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須賀健太が語る、芝居への気持ちを確かめ続けた日々
近年はYoutuberとして「すがチャンネル&さんたなぴくと」の更新にも力を入れている俳優・須賀健太。映像のみならず舞台での活躍も目覚ましい彼は、9月15日から渋谷シアターコクーンで行われる舞台『血の婚礼』への出演が決定している。須賀演じる「花婿」は、木村達成演じる「レオナルド」と、早見あかり演じる「花嫁」を奪い合うというシリアスな役どころ。子役から幅を広げてきた須賀が考える役者のあり方とは。飽くなき芝居への想いを語る。
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■仕事がないもどかしさが、芝居に対する気持ちに気づいた瞬間だった
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「高校のとき、学生だから学校に行くのが当たり前なのに、学校にしか通っていない自分が寂しかったんです。仕事がないもどかしさーーそれが、芝居に対する自分の熱い気持ちに気づいた瞬間だったかもしれません」
『人にやさしく』、『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズに子役として出演したことで人気を博し、現在はドラマだけでなく舞台俳優としても着実にキャリアを重ねている須賀健太。子役をはじめた頃は「特撮モノのヒーローになりたかった」と語る彼は、大人になってもこの仕事を続けているとは思わなかったという。
「親も当時は思い出作り程度に思っていたはずで(笑)。『花田少年史』で日本アカデミー賞の新人賞を獲ったことで僕も周囲も少し変わったのですが、当時はまだ11歳~12歳くらいだったので、“これで生きていく!”とまでは思っていませんでした。それが高校のときに仕事があまりなくなってから、焦りが生まれたんです。当時はひとつでも多く仕事をしたかったし、現場に出たかった。芝居に対して、熱い気持ちを持てている自分をそこで実感しましたね」
■舞台は本当に新しいフィールドだった
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子供時代の可愛らしいイメージを払拭していく難しさは、子役特有の、そして共通の悩みであろう。須賀も自身の身体的・精神的成長とそのイメージとの乖離に苦しむこともあったが、これまでとテイストが異なる作品に参加することで、徐々に新しい自分を獲得していった。
「映画で言えば、『スイートプールサイド』という作品は大きかったですね。子役ってどうしてもわかりやすい演技を求められがちなんです。それがこの作品では、松居大悟監督から自然で日常的な演技を要求されました。力不足を感じたのもあったのですが、これまでとは違う、等身大の役者としての役割を与えられたことがありがたかったですね。もうひとつ、舞台の『ハイキュー!!』シリーズに3年以上、主演として参加できたのも大きかったかな。当初は同年代も多くいた現場だったので、遅れてきた青春みたいな(笑)。それまでは最年少で現場に入ることが多かったのですが、だんだんと年長者になっていくのは面白い体験ではありましたね(笑)」
ホリプロ移籍以降、舞台にも積極的に出演することになった須賀だが、映像での芝居との違いを実感できたことも、役者人生にとっても有意義なことだったそうだ。
「舞台は本当に新しいフィールドでした。よく“映像の芝居と舞台、どちらが良いですか”と聞かれるのですが、まったく違うジャンルですね。表現という大枠は一緒ですけど、演じ方の中身は全然違うので、両立させていく難しさもありましたし、一方で表現の幅は確実に広がったと思います」
■コロナ禍だから、自分たちが表現することの意味は考える必要がある
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須賀が現在俳優業と共に力を入れているのが、YouTuberとしての活動だ。けいた(田中啓太)、りょうたろう(小坂涼太郎)の3人で運営する「すがチャンネル&さんたなぴくと」はTikTokも含めて高い頻度で更新し、若者層に支持を広げている。こうした活動に積極的に乗り出したのも、コロナ禍が大きかったと語る。
「コロナ禍のときは、Youtubeでの活動に救われたところはありましたね。最初の緊急事態宣言が出てから2~3ヶ月は仕事もまったくなくなって。役者業を辞めた人も周りにはいたし、役者を続ける難しさを実感した期間だったのですが、僕自身は動画の編集を勉強することで、不安になりすぎずにいられたんです。Youtubeの動画制作は長いこと飽きずにやっていて、自分のクリエイティビティが発揮できるというか、趣味感覚でやれているところはあるのかなと」
コロナの状況は一進一退を続けており、取材時にはかなり落ち着いていた状況だったものの、この原稿の執筆時には第7派が到来している。そうした状況を悲観しすぎず、その中で何をやっていくかという視点が須賀にはある。
「元通りっていうのは厳しいと思っていて、映像も演劇業界も、今の環境で何ができるかを考えてきた2~3年だったかなと思います。一時は“エンタメって今はなくても良いのでは”くらいに言われていたじゃないですか。確かに、衣食住を優先するならば必要なものではない。だからこそ、自分たちが表現することの意味はしっかり考える必要があるし、大事にしていきたいですね」
■人間としての厚みを付けていくのがこれからの課題
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そんな状況の中で須賀が新たに挑むのが、渋谷Bunkamuraシアターコクーンで開催される舞台『血の婚礼』。スペインで初演されたのち、現在に至るまで名作悲劇として知られるこの戯曲は、ひとりの女を巡りふたりの男が壮絶な戦いを繰り広げる愛の物語だ。須賀は主演として、以前から親交のある木村達成とヒロイン(早見あかり)を取り合う役どころとなった。
「以前、『ハイキュー!!』で共演していた達成と共演できるのはすごく楽しみですね。あれから時間も経っているので、お互いがどれくらい成長しているのかを見せられると良いなと。昔はバレーボールを、今回は女性を追っかけるという意味では、ふたりのポジションは一緒です(笑)。早く稽古に入って安心したいという気持ちもありますし、最近は千秋楽までやりきることが大変になっているので、そこもクリアできるように意識していきたいですね」
今後も「生の力が実感できる舞台はやり続けたい」と語る須賀だが、仕事に関しては来るもの拒まず、何にでも対応できるような人間力を得たいと考えているようだ。
「30代も見えてきたタイミングなのですが、逆にこういう作品に出たいとか、こういう役柄をやりたい、というのはなくなってきましたね。スケジュールが合えば何でも、というか絞りたくはないです。今くらいの年齢は、役の選択肢が広がるんですよ。頑張れば学生だってできるし、成熟した大人もできる。その分、自分に説得力が出ないといけないので、人間としての厚みを付けていくのがこれからの課題ですね」
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【リーズンルッカ’s EYE】須賀健太を深く知るためのQ&A!
Q.リラックスするためにやっていることは?
A.料理ですね。疲れているときの方が料理をしたくなるというか、科学の実験みたいに冷蔵庫に残っているものを組み合わせたり(笑)。カレーとかは圧力鍋を使って、無水調理で。レシピ動画もめっちゃ見ますよ。リュウジのバズレシピとか。
Q.役者に向いている人って?
A.そうですね……ちゃんとしている人、ですかね。独りよがりだと成立しないと思います。役者はあくまで映像や舞台制作における「俳優部」であって、他のスタッフと同じ土俵に立って、ひとつのものを作り上げていこう、という意識を持つことが大事なので。
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<編集後記>
この日は午前中の取材だったのですが、まさに焼けるような暑さの中での撮影になってしまいました。ただ、そこで疲れを見せることなく、その後のインタビューでも熱い気持ちを伝えてくれました。「制作する側もやってみたいな」とも取材中に語っていた須賀さん。その何にでも前向きに取り組もうとする意欲的な姿勢に感銘を受けました。
<マネージャー談>
等身大でいて、肝が据わっています。ドラマや舞台などはメインのフィールドとしてやっているからわかるのですが、バラエティの企画ものなどでも物怖じせず、順応に受け入れてくれます。芸歴23年恐るべしといつも感心させられています。
<プロフィール>
須賀健太(すが けんた)
1994年10月19日生まれ、東京都出身。デビュー22年目の俳優。須賀健太youtube公式チャンネル「すがチャンネル/さんたなぴくと」更新中。オンラインサロン「私立須賀っ校。」も運営中。9月15日から渋谷シアターコクーンで『血の婚礼』に出演。
オンラインサロン
取材・文/森樹
撮影/松井綾音
スタイリスト/立山功