「芸能界ってカッコいい」から「本気で役者をやりたい」に――小西詠斗、ドラマや舞台で見えてきた“自分の生きる道”
「いま、相当勢いに乗っている俳優」と表現したい。小西詠斗のことだ。
2017年『男子高生ミスターコン』で、モデルプレス賞受賞をきっかけに、芸能界入りを果たした小西。以来、役者としてドラマ、舞台、ミュージカルなどで演技の幅を広げてきた。
そして今年、数えるだけでもドラマは7作品に出演。『発酵男子』という、旅紀行ドキュメンタリーなるジャンルにも挑戦した。2023年1月からは大ヒット漫画『進撃の巨人』の舞台出演……と、“イケメン高校生”というイメージから、“実力派若手俳優”へとスムーズに移行している彼に、近況のあれこれを聞いた。
■プライベートでも「あざとい」キャラ?
――現在出演中のドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』(以下『壁こじ』)の話からしたいんですが、BL設定が盛り込まれているため、必然的に男性が多い現場だと思うんです。どんな雰囲気ですか?
「シャニスマ(ドラマで所属しているアイドルグループ『SHINY SMILE』の略称)のメンバーといることが多いのですが、とくに僕は『発酵男子』でも共演していた立石俊樹くんと仲良くて、カメラが回ってないところで二人でわちゃわちゃしたり、くだらない雑談なんかをしています」
――小西さん扮する「キョウ」は弟キャラで、常にお菓子を食べているっていう変わった設定で……。
「それもめちゃくちゃあざといんですよね。そういえば最近、年上の共演者の方々に普段の姿も『あざとい』って言われるんですよ。長男なのになあ。いままで意識してなかったんですけど、今後はそれをうまく利用して、いろいろおごってもらおうと思います(笑)」
――キョウって、「あざとさ」もありますけど「可愛さ」も持ち合わせたキャラじゃないですか。結構その路線の役柄も多いですよね。
「そうなんですよね。“可愛い”にこんなバリエーションがあるとは思ってなかったです(笑)。少しずつ自信もついてはきているんですけど、やっぱり『他の役もできるんだぞ!』ってところを見せないと」
――来年の舞台『進撃の巨人』は、まさに違った顔を見せられるんじゃないでしょうか。
「はい。でも、舞台は1年ぶりで、今ちょっと不安もあるんですよね。『表現する』ってこと自体はドラマと同じですけど、種目が全く違うと思っているので。カメラの切り替えもないから、“一画面”でどこにいても見られるわけじゃないですか。そういった意味で、お客さんを飽きさせない間だったり、動きだったりを習得していきたいですね」
■「自分には芝居センスが無い」と思い続けてきた10代
――俳優活動から話は変わり、小西さんが芸能界を目指すきっかけを聞きたくて。これまでもそうした質問には答えているんですけど、「夢だった」くらいの深さでしか語っていなくて。
「あの……本当に漠然とした夢だったんですよ。『俳優になりたい』『タレントになりたい』とかは全然思っていなくて。『芸能界ってカッコいい』っていう、ミーハー心でコンテストに応募した感じです。正直、役者への意識っていうのが芽生えたのもここ数年なんです」
――え、そうだったんですね。
「僕、初めてお芝居をさせていただいたのが18歳の時なんですけど、誰が見てもヘタってわかるぐらいボロボロで。『自分には芝居センスが無いんだな』って思っていたんです。考えが変わったのが、東京で小劇場の舞台に出させていただいた時です。周りの共演者の方々は、稽古場に毎回いろんな芝居案を持ってきて、チャレンジしていて。今思えば基本的なことなんですけど、当時はそれすらできていなくて……」
「そこから自分も、『ここはもっとこうした方がいいんじゃないか』と考えて稽古するようになって、それを演出家の方から褒めていただいたときに、いままで感じたことのない喜びがやってきて。これを仕事にできたら本当に幸せだろうなと思って、そこからですね。本気で役者をやりたいって思うようになったのは」
――それまで才能、センスありきだと思っていたマインドが変わったのが大きいんですね。
「そうです。皆さんものすごい努力をされてることを知ってからです。まあ、お芝居のことを知ったら知ったで、悩むことも多いんですけどね。」
■夢は「マツダスタジアム」で始球式
――最近、自分の中での熱いコンテンツというか、ハマってることってありますか?
「(即答で)野球!今年の夏に野球×エンタメをテーマにした『ACTORS☆LEAGUE in Baseball 2022』に出場してからずっと野球熱が冷めなくて。もともと中学まで野球をやっていたので、久しぶりに触れたことで爆発しましたね。よく友達と公園でキャッチボールをやっています。
たまにボールが草むらに転がっていくじゃないですか。それのせいで最近花粉症にやられちゃって……。でも、昼間から体動かすのって楽しいですよ。いろんなことが忘れられますし。みなさんも球を投げるといいですよ(笑)」
――じゃあ、ゆくゆくは始球式もやりたいんじゃないですか。
「本当にやりたい!ずっと広島カープファンで、この前も球場に試合を見に行ったのですが、この時の始球式が有吉弘行さんだったんですよ。僕もいつか声をかけていただけた時のために、直球のキレを磨いておきます(笑)」
【リーズンルッカ’s EYE】小西詠斗を深く知るためのQ&A
Q.最近の好きな食べ物は?
「野菜をいっぱい食べるようになりました。昔は大嫌いだったんですけど、なぜか美味しいって感じるようになったんですよね。“葉っぱ系”が一番好きで、レタスとかキャベツ、ブロッコリーも好き。未だに食べられないものは、キュウリ、トマト……あと野菜スティックは苦手です」
Q.家ではどう過ごしてる?
「部屋を暗くしてキャンドルに火をつけてボーっとしています(笑)。もともとそんなに興味がなかったんですけど、ファンの方々からいただいたのをきっかけにハマりまくっています。いい香りがするのも楽しい。いま一番の癒やし時間です」
<編集後記>
「あざといと言われることが増えてきた」と本人は語っているが、裏を返せば、それだけ人を引きつける魅力があることの証左だろう。デビューのきっかけからしても、“違う世界で生きてきた住人感”があるが、人並み以上に悩みや苦しみを経験しているのが、今回のインタビューから見えてきた。何ヶ月、何年か後、名実ともにビッグになろうとも、そうした“人間くささ”は残っているんじゃないだろうか。
<マネージャー談>
座右の銘が「見栄を張ったら、死ぬ!」な小西。
死ぬという表現こそ大袈裟ですが、その言葉を胸に、日々まっすぐ仕事に向き合っています。
いつも悩んでばかりですが、苦手なことにも果敢に挑戦して克服し、着実に成長していく姿をみせてくれています。そんな小西に今後も期待していただけたら嬉しいです!
写真/松井綾音
取材・文/東田俊介