W主演映画『SOUND of LOVE』でASMR配信者を演じる染谷有香、印象的だったのはカメラを5分間回し続けた末に生まれたラストカット
グラビアやドラマなどで活躍中の染谷有香。9月27日公開の映画「SOUND of LOVE」では、樫尾篤紀と共にW主演を務めている。今回は同作でASMR配信者の明葉を演じる染谷に、撮影のエピソードや見どころなどをインタビュー。さらにリーズンルッカ初登場ということで、仕事へのモチベーションや今後やってみたい仕事なども話してもらった。
■明葉として、ヌードよりも恥ずかしさを感じたシーンとは
――まずは「SOUND of LOVE」で染谷さんが演じられた明葉がどんな女性なのか教えてください。
染谷 現実離れした女神のような人かと思いきや、実はあまり人に言いたくないような過去を持っていて、それが原因で性に対してトラウマを抱いているのですが、そのトラウマを携えながら魅力にも変えてしまった強くて魅力的な女性だなと思います。
そのなかでASMRや配信というものに出合って、配信を通してファンの方に喜んでもらうことにも喜びを感じている、そういった性から離れられない女性なのではないかなと思いました。
――出演が決まる以前にASMRの動画を見たことはありましたか?
染谷 今ってスワイプしたら次の動画が出てくるじゃないですか。そのなかでたまに気になる動画があって指をとめて、最後まで見たりすることはありました。ハマるまではいかなかったですけど。
出演が決まってからは、役作りで世界中のASMR配信者の方々の動画をたくさん見ました。SNSに出てくる動画のオススメ欄が全部ASMRで埋まるくらい見ましたね(笑)。
――吉川鮎太監督とは以前にもお仕事をされていますが、今作についてはどういうお話をしたんでしょうか。
染谷 私は喋り方がゆっくりだったり、考えながら喋ったりするところがあるのですが、そういうおっとりとした面は残しつつ、何を考えてるかわからなくて追いかけたくなるような、知りたくなるような女性でいてほしいというふうに説明してもらいました。
あと、「クラッシュ」(1996年公開)という映画を参考に見てほしいと言われました。交通事故が起こった際にエクスタシーを感じる特殊な性癖を持った人たちを描いた映画なのですが、それを見たりはしました。
――撮影をして印象的だったシーンはありますか?
染谷 明葉はサングラスをかけて登場して、「お互いに顔を見ないで、音だけで惹かれ合いましょう」と樫尾さん演じる守屋さんに提案するので、しばらくはずっとサングラスをかけたままなんです。その明葉が初めてサングラスを外したところを守屋さんに見られてしまうシーンがあるのですが、そこはすごく印象に残ってますね。
――その理由は?
染谷 なぜだろう…私自身、グラビアの活動が多く、そこでヌードになったりもしているのですが、そのときよりも恥ずかしいというか、鳥肌が立つような瞬間でした。ヌードになるところを見られるというのは、私の当時のグラビア活動において大きな出来事だったのですが、明葉にとって守屋さんにサングラスをしていない姿を見られるというのは、それと同様のインパクトがあるというか。
それまで守ってきた明葉の守屋さんに対するイメージがそこで1段階変わってしまったと思っていて、見られちゃいけないところを見られてしまったという興奮があった気がしました。
あとはラストシーンですね。ある音を聞いた私の顔がラストカットになるのですが、撮られながら混乱してしまって(苦笑)。それでも大切なシーンということで、5分くらいずっとカメラを回してくれていたのですが、一生終わらないんじゃないかって思うくらいその5分間が長く感じました。
その甲斐もあって、試写で見てくださった関係者の方に「あのラストシーンの顔はよかった」と言ってもらえて、すごくホッとしました。5分間カメラを回し続けてくれた監督には感謝していますし、印象深いシーンになったなと思います。
――守屋役の樫尾さんとの共演はいかがでしたか?
染谷 すごく刺激的でしたし、たくさんのことを学びました。樫尾さんは現場ではずっと心も体も守屋さんに入っていて、表情や目線の1つ1つに私も影響を受けました。守屋さん役が樫尾さんだったからこそ、不思議な浮遊感のある「SOUND of LOVE」になったんだろうなって思います。
■「自分が知らなかった自分を知るのがすごく面白い」
――2011年から芸能活動をされていて、ホリプロには2019年から所属していますが、ホリプロに所属することになったいきさつを教えてもらえますか。
染谷 当時、芸能活動を続けるか、それとも辞めるかで悩んでいて、実家に帰ろうかという選択肢もありました。それで近しい人たちと話していたときに「どんな環境だったらまだやってみたいと思う?」って聞かれて、ずっとエンタメに憧れがあったので「ホリプロだったら…」って答えたんです。
当時の私にとっては存在が大き過ぎて、まさか叶うわけないというか、冗談半分に近かったのですが、その場にいた方が当時のホリプロのスカウト担当に私のプロフィールを送ってくださって、次の日に「一度本社に来てみませんか?」ってお話を頂いたのがきっかけですね。
――展開が早いですね。
染谷 そうなんですよ。それで本社に行ったら今の部長や社長にもお会いすることができて、最後に「じゃあまたね」って言ってくれたんです。それを聞いて「え、受かった…?」って(笑)。
――今作のような演技のお仕事はもちろん、グラビアのお仕事も多く、忙しい日々を送っているんじゃないでしょうか。
染谷 本当に今が一番幸せというか。私は小学生の頃にタモリさんに会いたくて、「笑っていいとも!」のレギュラーになれたらタモリさんに毎週会えると思ったのが芸能界に入ろうと思ったきっかけで。そうしたらグラビアと縁があって、ホリプロと縁があって、それで今があるという感じなので、自分のモチベーションとしてはここからステップアップして俳優になりたいかというと少し違うんですよ。
好奇心が自分のエンジンになっていて、その時々のお仕事で面白いカメラマンさんや監督さん、俳優さんと出会うことで、自分が知らなかった自分を知るのがすごく面白いなと思うんです。お仕事を誠実に1つ1つやってちゃんと結果を出すと、それを見てくれたまた違った魅力的な人と会えるっていうのがRPGみたいで面白くて(笑)。
そういった意味でいうと、このホリプロという環境はたくさんの魅力的な先輩やスタッフの方がいらっしゃるので、好奇心が尽きないです。まだまだやることはいっぱいあるぞ、みたいな環境がすごく楽しいなと思っています。
――では、今後お仕事でこういうことをやってみたいということはありますか?
染谷 最近サックスを始めたんです。ずっと憧れだったのですが、ラジオの企画の中で挑戦させていただいて、そこからはもう音が鳴ることがうれしくて。まだ1曲丸ごと吹けたりはしないんですけど、今サックスでできないことがたくさんあるので、それを1つ1つできるようになりたいです。サックスに挑戦し始めてからは音楽関係の方とお話をしたり、アドバイスを頂いたりという出会いもあったりするので、いつかサックスを通じてお仕事ができたら楽しいだろうなと思っています。
――最後に「SOUND of LOVE」を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
染谷 「SOUND of LOVE」は日常から非日常に一歩ずれた世界観の中で、逃避の先にトリップすることを許してくれる作品だと思っています。
ASMRに興味がある人だけでなく、濃厚な映像や音の世界が待っているので、ぜひ映画館の音響で音を感じて欲しいなと思います。
【リーズンルッカ’s EYE】染谷有香を深く知るためのQ&A
Q. 今年の夏の思い出は?
A. プロレスが大好きで、5年ぶりのWWEの日本公演を見に行きました。あとはスターダムとか新日とか、ディアナっていう井上京子選手の団体とか、葛西純選手が所属しているFREEDOMSっていう団体を見に行ったり、プロレス三昧でしたね(笑)。
Q. 染谷さんが思うプロレスの魅力は?
A. 私も勉強中ですが、誰と誰が師弟関係でとか、その人たちが戦ってとか…DNAが可視化されているように感じます。そのなかで選手たちの気持ちや観客への見せ方、それらを全部わかってるオーディエンス、その場にいるみんなで試合をつくっているというか、世界観やストーリーをつくっているということにすごく感動します。いろんなプロレスがあって、団体ごとにもらえる勇気が違ったりもしますし、プロレスを見た次の日は「頑張ろう!」って思えます。
<編集後記>
シックな黒のドレス姿での登場となった染谷さん。撮影はごく普通の街中で行われたのですが、さすがグラビアで活躍されているだけあって、撮影が始まるとその場がしっとりとした雰囲気にガラリと一変。雰囲気ある写真になっているんじゃないでしょうか。また、撮影の移動中には、後ろを歩いていた女性スタッフが思わず「ずっといい匂いがします」と言うと、「しちゃいました?」と柔らかな笑顔を見せる一幕もありました。
<マネージャー談>
仕事に対しての真っ直ぐな姿勢、カメラの前での凛とした表情、話し始めるとふわふわとした可愛らしい印象、と魅力が溢れている方です。映画「SOUND of LOVE」はそんな染谷の魅力が詰まった作品となっています!初主演映画、ぜひご覧ください。
<撮影の様子はこちら!>
取材・文/須田紫苑
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