでは飽きてしまったり、、

そうならないように私は入り口をたくさん用意するようにしています。

最終的にDAW上で作業するにしても最初のとっかかりをハードから始めるとか、DAWで始めるにしても手癖だけじゃなく補助的なプラグインやコントローラーを使ってみるとか、入り口をたくさん用意しておくことはいいと思います。

あと複数の曲を同時に進めるというのもよくやります。こっちの曲で疲れたり詰まったら息抜きに別の曲やって、、みたいな。

・とっかかりや時短のために使ってる子たちいろいろ

個人的に使ってていいな~みたいなものをハード/ソフト問わず書いていこうと思います。

こういうの書いてる時が一番楽しいまであるよね。

・Loupedeck Live

気合を入れて書いた記事があります。

Streamdeckの対抗馬で、より映像、画像編集に向いたモデルになります。

つまみの多さはDAWとも相性〇。自分で使いやすいように設定をくみ上げていくという、人によっては楽しく人によっては苦しすぎる工程はありますが、DAWだけでなくあらゆるPC作業が効率化するので自分だけの最強の左手デバイスに育ってくれます。

・Bitwig Studio + Novation Launchkey

最近はLogicやStudio oneにも似た機能がついてくるようになりましたが、クリップランチャーといえばやっぱり元祖Ableton LiveかBitwig Studio。

Launchkeyは多機能MIDIキーボードの中でもそこそこお手頃で人気があるかと思いますが、有志のパッチを使うことでパッド部分にクリップの録音/再生を割り当てることができます。

パッド叩いて録音開始、リドゥボタンでリセットしてキーボードから手を放さずにどんどんアイデアを試していくことができます。

あと同じトラック内にMIDIとオーディオが混在できるのでドロップ前の一部だけオーディオ化してカットアップしよ~みたいなのがその場でできます。とんでもなく便利。

左手デバイスにも通じますが、多機能MIDIキーボードが珍しくなくなった今自分のDAW、ワークフローに向いたMIDIキーボードを持っておくのはとても良いです。

・モニター

私はメインモニターとしてJAPANNEXTの29インチウルトラワイドモニター、サブモニターとしてIO-Data Giga Crystaの27インチWQHDモニターを上下に配置しています。

画面が横に横に伸びていくDAWや動画ソフトを扱うのにウルトラワイドモニターはちょうどマッチします。デュアルモニターで横に並べる人は多いですが、どれだけベゼルが薄くなってもどうしても画面の真ん中に切れ目が入ってしまうのは気になります。またDAWソフトは2つ以上の画面を行き来することが多いので、それに追加してもう一枚モニターがあるのは助かると思います。

最近はマルチタッチ対応のモバイルモニターもたくさんあるので手元にスペースがある場合はそういったものを追加してみるのもいいかもしれません。

・マウス

モニター面積が大きくなってくるときになるのがマウスです。トラックボールだとすぐ関節痛くなるので、個人的には↑の29インチ+27インチモニター2枚のエリアをマウスを浮かしたり持ち直したりすることなく端から端まで止めたいポイントで止めることができれば十分かなと思っています。もともとMadcatzをよく使っていたんですが結構チャタりやすかったのでLogicool、Razerときて今はDareuの桜マウスを使っています。安いけれどFPSをするわけではないので十分快適に使えています。

・Scaler2

言わずと知れたコード打ち込み補助プラグインです。BitwigはMIDIトラックに複数の音源を立ち上げられるので同一トラックにScalerと音源を立ち上げるだけで音が出てくれるのは地味に助かるポイントですね。

スケールにあったコードを鳴らしてくれる機能は最近の音源やDAWにも備わっていることが多いですが、専門プラグインならではの柔軟性はやはり魅力です。

気になった曲のコード進行とかを保存しておいていつでも呼び出せるようにしたりなんかもいいですね。

・UVI Falcon

音源としてのレベルが非常に高いのはもちろん、MIDIエフェクトの豊富さも他の追従を許しません。

指一本でコードを鳴らしてそのコードをアルペジエイターで分解してそれぞれの音をトリガーにシーケンスを走らせたりみたいなことが簡単にできてしまいます。

最近は似たようなこともDAWでできてしまうこともありますが、UVIの音源はすべてFalconで立ち上げることができるので特にUVI音源をいくつか持っている人はぜひ手に入れておきたいプラグインです。

エクスパンションも素晴らしいものが揃っています。

・Arturia Pigments

モジュレーションの鬼。各種パラメータだけでなくエフェクトパラメータにもドラッグ&ドロップでマトリクスが組めるとんでもない操作性です。

個人的にソフトシンセは、マウスで操作するんだから実機みたいな見た目よりマウスで効率よく操作できる子が好きなのですがその極みみたいな動きをしてくれます。

複雑な変化をする音が得意ですが、とにかく操作にストレスがかからないのでどんどんいろんなことを試していけます。

・Vital

無料で使えるソフトシンセ代表。この子もマウス操作に最適化されたUIのもちぬしです。

強みは何といってもSpectral Morph。波形を変調する、というちょっと取っつきにくい部分に思いっきり切り込んでいける仕様は素晴らしいです。

シンセって結構理詰めになってくると思うんですが、あまり詳しくなくても感覚的に複雑なサウンドを作っていけます。

・YAMAHA SEQTRAK

とにかくトラックの形ができるのがとんでもなく速いグルーヴボックス。詳細は別記事にあります。

DAWを離れてアイデア出しをするにはもってこいです。不満があるとするとUSBでDAWに送ってもパラ出しができないこと。

個人的に鍵盤の演奏がなかなかできないのでコード入力が簡単にできる機材に助けられる場面が多いです。

・Sonible Meter bundle

メーター系プラグインです。いわゆるトーナルバランスを見れるメーターと、同社Smart Limitに備わったレベルメーターを抜き出したものが入っています。

この子のいいところはジャンルを指定したりリファレンスを読み込ませてあげると、視覚的にバランスの取れ具合や音圧感を教えてくれるところです。

特に出先や船上など限られたモニター環境で作業しなくてはならないときに助かっています。

・Roland TR-8S

リズムマシンです。家で作曲するときはほぼすべてこの子でリズムパートを打ち込んでいます。
音源はサンプルもありますがZen coreではなくACBです。
設定関係に関してはRoland特有の面倒くささが若干あったり、価格もサイズもちょっと大きめですがパターンの打ち込みや展開に関しては全くストレスを感じません。

USBでパラ出しもできます。よくUSBでパラ出しすると音が小さいというのを見ますが、これは各キットのゲインが少し小さめに設定されているため2Mixで出すときとパラで出したときにかなり大きな音量差が出てしまっているためです。元々こういう設定になっているのは若干謎なところです。

アナログ出力でも2Mixとは別に6ch分のパラアウトがついています。外部入力にもマスターFXやスタッターが乗るのはさすがというところ。
ただアナログ、USB関係なくパラ出しするとマスターを経由しない関係上スタッターやマスターFXが乗らなくなります。

私はステレオで録ってしまうときもあればパラ出しすることもあります。USBでの録音は少し薄さを感じるので使いません。

DTMからマシンライブまで何でもこなす最強のドラムマシンです。

・The God Particle

マスタリング用プラグインです。かなり積極的に音を作っていくタイプですが、なんかわからんけど音がよくなる代表です。

EQパートも非常にシンプルですが現代の音楽に欲しいポイントがしっかり押さえられていると思います。山のようにパラメータがあるマスタリング用プラグインでうんうん唸るならこういった子でささっと仕上げてしまうのもありです。
リミッターだけ別のを使う人もいるみたいです。

ジャンルによって合う合わないは結構あると思うのでデモで使ってみて判断したいですね。

・Sonible Smart comp2

AIアシスタントの機能が取り上げられがちですが、普通のコンプとして使っても非常に使いやすいです。

メーターが非常に見やすいというのと、積極的に音を作っていくときでも視覚情報に頼れるのはかなり大きいです。

アップワード、ダウンワードまでこなすし突っ込んでいった時の歪み感が少ない気がします。

なんでもかんでも歪むプラグインが多いのでクリアに保ったまま音を出したり引いたりできるのは非常にありがたいです。

・モニター環境

音質は持て余したいけれど無限にお金があるわけでもないので、現在のところスピーカーはiLoud Precision5、ヘッドホンはT1 2nd, Ollo S5X, Audeze MM-100となっています。

ミックス分からないよといろんなプラグインをとっかえひっかえするくらいなら、ある程度の音質を確保してしまう方が近道ではあると思います。

・iPad Air

ボカロ曲は動画投稿サイトの比重がとても高いです。つまりイラストがいる。

自分でイラストを描くことで納期を待たなくていいという非常に助かる環境が出来上がります。

ただ使い物になるイラストが描けるようになるまではとても苦しい。。ついったーに山ほどいる「普通の絵師さん」レベルになるのには何十年かかるんでしょうか。。

船のキャリアが終わったら液タブを導入したいところです。



色々と書いてきましたが、忙しい中でもたくさん曲を書くためにはとにかく

・モチベーションの維持

・作業環境の効率化

・曲を完成させる経験、ハードルの設定

が大事かなというお話でした!


これを書いている本人は外航船の航海士として本業をこなしながら、ボカロPとしてDTM活動にいそしみVtuberとして活動もしています。

私の作品はYoutube等で聞けますので、こんな偉そうなこと書いてるやつはどんな曲作ってるのかな、、って冷やかしに来てください。

休暇中はほぼ毎日の配信活動もしています。


また1/12に名古屋で開催されるボーカロイド系オンリーイベント、Vocaloid Streetに10曲程度の完全新曲ばかりを詰め込んだアルバムを制作して参加する予定です!

サークル参加するよという方、note見ましたよというご挨拶お待ちしています。

お客様として参加される方、ぜひお立ち寄りください。

いけないけどCD欲しいよという方、ぜひご連絡いただくか、委託販売のお知らせをお待ちください。


ちなみに2024年に公開したオリジナル曲は27曲でした!

インストを入れたら10曲くらいは増えるかな。10月くらいから依頼や仕事やCDの準備やとしていたら3か月くらい全く曲を出せていなかったので、それなりのペースだったかなと思います。
去年一昨年が年50曲くらいのペースで出してたのでだいぶ減った感ありますが、活動の方向性がちょっと変わったり(Vtuberになったので)依頼を受けたりして必ずしも自分の名義で出したりすることがなくなったりしたのも関係してるかもしれません。

ちなみにライブ配信は6か月で130件ほどしていました。月20日ペースだったね。。


LLSY music


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