「この3人だったら絶対にかっこいい音楽ができる」E.scene、平均年齢22歳の“若き才能たち”に初インタビュー
サブスク配信、オンラインライブなど、活動形態の自由度が年々高くなっている「音楽」の分野においては、拠点を都心にする意味も薄れてきている。慣れ親しんだ景色の中で活動していくことが、かえってアーティストに良いインスピレーションを与えることもあるだろう。
平均年齢22歳のスリーピースバンドE.sceneは、まさにそれを地で行くスタイルで、精力的に活動中。ドラムのYoshinaoとベースのCHIPPIが奏でるファンク、ネオソウル、ジャズを取り込んだサウンドに、ボーカル真琴の“コク”を感じさせる力強い歌声が絡み合う、魅力たっぷりの音楽性を持っている。3月に新作EP『HEAT』を携え、新潟では「初」の自主企画、東京は「初」ワンマンという“初物尽くし”のライブを前に、リーズンルッカでも「初」となるインタビューを行った。
■「対バン」でのパフォーマンスに惚れて集まった3人
――今日はこうやって東京にいらっしゃいますが、普段は新潟で過ごす時間がメインですかね?
CHIPPI(Ba)「そうですね。みんな新潟に住んでいて、スタジオとか制作は向こうでやりつつ、ライブとか取材はこちらに来てっていう感じです」
――他のインタビューでも話されていますけど、結成の経緯は一人ひとりがつながって……という形なんですよね。
CHIPPI「最初に僕とYoshinaoがライブハウスで出会ったんです。まだ自分が高校生で、Yoshinaoは中学生でしたね。以前から対バンはしていたので存在は知っていて、ガッツリ喋る感じでもなかったんですけど、DMをもらって」
Yoshinao(Dr)「本当は、見た瞬間に『一緒にやりたいな』と思っていました(笑)。同世代で、ファンクとかジャズに興味があるミュージシャンもすごく少なかったので」
CHIPPI「それで、もうひとりメンバーを入れてお試しをやっていたんですけど、その子は音楽を全くやったことがなくて、モチベーションも中々上がっていないっていうので、まこっちゃん(真琴)に声をかけたんですよね。僕らの初ライブのときに、弾き語りで出ていたのを見て、ボーカルをするなら彼女しかいないと」
――最初からいまのE.sceneが鳴らしているような音をやろうと決めていたんですか?
Yoshinao「それがはっきりとはなくて。純粋に同世代とかっこいい音楽を作りたいっていうのが第一でした。この3人だったら絶対にかっこいい音楽ができるだろうと思っていて、活動していく中で生まれていったものです」
https://www.youtube.com/watch?v=tmic8jDNxrU
――制作はどのように進めているんですか?
CHIPPI「基本的に自分がパソコンのDTMで作って、それを2人に送って、実際にスタジオに集まって生演奏する感じですね。自分たちがその時にやりたいテーマと、演奏技術との整合性を合わせていくスタイルなので、EP(主に4~6曲入りで30分未満の作品)のリリースが多いのは、それが理由でもあります」
■もう一度『フジロック』に出たい
――では今後は初のフルアルバムが目標、っていう感じですかね。
CHIPPI「そうですね。最初の1、2年くらいはまだ“バンドの進め方”みたいなものが、自分たちでも分かっておらず、さらに早い段階で『フジロック』に出た恩恵からか、ライブも並行して結構入って。制作にあてる時間も少なくなって、頭を抱えていた時もあったんですが、今は結構楽しくやれているというか、バランスは取れてきたかなと思います」
――正直、東京で活動すれば、コンスタントに大きいキャパでライブができるし、プロモーションもしやすいし、いろいろと便利なことは多いと思うんですよ。E.sceneにとって「新潟で活動する」のは大事なことですか。
CHIPPI「みんなやっぱり新潟が好きっていうのもありますし、新潟じゃなかったら、こういう音楽性にもなっていなかっただろうなって思います。多分、東京にすぐ移っていたら、右も左も分からないし、“染められてた”可能性もあったかも。しばらくはというか、できるだけ新潟でやりたい音楽を作りつつ、ライブでいろんな土地に行けるのがベストです」
――ライブは結構いろんな場所でやられてるんですか。
CHIPPI「新潟以外だと、東京と北海道、離れたところでしかやったことが……」
Yoshinao「仙台もやったね」
CHIPPI「あ、そうだ。仙台もなんですけど、北の方ばかりで(笑)」
Yoshinao「仙台の会場は元々映画館の劇場だったところで、すごい特殊な場所で演奏して。先日の恵比寿の『BLUE NOTE PLACE』(※吹き抜けで2階建ての空間)もそうですけど、僕らどこでもできるポテンシャルはあると思います(笑)」
――それこそ春からは音楽フェスがコンスタントに開催されていきますが、何に出たいとか、目標はあったりします?
CHIPPI「『フジロック』にはもう一度出たいですね。地元っていうのもありますし、次は大勢の人が見られるメインステージで演奏してみたいです」
――当時の映像は公式YouTubeにまだ残っていますよね。見返したりするんですか。
CHIPPI「今でもたまに見ますね。『ライブ中、すごい動いてんな』とか、『髭、生えてねえな』とか外見の変化を感じます(笑)」
――E.sceneの音楽は「オルタナティブR&B」と括られていますが、どんなジャンルのフェスにいっても馴染みそうな“曲の強さ”がありますよね。
CHIPPI「最近はありがたいことに、近いジャンルのバンドだったり、自分たちの空気感を理解している人たちからのライブのお誘いが続いていて、良い機会に巡り合えているなと感じています。もし存在が浮くようなところでも、一匹狼的な感じで良いんじゃないかなと」
■メンバーそれぞれが堪能する「ひとり時間」
――ちなみにみなさん、音楽以外に打ち込んでいることって何ですか?「地元で同じようなジャンルをやるようなバンドがいなかった」と言うように、流行など関係なく、本当に音楽が好きで、生活時間も関連することに割いているのかなと……想像ですが。
CHIPPI「なんだろう。基本的に家にいるので、映画観賞とか漫画を読むとかですかね。ちょうどこの前も、ホテルで『リバイアサン』っていう漫画を読んでいました。あんまり予定を立てたくないタイプで、結果的になんか家にいちゃうんですけど(笑)」
Yoshinao「僕はまさに“音楽だけの生活”っていう感じですかね。ドラム演奏もそうだし、機材とか楽器を見るのが大好きなんです」
――真琴さんはどうですか。
真琴(Vo.)「そうですね……1人でご飯を食べに行くのが好きですね。おばちゃんが切り盛りしているような定食屋さんとか」
――それはある程度自分の中に決まったお店があるんですか。
真琴「『今日は厚焼き玉子が食べたいな』と思ったときはこことか、メニューによって使い分けています。鯖の味噌煮とか、おかず単品とビールでゆっくり過ごすみたいな」
――いいですね。幸福度が高そう。
真琴「食べることに幸せを感じていますね。たまに純喫茶も挟んだりとか、自分が住んでいるところの近くに、ひとりで過ごすには良いお店がたくさんあって」
――全員が「ひとり時間」好きなんですね。
CHIPPI「スタジオに入って結構話はするので、近況はだいたい知っているし、良い距離感のバンドだと思います。ひとつ屋根の下で共同生活して曲作り……はちょっとキツイですけど(笑)」
【リーズンルッカ’s EYE】E.sceneを深く知るためのQ&A
Q. そもそも「E.scene」というバンド名はどういう経緯でつけられたんですか?
CHIPPI「特に……意味はないよね(笑)?」
Yoshinao「うん。『〇〇ドット』という形は先に決めて、あとは響き(笑)」
CHIPPI「たしか『scene(シーン)』っていう言葉がいいんじゃない?ってなって、あとは大文字1個入れるかという流れに」
Yoshinao「3人で集まって、ファミレスかどこかで決めた気がします。1発で覚えやすいし、エゴサしても被らないのが気に入ってます」
<編集後記>
ここ数年で、名前を聞く機会がグッと増えたバンドだ。個人的には「若手発掘」をテーマにした音楽番組で3年前に偶発的に出会っており、当時はまだ平均年齢19歳。音楽ジャンル的にも、若いうちから手を出すのが難しいはずなのだが、すでに風格と「型」が出来上がっており、「新潟にすげえのがいるな」と思ったのを覚えている。世界に轟く音楽フェス『フジロック』のメインステージへの目標を掲げるのも何ら早くはないし、プロモーターのスマッシュさん、もう大丈夫なんじゃないですかね?と問いたくなる。
<マネージャー談>
ライブでのクールで力強いパフォーマンスとは一転、
普段は、ほんわかとした雰囲気の3人にいつも癒されています。
今回「E.scene 1st Oneman Live "HEAT"」では、
1st EPから初披露の新曲までE.sceneのすべてをお届けできる特別な1日になります。
初めてのワンマンライブ、ぜひお越しください!
『E.scene "HEAT" Release Live』
2023年03月03日(金) 新潟・Golden pigs Black Stage[w / さらさ]
2023年03月10日(金) 東京・新宿MARZ[1st Oneman Live]
取材・文/東田俊介
写真/佐藤亮