5人組バンド浪漫革命、「一夜で人生を変える」新作EPが完成 コロナ期間を経てプロ意識が芽生えた
2017年5月5日に京都で結成され、結成わずか3ヶ月で「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」の大型フェス出演を果たした5人組バンド、浪漫革命。とくに今年に入りエンジンは全開で、関西から全員が上京、そして耳馴染み良く完成度の高いポップス6曲が詰まったEP『溢れ出す』が9月25日にリリースされた。全員インタビューにて、細かなバンドヒストリーと、これから起こす「革命宣言」を聞くことができた。
■大学時代の先輩、後輩…“遊び仲間”で結成
ーーリーズンルッカには初登場ということもあり、「2017年5月5日に結成」とプロフィールに書くこととなった経緯を教えてもらえますでしょうか。
藤澤信次郎(以下、藤澤)「もともと、以前いたドラムの子が僕と仲良くて、大学サークルで一緒にコピバンとかやってたんですけど、引退となったとき『まだ続けたいです!』と言ってくれて、じゃあオリジナル曲をやるかと、ギターに(大池)奏太くんを誘ったのがはじまりです。奏太くん、10年来の友だちなんすけど、当時は相当会ってたね」
大池奏太(以下、大池)「マジで週6ぐらい遊んでた」
藤澤「奏太くんが高校生のときからやってた『Francisco Xaviers(フランシスコザビエルズ)』がちょうど解散してしまったのもあって、タイミング的にもちょうど良かったんです。ベースは、周りにも良いなと思える子はいたんですけど、先輩の藤Pさん(藤本)とよく遊んでいて、何でも全力で乗ってくれる人だったんで誘いました。当時『加速するラブズ』っていうバンドもやっていて、忙しいだろうし駄目もとだったんですけど、『やろうぜ』って言ってくれて」
後藤潤一(以下、後藤)「藤Pさんは『ポケモンGOに異常に詳しい先輩』という認識もありました(笑)」
藤本卓馬(以下、藤本)「ずっと京都を練り歩いてたから」
ーーしっかりバンドの誘いにも全力で乗ってくれたわけですね。
藤澤「その後、当初いたドラムの子が『もうちょっとしっかり活動したい』と、ふわっとした雰囲気が合わずに抜けちゃって、藤Pさんから『トイちゃん誘いたいんだよね』って言われたんです」
後藤「そのときトイちゃんは海外にいました」
TOY「留学したり、バックパッカーもやったりしていて」
藤澤「トイちゃん、同じサークルだけど全然会ったことがなくて、“伝説の先輩”みたいな立ち位置だったんですよね。ただ噂だけは聞かされていて。『めっちゃ上手いから』みたいな。それでサークルの夏合宿ではじめて会ったんですけど、髪が長くてシュッとしていて、まるで侍のような出で立ちで(笑)。演奏もブルースとかやっていて、その日に『この人、すごい人だ……!』となりました」
TOY「それまでコピバンばかりやってきて、浪漫革命みたいな洗練された音楽はやったことがなくて、なんか面白そうだなと思って入りました」
藤澤「潤くん(後藤)は、ずっと一緒に遊んでた後輩で、ギターが上手いことも知ってたんです。それで浪漫革命のレコーディング現場に遊びに来てもらって、『良かったらギター弾いてみない?』と弾いてもらって、その日の打ち上げでくら寿司に行って『いやあ、入ったほうが良いと思うよ』みたいに、やんわり誘っていました」
後藤「気づいたらいつの間にかギターを弾いていた感じです(笑)」
■3曲しかないのに大型フェスが続々決定
ーー結成当初から今と変わらない音楽性だったんですか?
藤澤「僕自身、大学から音楽をはじめて、いきなりジャミロクワイとか山下達郎、アース・ウィンド&ファイアーとかマリーナ・ショウをコピーしていたんです。浪漫革命をはじめたときも、ロックというよりは、そういったおしゃれな曲をやろうとは話していましたね」
大池「当時はシティポップ・リバイバルが来ていて、バンド名の候補も『カフィー・オン・ザ・サニー』っていうのがありましたね(笑)。ちょっとコーヒー飲みながら聴けるような“チルい音楽”をやろうって」
藤澤「それをもとにして最初に作ったのが『午後の珈琲』なんですよ」
ーーただ、結成3ヶ月で大型フェスの出演が連続で決まって、浪漫革命の幸先はこれ以上無いほど良かったですよね。
大池「ふわっと始まったわりに、次郎(藤澤)が各フェスのオーディションにしっかり応募していたんですよ」
藤澤「結成した理由の一つに、『夏フェスに出たい』っていうのがあったんですよ。どうやったら出られるか調べたら、応募の締め切りがだいたい4月末だったから、その前にレコーディングして、音源を完成させて、いろんなフェスに送っていたんです。そしたらまだ1回もライブしてないのに『RISING SUN ROCK FESTIVAL』から電話がかかってきて、『決定です』って言われて。ただライブ審査があると思ってたから、『ライブの場所はどこですか?』って聞いたら『本番決定です』みたいな。『ええ!?僕たちまだライブやったことないんですけど』って言ったら向こうも『ええ!?』って(笑)」
後藤「まだ3曲くらいしかなかったから、40分のセットリストを作らなきゃならない」
ーーなかなかイカつい話ですね……。「やばい、やるしかねえ!」みたいなチャレンジャーの気分になりますよね。
藤澤「いや、その前に『やっぱ俺らやべえな』っていう気持ちがありました」
大池「肩で風を切って、完全に調子に乗ってましたね(笑)」
後藤「フェスに出るのが当たり前のように(笑)」
藤澤「『SUMMER SONIC』も決まって、それも2万人くらい入る超でっかいステージだったんですよね。当時潤くんは童貞で、『童貞でこのステージ立つの俺だけっすよ!』って言ってたけど、その後にCreepy Nutsが出てきて、DJ松永が『童貞でこれやってんだよ!』ってめっちゃ盛り上げてました(笑)」
ーーフェス出演が終わったあと、どんな気持ちが去来してきましたか?
藤澤「びっくりしたんですけど、『M-1グランプリ』優勝コンビみたいに、人生がその日から180度変わるって思ってたら、あんまり変わらなかったんですよね。ライブも全然したことないのに500人ぐらいの人に見てもらっていて、『俺たちは売れたんだ!』ぐらいのつもりでいたんですけど、Xのフォロワーも30人ぐらいしか増えなかったし。むしろそこからがバンドの活動のスタートな感じがします」
ーーそこからガンガンライブをやっていくわけですね。
藤澤「何も考えずにライブをめっちゃやってた時期があるよね。1年で100本は超えてた気がする」
大池「夏だけで14〜5本とかやってた」
藤澤「それを経てすごい地力がついたなって思うし、どんな場所に、どんなジャンルの人たちの中に置かれても、ちゃんとした良いライブができるようになってる自信がつきましたね」
ーーコロナの影響はどうでしたか?ライブバンドはもろに影響を受けるんじゃないかと想像するんですが。
藤澤「それはしょうがないし、残念なことでしたね。でも1個よかったなって思うのは、フォロワーを増やすとか、ファンを増やす取り組みに向き合えたというか、音楽に対する取り組みも含めてプロ意識が芽生えた気がします。バンドの企画でも、ファンの人たちが絶対にわくわくしてくれるものを考えられるようになりました」
■人生を変えるつもりで作った新作EP
ーー新曲の話を聞こうと思うんですけど、「世界に君一人だけ」は歌詞がまず印象的でしたね。周りが社会に出ていく中、バンドマンとして過ごすリアルな心境が出ているというか。
藤澤「そうですね。実はAメロの歌詞、潤くんが書いてくれていて、自分じゃリアルすぎて書けなかったんです。『友だちの結婚式行けずに土日出勤 インスタグラムのストーリー更新 みんな楽しそうだなぁって 恥は書き捨ていつか出るぞMステ そんなことを言ってたら いつの間にか三十路です 大して飲めないのに昨日も打ち上げ』っていうところがまさにそうで」
ーーその箇所は一番年下の後藤さんが書いていたんですね。意外でした。
後藤「そういう現実的な話は最近よくするんですよ。『本当に友だちの結婚式行けるのか、いや行けないよな』みたいな。やっぱり社会人とはスケジュールが全然違ってくる職業だし、浪漫革命として大きくなっていきたいっていうのが常にあるし……という。そのままの気持ちを書きました」
藤澤「僕はもうそれこそ、友だちの結婚式をほぼ断ってるんすよね。だからしんどくて書けない。歌詞を読んで刺さりましたね」
ーーEP『溢れ出す』は、配信シングルが2曲入っていて、浪漫革命の名詞代わりとなるような、知らない人が聴いても取っつきやすい内容になったんじゃないかなと思っています。
藤澤「本当その通りっていう感じで、今年上京してきた理由も、ぱっと冷静に考えたときにもう年も年だし、やっぱりみんな音楽だけでご飯食べたいし、それこそアリーナに立ちたいって意見も藤Pさんからあったりとかして、シンプルに売れたいっていう気持ちがあったんですね。だから今回のEPは、『一夜で人生を変えるために作った』と言えるぐらい気合が入っているので、ぜひ一度聴いてみてください」
【リーズンルッカ’s EYE】浪漫革命を深く知るためのQ&A
Q.メンバーそれぞれのブームを教えて下さい。
A.
藤澤「俺と奏太くんは恋愛リアリティショーにハマってますね」
奏太「でも俺、最近ではYouTubeの『Nontitle ノンタイトル』っていう企業リアリティショーのほうをよく見てるかな」
藤澤「YouTuberヒカルのことを好きすぎて『ヒカルさん』って言ってるよね(笑)」
TOY「僕はホリプロ繋がりでフットサルに最近参加するようになって、ホリプロを超えてテレビ局の人らとも一緒にプレイしたり、なんなら飲みに行くようにもなりました」
藤澤「ホリプロ社内でもそうですけど、違うところでもお偉いさんっぽい人に『この前はありがとね』とか言われてて、営業スキルが相当発揮されています」
藤本「自分は『北の国から』ですね。川から水路を1キロ作って、自分の家に引いたり、ドロドロした恋愛事情が入ってきたり、展開にすごい衝撃を受けてFODシリーズに登録しました。トレンディドラマが流行ってた時代に、作りたいものを作るロック魂は共感できるところもありますね」
後藤「僕は『名探偵コナン』です。映画でハマって後で漫画とかアニメをガーッと見返しました。最近、意識的に流行っているものに触れていて、音楽をやっている以上、あまり逆張りすぎるのも良くないかなとも思ってるんですよね」
藤澤「自分もコナンにはハマって、アニメ122話で灰原さんが出てきたタイミングで挫折しました。『バンド活動できなくなる!』って(笑)」
<編集後記>
もう何年前になるだろう。「結成3ヶ月で大型フェス出演」のインパクトは相当なものがあった。ただ、音楽を聴いてみるといわゆるアリーナ・ロックとは別で、じわじわと心に浸透してくる優しい音楽。「思いのほか人生は変わらなかった」と藤澤さんは話すが、いま着々とライブからファンは増えているし、むしろこっちが浪漫革命にとって健全なコースなんじゃないかと思っている。曲は良いのが当たり前の時代において、彼らはライブも本当に良い。丁寧に演奏するし、丁寧に歌う。帰り道に「今日良いライブだったな」と噛みしめることができる。この気持ちを一人でも多くの人と共感したい。
<マネージャー談>
喧嘩も仲直りも友達も仲間も音楽も上京もすべてが一生懸命で、今回のインタビューでも伝わったかもしれませんが(良い意味で)普段から学校の放課後のような青春を思い出させてくれる無邪気で可愛いメンバーたちです。移動中の機材車内では何時間でもバンドや音楽の話が尽きないし、くだらないことで喧嘩が始まったかと思いきや、現場合間にメンバー同士で「いってきま~す!」と銭湯に行って笑顔で帰ってきたり。その勢いでライブでもお客さんと音楽で肩組んでピースな空間をつくっては美味い酒で乾杯!みたいな、これぞ音楽の醍醐味だよなぁ!と思うことを楽しみまくっているバンドだと思います。いつの日だったかこんな青春や大人に憧れたことがあるはず。
メンバー全員が愛らしくて、マネージャーとしてもこんなに一生懸命になれるバンドはなかなかいないでしょう。
特に浪漫革命のライブ現場の多幸感が私は好きです。予備知識がなくったって楽しめるはずです。
ぜひ、ライブハウスでお待ちしてます!
<撮影の様子はこちら!>
取材・文/東田俊介
写真/RYO SATO