『M-1グランプリ2024』参加中! パンプキンポテトフライは、大きな話題と賛否を呼んだ前年を超える成績を残すことができるのか?
「パンポテ」との愛称も浸透しはじめた谷と山名のコンビ、パンプキンポテトフライ。『M-1グランプリ』では3年連続準々決勝進出と、その先が期待されているコンビのひとつだが、果たして今年はどうなるのか?昨年披露して話題となった「ハ●撮り」ネタについても深堀りしてみました。(※10/11取材)
■この2年で、ふたりの仕事の割合が圧倒的に変わった
――前回の記事は、初の単独公演となった「ぶた」を終えたタイミングでした。あれからテレビの露出も増えたと思います。
谷 確かにここ2年で仕事量が増えて、いろいろさせてもらえるようになりましたね。その中で圧倒的に変わったのが、ふたりの仕事の割合。僕ひとりの仕事が8割くらい。
山名 うん。それが変わったよね(笑)。
谷 もはやコンビの仕事が珍しくて。「今日は山名もいるやん」って。
――谷さんが「クズ芸人」「ヒモ芸人」みたいな立ち位置で紹介されることも増えましたね。
谷 去年はクズが多めでしたね。今はクズキャラとかでもなく、普通の立ち位置でテレビ番組にも呼ばれるようになって。個人としてはだいぶいろんな現場を見ることができましたね。そこで別にできることが増えた感覚はまったくないですけど、(明石家)さんまさんとか、すごい人たちと収録できる機会は多くなりました。
――谷さんは、これだけ自分がイジられることは予想外でしたか?
谷 コンビで言えば、山名をイジらないといけない立場じゃないですか。山名はイジらないと何ができるねんって感じですから(笑)。
山名 フフフフ。
谷 僕としてはイジられたらパッと返せば楽しいので、嫌じゃないですね。
山名 本当、谷には仕事が増えてどんどん状況が変わっていますけど、僕個人としては全然変わってないんですよ。さっき谷が言いましたけど、「さんまさんと収録した」という話を聞いてびっくりしました。なんか、旅に出た友達からその感想を聞かせてもらって「すごいな~」みたいな。「兄さん、これからもいろんな話聞かせてよ」と思います。
谷 なるほど。相変わらずすごい感想で。
――山名さんは新宿駅で、ラジオの宣伝をしたりしていましたね。
山名 あれはラジオの企画でスポンサー募集のビラを配ることになって。そういうことを積極的にやるようになったのはちょっと変わったところかな。
――「剣」、「たっくんラジオ」など、ラジオを多くやられているのも特徴ですよね。
谷 会話をするいい機会って感じです(笑)。山名と普通に喋る現場なので楽しいんですけど……なんやろな? 山名にできることが増えていかないことに関してはもう慣れたんですよ。でも、なんかどんどんできなくなってきていて。
山名 さらに(笑)?
谷 彼が考えすぎていて。別にサラッと喋るだけで良いのに、ラジオだけが今はコンビの仕事みたいなもんなので、そこで頑張らなきゃ! と思っている気持ちがうざったい。
山名 なんで(笑)?
谷 それでかかって面白くなるタイプやったら良いですけど、力が出なくなる(笑)。良い方に転がらないから、頑張らずのびのびやってほしい。前よりおもんないから。
山名 ……そういうのはさ、ふたりのときに言ってよ。
谷 ふたりのときに言ったら気まずいでしょ(笑)? いつもどおり、前の感じでええのに。かかってるなぁ~という感じ。
山名 確かに、ラジオも最近は全然ホーム感がないんです(笑)。ラジオだけじゃなくて、ここで爪痕残さなきゃと思えば思うほど、良い方にはいかないですね……。
――『オールスター後夜祭』にも出演されていましたが、ああいう場は難しいですよね。
山名 あそこは盛り上げたいというよりも、いるだけでめっちゃ楽しいです。昔から観ていたテレビの世界に入れてもらっている感じがあるので。
谷 楽しいですけど……僕は『後夜祭』とか『お笑いの日』とかは、何十人と芸人がいるので、そこは得意じゃないというか、ガーッと目立てるタイプではない。だから、楽しいけどダルいっすね(笑)。なんとかしないと、みたいな気持ちはないけど、申し訳なさはちょっとあります。そういうとき、山名が何かできたら良いのになと思いますけどね。僕が向いていないところは「山名がおって助かるわ」となれば。まだ感じたことはないですけど。
山名 この前はダッシュしてザコシさん追いかけたけどね。せめて追いかけるくらいはやります!
■去年のM-1準々決勝。一ウケやったらあのネタでも通ると思っていた
――さて、もうすぐ『M-1グランプリ』が佳境に入りますが、コンビとしては昨年の準々決勝で披露したネタが話題になりましたね。以前、リーズンルッカのインタビューで、「M-1の決勝に出たいけど、M-1用のネタを作りたくない」とおっしゃっていましたが、「ハメ撮り」はまさに有言実行だと思いました。
谷 まぁ準決勝に行きたかったですけどね。負けを覚悟で、下ネタやって目立とうみたいな気持ちはまったくなくて、1ウケだったらあのネタでも通ると思っていたんですよ。準決勝に上がったら違うネタを考えていたんですけど、結果、1ウケじゃなかった。真空(ジェシカ)さんとかめっちゃウケてたし、聞いたら僕らは3ウケくらいだったと。あのネタで1ウケだったら通さざるを得なかったと思いますけど、一番じゃなかったら厳しい。
――コンビのキャラクターとして、別に下ネタばかりではないじゃないですか。それなのに地上波でのオンエアが最終目的地である『M-1』の予選で披露するというのが面白かったです。
山名 僕としても「(下ネタ)やったろう!」というのはまったくなくて、一ヶ月前くらいから準々決勝でやるネタについて谷とも話していて、一番ウケるネタにしようと決めていたんです。それこそ「ハメ撮り」のネタも、大きい会場で「ふざけてるなぁ~」と思われていたところから、やっていくうちに段々と仕上がってきたんですよ。それを追い風にして谷が「これで行こう」と。僕も一種のトランス状態で、通過する気満々でしたよ。
――山名さんの髪型も、だんだん男優みたいに見えてきますよね。リアリティがそこに生じていました。
山名 そう思っていただけたら嬉しいです。結果には結びつかなかったですけど。
――その後のネタ作りに影響はありましたか?
谷 あれをバーンと準々決勝でやっちゃって、YouTubeにもGyaOにも上がるとなり。それで次のネタを作り始めたときに、なんか不感症じゃないですけど、いわゆる普通の設定のネタをやるときに「おもんな」とか「足りないな」とか思うようになっちゃいましたね。ウケてても、「偏見も言い過ぎもないヌルい設定だけど……」って。
――お笑いの基準がおかしくなる劇薬ではあったわけですね(笑)。周囲の芸人からはどのような感想がありましたか?
山名 「よくやったよね~」と言われますよ。「(準決勝に)行く気ないでしょ」とか。そんなことはなかったんですけど、配信サイトによっては丸々カットされたこともありましたから。でも、意外とTVerは大丈夫で、優しいです(笑)。
■まずは2回戦、そして3回戦。「これを勝ち上がりたい」と思わないと
――今年の調子はいかがですか? いつも谷さんの身体に異変が起きるそうですが。
山名 毎年なんかあるんですよ。骨折ったり、喉飛ばしたり。
谷 今年はどうなんやろ? それこそ毎年、この時期は他の芸人と「ネタ決まってるの?」とか話をするのが通例ですけど、ホント過去一くらい、ないっすね(笑)。とりあえず2回戦にまず出てから、『M-1』がはじまる感じです。そこでふわっと緊張して「これを勝ち上がりたい」と思わないと。だから、気持ちが間に合わない可能性もあるっちゃある(笑)。
――間に合わないことも視野に入っていると。
谷 僕らは一年間『M-1』に向けてやっているコンビじゃないので、それで良いかなと。
山名 谷が言うように、確かに今年は過去よりネタがない気がしますけど、それでもいつものペースとさほど変わらないですね。
――ふたりにとっては、チャンピオンを目指してやっているというよりも、芸人としてお笑いを充実させるための大会であると。
谷 マジで僕は本当にそんな感じです。自分のテンションを上げてお笑いをやるためのひとつの大会というか。
山名 とは言え、『M-1』から僕らを知ってくださる人もいるでしょうし、基本的にはライブに出て漫才している生活なので、やっぱり決勝に行きたいというのはありますね。
谷 このままのスタンスで決勝行けたら、それが一番良いですから。
【リーズンルッカ’s EYE】パンプキンポテトフライを深く知るためのQ&A
Q.芸人としてこれまで活動を続けて来られた理由は?
【谷の回答】この前、モグライダーの芝(大輔)さんとご飯に行ったときに、芸人に必要なものとして「お笑いが好きなだけじゃなくて、金か女、ほかにも名声を得たいとか、何かもうひとつ欲がないと続けられない」という大先輩の言葉を教えてもらったんです。で、僕は金と女、どっちにもそんなに興味がない(笑)。だから、何で続けられているのか今聞かれて、ちょっと謎です。まず、自分のために頑張るというのがない人間なので……周りの人を喜ばせるとか、ファンのためにとか、そこに集中することですかね。周囲が応援してくれているといういい意味でのプレッシャーがないと。(同級生である山名さんを支えたいという気持ちも?)うーん、いや、今は仲が悪いので(笑)。
【山名の回答】僕もだいそれたことは本当になくて。谷と同級生でコンビを組んで、それからは勉強して大学行って就職して、みたいな生き方を捨てて10年やってこられたんです。これからもそれでやっていけるとしたら、めっちゃ良くないですか? 良いことも悪いこともこれからたくさん起きるでしょうけど、面白そうという気持ちが今もまだありますね。そのためには、僕らをより欲してもらえるように、コンビとして頑張りたいです。
Q.今ハマっていることは?
【山名の回答】僕はバスケットボール鑑賞にハマっています。日本のBリーグだと、渡邊(雄太)選手も戻ってきましたし、NBAには、河村(勇輝)選手が挑戦していて、その試合は毎日見ています。
【それを聞いた谷の呆れ】……これ取材3本目なんですけど、ずっとバスケの話ですよ。とにかく人を応援する前に、まず自分が応援してもらうようになんとかしなきゃ。ね?
【谷の回答】趣味はないので、最近意識的にやっていることを話すと、テレビの収録に行ったとき、自覚的にスイッチを入れるようにしていますね。面白いことは言わずとも、場は明るくするための。お金をいただくので、そういう心はようやく出てきましたね。それでも他の人からはまだあんまり頑張っているように見えていないみたいで、この前収録で一緒になったぱーてぃーちゃんのきょんちぃ(金子きょんちぃ信子)からそれで怒られたんで。だから、思っているよりもうちょっと出していかないとダメなんだろうと感じています。
<編集後記>
2年前の記事は、その年のリーズンルッカの記事で上位のPVを獲得したというパンポテ。あれから露出が増えたこともあり、谷さんにはその受け答えにも余裕が感じられるようになりました。山名さんは2年前と同じく、懸命さと正直さが不変。そんなふたりですが、やはり同級生ならではの安心感というか安定感というか、常に緩やかな空気が流れているのが魅力。『M-1』ではまず準々決勝突破、期待しています!
<マネージャー談>
何だかんだ仲良しな2人。
最近は谷のピン仕事がかなり増えてますが山名のネタ中の演技力(特に表情力)は一級品です!
是非、引き続きパンポテの"人間味溢れる"漫才に注目して頂けますと幸いです♪
<撮影の様子はこちら!>
取材・文/森樹
撮影/是永日和