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AKAI MPC ONE - 自由と不自由のはざま
去年の乗船前にAKAIのサンプラー、MPC ONEを買いました。
船に持ってきてもうすぐ1乗船が終わろうとしています。約9ヶ月寝食を共にして、改めてこの機材について考えてみました。
- サンプラーと言うには万能すぎる
サンプラーというものがあって、それを使えば誰でも音楽を作れるらしい。
楽器経験といえば大昔にギターを少し触ったことがあるレベル、DAWをさわり始めて半年くらい、1曲仕上げるのにも苦労していた私がそんな話をどこかで聞いて、サンプラーに興味を持ったのは必然だったのかもしれません。
MPCというものがサンプラーでは有名らしいということで購入しましたが、当時はサンプルスライスの概念どころかシーケンサーという言葉すら知りませんでした。
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MPC ONEを使っていて改めて他の機材を調べると、如何にこの子が凄まじい性能を持っているかを思い知ります。
サンプラーという触れ込みですけれど、正直サンプラーやグルボよりDAWに近いような感じです。
1台で何でもできる、みたいな触れ込みの機材は多いですが、文字通り何でもできてしまう機材はそう多くありません。
- ハードウェア × ピアノロールは何をもたらすのか
DAWから音楽に入った私は、最初ステップシーケンサーという概念が理解できませんでした。
正直今でもちゃんとわかっているのか怪しいです。
MPC ONEのシーケンサーは見慣れたピアノロールで、ステップではなく小節数で管理されます。
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完全にDAWの感覚なので、一般的なステップシーケンサーに比べると自由度は恐ろしいほど高いです。
個人的には非常に大きなメリットに感じるのですが、ここをデメリットに捉える人も多いようです。
ミュージシャンの方、楽器に精通してる方ほど不満である場合が多いような気がします。
確かにステップシーケンサーのほうが「っぽい」フレーズはできやすい気がしますね。
画面サイズのこともあって、確かに直感的ではないかもしれません。
私はMIDIキーボードを繋いでバーっと弾いてしまうことが多いので、そういう部分での違いもありそうです。リアルタイムで打ち込んで修正、というのが主な流れになりそうです。
ちなみにステップシーケンサーのモードもあります。
パッドでTR方式のように打っていける1ページ16ステップのシーケンサーで、何ページあるかはプロジェクトのシーケンスに依存します。
64ステップでも、128ステップでも256でもいくらでも増やせるところも、人によってはメリット/デメリットなのでしょうか。ただページ数はかなり把握しにくいので、今どのページをシーケンスが走ってるのか見失いがち、、
- サンプルとカラータッチスクリーン
MPC ONEの特徴の一つに高精度のカラースクリーン&タッチパネルがあると思います。
色々レビューをみると、ここに批判的な人が多くて非常に驚いたのですが(画面などなくサンプル管理は耳でやるべしということらしい)、サンプラーのさの字も知らない人間にとって、スマホより大きな画面で色々見れるのは助かります。
MPCにはQ-Linkというエンコーダーノブが4つあるのですがこれが秀逸で、サンプルのスタート&エンドの編集もタッチパネルでささっと大まかに決めたあと、ノブで微調整ということができて、かなり優れたワークフローなのではと思います。
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左手でズームしながら右手でスタート/エンドポイントを決めれるのも良いですね。
またロングサンプルのチョップも、マニュアルでパッドを順番に叩きながら切り分けてタッチパネルとノブで調整し、ワンアクションで新規プログラムを作ってパッドに自動割り当てなどとにかく作業スピードが早いです。
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下準備的な部分がとにかくストレスなく素早く進みます。
- これだけで元が取れそうな内蔵音源
MPC ONEには豊富な内蔵音源も収録されています。
使い勝手は完全に普通のプラグインです。というかDAW用のプラグインとして販売されているものが収録されています。
Xpand!で有名なAir musictechnologyの音源が色々と収録されています。
いかにもなシンセベースを簡単に作れるBasslineやウーリッツァー〜ローズ系まで幅広く出せるエレピ音源のElectric、2つの波形を組み合わせるHYPE、メロトロンにSonia、VAシンセのTubeなどかなりたくさんの音源が入っており、どれも高クオリティです。
ここでもタッチパネルとQ-Linkが活躍し、音作りは非常に楽しいです。
特にQ-LinkはDAWでMIDIコントローラーを使ったときのようなもたつき感がなく、ハードを触ってるなという直感的な何かを感じます。
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- スケッチ〜ラフミックスまでこれ一台で
エフェクト群も充実しています。
恐らくAkaiのレガシーエフェクトらしきものと、Air musictechnologyのエフェクトが混在しているのでかなりの量です。
1トラックあたり4つまでエフェクトを刺せますが、サンプルのドラムトラック等では各パッド毎に更に4つまでエフェクトをインサートできます。
個人的に気に入っているエフェクトをいくつか紹介すると
Air Channel strip
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チャンネルストリップです。コンプはレベルメーターが見やすいので、とりあえず掛けて軽くピークを抑えるということをよくやります。
EQはざっくり音を作るぶんには十分かなという感じですね。
ただEQのQ-Linkの割当が若干不満です。
Air Lo-Fi
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ビットクラッシャーとリサンプラーが一緒になったようなエフェクトです。
コントロールは最低限、、ですがなかなか美味しい効き方をします。
汚し系エフェクトにありがちな強く効かせたときの飽和感もいい感じに控えめで、音がしっかり前に残ったまま汚れてくれます。
ドラムバスに掛けてビリビリさせるのがお気に入りです。
Granulator
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リアルタイムでグラニューラーっぽいことをしてくれるエフェクト。
Mixノブがついているので徐々にホワホワホワ〜ってできます。
たのしい
XYFX
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タッチパッドに機能を割り当ててぐりぐりできるやつです。
フィルター+Repeatというのがあって、サウンドをリピートさせながらフィルターをスイープできます。
パフォーマンス寄りの機能ですが、要所でフィルに使うと一気にそれっぽくなって楽しいです。
バスがあるので空間系なんかをパラレルで掛けれるというのも非常にありがたいポイントです。
- パッドを叩くということ
パッドは昔のMPCに比べると少し小さいみたいです。
私はパッドのある機材はLaunchpad xしか持っていなかったので、大きくて叩きやすいなぁとしか思ってなかったのですが、確かにフィンガードラムなんかで2,3本の指でダダダとやるときにはもう少しサイズがあったほうがいいのかなとも思います。
最近の機材ではもう定番機能ですが、コードを割り当てるモードもあります。
ボイシングの積み方までは指定できませんが、主要なキー、スケールには対応しています。
クロマチックモードもあります。
- DAWで仕上げる
私はボカロがメインなので、MPCでラフを作ってDAWでというパターンが多いです。
書き出し方法はいくつかあって、便利なのがMIDIデータを書き出せることです。
ステムデータももちろん書き出せるのですが、MPC ONEのヘッドホンアウトがかなり派手な音なのでDAWに移したあと、あれ、、なんか、、となることが多いです。
私はIFに入れて、コンプなんかを掛けどりしながらとっていくことが多いです。
MPCのDAW、MPC Softwareというのもあります。
こちらは私使ってないのでわからないのですが、別のDAW上で立ち上げることもできる(ARAみたいな感じでしょうか?)ようなので、普段のDAWと組み合わせる更に便利になりそうです。
DAWだと自由度が高すぎてなかなか作業が進まないという人の話はよく聞きます。
ハードは習熟が必要だけど、ワークフローが固定化されているので迷いにくい、とかも。
MPC ONEはそのいいとこ取りというか、アイデアも出しやすいし、DAWに移さないとやりにくい細かい作業もある程度できてしまう。
人によっては器用貧乏に感じることもあると思いますが、ハマる人には凄まじくハマる機材だと思います。
私はハマりました。
なによりこれが10万しないというのが一番の衝撃かもしれません。
LLSY music